Kindle Fire HD が届いていた
僕が小学校低学年のころ、ウチの近所にも最寄り駅の駅前にも本屋はなくて、僕が読んでいた『少年』と姉が読んでいた『りぼん』という少年少女向けの2冊の雑誌は、隣の駅の駅前商店街の中にある本屋から配達してもらっていたのである。
これがまず発売の日には届かない。そもそも発売の日にこの本屋の店頭に並んでいたかどうかも、今となっては不明だが、想像するに店主は、まず取次から届いた本を店頭に並べ、それからおもむろにその内の1冊を抜いて、客足が少ない時間に自転車を漕いで配達に行っていたと思われる。
そんな段取りだから、発売の日に届くことは非常に稀で、姉は「K書店は信用出来ない!」と言って、毎月大荒れに荒れていたのをよく憶えている。
つまり、これは店主の側、取次の側、出版社の側の事情に引っ張られて配達の日が決まっていたのである。もしも近くに本屋さえあれば、僕らはわざわざK書店の配達を待つまでもなく、本屋に走って行ったほうが間違いなく早く、そして多分発売の日に手に入ったはずなのである。
K書店に頼んだがために、配達する時間ができるまで、それは待たされたのである。今ではそんなことは許されないだろう。
ネットで予約した者のほうが、店頭に買いに行った者より手に入るのが遅いなんて、そんなことはありえないのだ。下手すると暴動が起こるのである。
これは完全に買う側の論理で商品が動いているということである。そのためには、予約した人が店頭に買いに行った人と同じタイミングで手に入るように、時間を逆算して、店頭売りとは別の段取りで用意する必要がある。
消費者主権の世の中になった、とも言える。わがままな消費者の跋扈を許してしまった、とも言える。
いずれにしても、そんな昔の配達状況を知っている世代からすると、この時代の変化はものすごいことだと、目の前にある Kindle Fire HD を眺めながら、改めてそんなことを思うのであった。
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