『ウェブで政治を動かす!』津田大介(書評)
【2月12日特記】 僕はずっと、津田大介という人は現状をまとめるのがとても巧い人で、あまり自分から新たな提言をする人ではないと思っていた。いや、そんなことを言うと当の津田さん(一応何度かお会いしているのでさん付けにしておく)は心外に思うだろう。それは僕も分かっている。あくまで僕の印象の問題なのである。
今までも津田さんはいろいろと行動してきた。音楽ライターとしてキャリアを始め、その中でパソコンやインターネットと出会い、やがて音楽配信と著作権の問題に突き当たる。ちょうどその頃に日本ではいち早く twitter を始め、所謂「tsudaる」という行為を開始している。
それが有名になって、政府からお呼びがかかるなどもして、次第に政治との接点を作って行った。そして、その集大成がこの本だと言って良いだろう。
先ほども述べたように、この間津田大介は常に「まとめ」の仕事だけをして何も提言したり行動したりして来なかったわけではない。
ただ、彼の書いたものの印象からすると、ものごとを整理してまとめて行くのがあまりに巧いということもあって、どうもその側面だけが目立っていたように僕は思う。そして、彼が言わば問題の先端を突き進んでいるのに対し、彼の読者はあまりに遅れた位置にあり、そういう意味でまだ啓蒙的な要素が非常に強かったように思う。
それがこの本では、遂にインターネットの「動員の革命」と「トライ・アンド・エラー革命」によって、大衆が津田大介に追いついてきた感がある。そう、いよいよウェブで政治を動かせるところまで来たのである。今やウェブを使ってこそ政治を動かすことができるのである。
──そういう熱気がひしひしと伝わってくる。しかも、それは今まで通りの見事な整理とまとめに裏打ちされている。
今まで何冊か読んだ津田大介さんの著書の中で、この本は極めて行動的で提言の要素が強いように思う。これを以て彼の仕事は一旦ほぼ完成形となったように感じる。これがまず最初の到達点であるような気がする。
世の中は変わろうとしている。彼はいち早くそのことに気づき、そして、追いついてきた我々と一緒に世の中を変えようとしているのである。
なお、この本は僕が Kindle で(と言うより電子書籍で)読んだ最初の本となった。だから、今回は Amazon の電子書籍のほうにリンクを張っておく。
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