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Tuesday, January 01, 2013

映画『レ・ミゼラブル』

【1月1日特記】 映画『レ・ミゼラブル』を観てきた。『英国王のスピーチ』のトム・フーパー監督。英国人である。

ただし、書き始める前に断っておくが、今日は見始めて30分経ったところで腹具合が悪くなって、「あれ、困ったなあ、最後まで持つかなあ」と思っていたら、1時間経った辺りからこんどはおしっこがしたくなって、最後はおしっこが勝ってうんこは引っ込んだけど、もうラストまでの1時間半ほとんど糞尿以外のことが考えられない状況で観たので、その分割り引いて読んでほしい。

くだくだ解説やストーリーを書くまでもなくものすごく有名な作品だが、考えてみたら僕は原作も読んでいないし、あのイラストは知っているがミュージカルのほうも一度も観たことがない。銀の燭台を盗むエピソードは小学校の教科書に載っていたので知っているが、その後どうなって、どういう形で終わるのかは知らないのである。

だから、その分(尿意の割には)興味を持続させて最後まで観られたのは確かではあるが。

で、ミュージカルである。ミュージカルと言っても随所に歌が入るのではなく、地の台詞はほとんどなく、ほぼ全てがメロディに載せて語られるタイプである。そして、歌は歌い通しだがダンスは全然ない(そういう意味では少し物足りない)。

最初に感じたことは、それにしても役者のクロースアップがやたら多いなあということだった。踊りがないので歌っている顔を映すしかないということもある。だが、それにしても画面の大部分が顔であるカットがやたら多いのである。

ま、別にそれは悪いことではない。アップというのは演劇には絶対にできない演出なのだから。

芝居を観るとき、我々は基本的に固定カメラで見ている。多少首を振ることはあっても寄ったり引いたりはできない。心の中では特定の役者にズームインしているつもりでも、実際には少し視野が狭くなっているにすぎない。

だから、今回の映画化では、芝居ではできない、映画にしかできないことをやっているわけで、そういうことについては僕は高く評価する。

そして、舞台ではできないもうひとつのことは俯瞰である。二階席なら多少角度はついているかもしれないが、今回の映画にあったようなほとんど真上からの画は観客席からは見ることができない。そして、真上からのものすごいズームアウト、あるいは大きなパンなどカメラの派手な動きも、映像芸術としての特徴をよく出している。

しかし、何よりもこの映画の強さは歌である。しかも、生歌! アフレコとかリップシンクとかではなく、役者が演じながら同時に歌っている。激しい感情のうねりを歌に重ねて、その場で声に変えている。だから歌に気魄が乗り移っているのである。この歌の強さが映画全体を貫いている。

そして、そもそもメロディが良い。加えて、同じメロディ、同じモチーフ、同じコード進行を再現させることによって、観客の耳に、心に、見事に印象を焼きつけているのである。この辺りは大変巧いと思う。

僕は実はミュージカルには失望することが多い。それはこの映画でジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマンがインタビューに答えて言っているように、ミュージカルには“ストーリーの穴”がつきものだからだ。

僕はそれを“ストーリーの穴”と言わず、“ストーリーの綻び”と言う。いや、ひどい場合には、綻びどころが、ひとつのシーンと次のシーンをちゃんと縫い付けることができていないという印象を持つことも多い。だから進行が茶番になって感情移入できないのである。

ただ、往年の劇団鳥獣戯画をはじめとするいくつかのアングラ劇団の出し物では、何度も何度もミュージカルの醍醐味に浮かれ、カタルシスに酔った経験がある。それはストーリーの綻びがあっても、役者と観客の一体感とノリで乗り越えてしまうからである(それに対して、大劇団の商業ミュージカルではげっそりして帰ってくることが多い)。

今回は尿意が禍転じて福となした面もあったかもしれないが、あまり綻びは気にならなかった。いや、気はついていた。観ながら、「ここはもっと時間をかけて描かないと嘘っぽいなあ」などと思っていたのも確かなのだが、しかし、それでもあまり気にならなかったのはやはり歌の力、歌手の力、歌にこもった気魄の威力であると思った。

音楽って素晴らしい。ハーモニーって素晴らしい。そう、ヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイのソロも素晴らしかったけど、終盤のエディ・レッドメイン、アマンダ・セイフライド、サマンサ・バークスの三重唱は圧巻であった。

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