映画『009 RE:CYBORG』
【12月9日特記】 映画『009 RE:CYBORG』を観てきた。観に行って良かった。これは僕が好きな映画である。そう、世間が何と言おうとも(世間がこの映画に対して何と言っているのか知らないがw)。
とにかくこの表現力を見よ。まず構図。そして煙の、水の、ガラスの、その他いろんな素材・材質の質感。そして、窓ガラスに映る自分の姿とか、車が急停止した瞬間に車体が傾き、人が降りるためにドアを開け閉めするごとにまた傾くところなど、そういう細部にリアリティは息づいている。
今回は人物を 3D で描いて、それにトゥーンシェーディングという処理を施してセル画調にしたという。仮想空間に完全なセットをレイアウトし、そこに人物を置いて、それからカメラ位置を決めて動かしたという。1秒8コマ(1コマ=3フレーム)のシーンを作ることによって、動きをCG的でなくセル・アニメ風にしたという。
そんなあれやこれやによって創り上げられた映像は本当に目を瞠るほど美しい。動きが自由な分だけ実写ドラマを遥かに凌駕している。神山健治監督=竹田悠介美術監督=プロダクションI.G のとても立派な仕事だと思う。それからまた、そこに被ってくる川井憲次の音楽が度肝を抜くようなインパクトである。
僕は石ノ森章太郎の『サイボーグ009』をリアルタイムに読んだ世代に属している。ただ、僕自身はこの作品をあまり熱心に読んではいなかった。しかし、読んではいなかったのではあるが、「それぞれにさまざまな能力のあるメンバーが集まって敵と対決する」というのは僕の最も好きな設定である。
だから僕は『月光仮面』より『忍者部隊月光』が、『スーパーマン』より『宇宙忍者ゴームズ』が、『007』よりも『黄金の七人』が好きだった。
今回は原作のエッセンスをうまく加工処理してあるらしい。ただ、絵柄はかなり違う。こちらの人物は極めて21世紀的である。石ノ森の原作ではジョーも他のメンバーも、もう少し丸っこくて少年っぽい。特に今回のフランソワーズの大人の女っぽさには本当に悩殺されてしまった。
石ノ森が未完のまま筆を置いてしまった「天使編」と「神々との闘い編」の着想を引き継ぐ形で書かれた脚本であるらしい。最後はとんでもなく哲学的というか、神秘主義的とも言える展開になってしまって驚いたのであるが、この部分は原作を引っ張っているようだ。
しかしそれにしても、いくらサイボーグでも宇宙空間では身体が耐えられないだろうとか、あらら、最後はそんな風にして終わるのかい、とか、ま、突っ込みどころはあるにはある。でも、全体の読後感はすごく良いし、とっても良い作品であったと思う。
9人のサイボーグのうちに、ほとんど活躍せずに終わってしまったメンバーがいたことだけが残念だった。
Comments