映画『ミロクローゼ』
【12月16日特記】 映画『ミロクローゼ』を観てきた。テレビ東京でやってた『オー!マイキー』の石橋義正監督である。そう、あの線の延長上にある作品だと思って間違いない。
この映画を観たからといって、別に何がどうということもないだろう。だけど、僕はそれはそれで良いと思う。
山田孝之が1人3役をこなしているのだが、その3役が3役ともとんでもないキャラである。
1人目はどこか絵本の中みたいな世界に住んでいるオブレネリ・ブレネリギャー少年の30年後の姿。彼が恋した“偉大なミロクローゼ”(マイコ)に去られた後、心にぽっかり空いた穴を鍋の蓋で塞いで2泊3日の温泉旅行に行く男である。
2人目は電話で恋愛の悩みを解決する青春相談員・熊谷ベッソン。傍若無人な罵詈雑言でか弱き青年どもを一喝する。この世界は完全に70年代の世界。アートでありディスコでありアメリカである。女性たちを引き連れて踊りまくるベッソンが強烈に魅力的である。
そして3人目は連れ去られた愛する女・ユリ(石橋杏奈)を探して時空を超え、西部劇から時代劇までこなしてしまう会社員/素浪人のタモンである。さっきまで現代の花屋にいたのに、いつの間にか西部の荒野の酒場にいて、さらに旅するうちに時代劇になってしまう。
で、このバラバラの世界がドラマが進行するうちになんだかうまいこと繋がって行く。何?その珍妙な展開(笑) しかし、繋がったからといってどうってことはない。全部繋がるのかと思って観ていたら、全部は繋がらない。しかし、繋がらなかったからといってどうってことはない。
ただ、オブレネリ少年がいる公園にタンブルウィードが舞っている辺りはビミョ~に繋がってる感があって、なんだかその辺がおかしい(笑)
テーマが恋する一途な心だと言われればその通りである。それはちゃんと伝わってくる。でも、だからといってどうということはない。
面白いかと言えば面白い。でも、ものすごく面白いと言うほどではない。しかし、ものすごく刺激的であることは間違いない。
この色彩、この人物造形、このファッション、このセット、このCGと特撮、そしてこの音楽! ダンスに殺陣にエロティシズム!
そして何よりも凄いのは、考えようによっては馬鹿馬鹿しいこのストーリーを、全く手を抜くことなく、大まじめに、丹念に、気が遠くなりそうなほどの手間暇をかけて、非常に完成度の高い映像を作り上げているということである。この辺りは『オー!マイキー』のイメージに引っ張られていると大違いである。
何しろ50人の役者がいっぺんに動いて、それをハイスピード・カメラで撮影して、最後に細部にCGを加えたという、長い長い斬り合いのシーンなど、結構度肝を抜かれるところがある。
海外ではいくつか賞も獲っているようだ。うーん、僕が審査員なら賞を出すところまで行くかどうかは疑問。だけど、観客としては素直に言ってテキトーに面白かった(笑)
でも多分、10年後20年後に、「僕はあの『ミロクローゼ』の映像に魅せられて映画監督を志しました」という監督が出てくる日がきっと来そうな気がする。
うん、この映画はこれで良いと思う。
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