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Friday, November 23, 2012

映画『ふがいない僕は空を見た』

【11月23日特記】 映画『ふがいない僕は空を見た』を観てきた。『赤い文化住宅の初子』『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督である。

『赤い文化住宅の初子』では、主人公の中学生・初子の、目も当てられないほどの絶望的な貧困を描きながら、その奈落の底に無尽蔵に注ぎ込むような、同級生・三島の不動の愛を、そして、その愛による希望を描いた。

『百万円と苦虫女』では、蒼井優の個性があまりに前面に出すぎてしまった嫌いはあったが、「自分探しみたいなことですか?」「いや、むしろ探したくないんです。探さなくたって嫌でもここにいますから」という台詞がとても印象的で、全編を通じて、そういう風に自分を突き放した感じがとても良かった。

だから、この映画を楽しみにしていた。

今回は原作ものである。山本周五郎賞とか、『本の雑誌』が選ぶ2010年度ベスト1などを受賞した小説である。そして、今回の脚本は、山下敦弘監督とのコンビで知られる向井康介である。知らなかったのだが、タナダ監督の前作『俺たちに明日はないッス』の脚本も向井が手がけたらしい。

3人の登場人物による2つの話から、この映画はなっている。

ひとつ目の話は、コスプレを趣味としている主婦・あんず(田畑智子)がたまたま知り合ったイケメン高校生・卓巳(永山絢斗)と恋に落ちるというか、浮気するというか、そんな話である。この話の最初のほうの幾つかのシーンは、あんずの視点からと卓巳の視点からとで2度描かれている。

それからもうひとつは、卓巳の親友の良太(窪田正孝)の話。こちらは『赤い文化住宅の初子』に通じるような極貧の世界である。父親はいない。母親は他の男と暮らしている。母親が作った借金の督促が途絶えない中、良太は認知症の祖母と2人で、コンビニと新聞配達のバイトをしながらなんとか糊口をしのいでいる。

あんず夫婦には子供ができない。義母(銀粉蝶)はあんずの夫を溺愛し、どんなことをしてでもあんずに孫を産ませようとする。不妊治療が失敗に終わったと聞くとあんずに当たり散らす。いくらなんでもここまでひどい姑はいないだろう、と思わせるエキセントリックな造形である。

あんずの夫(山中崇)は典型的なマザコンで、母親には何も言わない。そして、あんずの浮気を知っても絶対に別れないと駄々をこねるように言う。

卓巳は、自宅で助産院を営む母(原田美枝子)と暮らしている。母の仕事も手伝うよくできた息子である。そして、前から好きだったクラスメイト七菜(田中美晴)に告られたのをきっかけに、あんずとの関係を終わりにしようと決意するのだが、結局終わりにできない。

福田は極貧の中で、コンビニの店長に馬鹿にされ、祖母の常軌を逸した行動に振り回されている。しかし、情けをかけてくれる人たちに対しては言いようのない反発を覚える。ただひとり、コンビニの先輩・田岡(三浦貴大)だけは、次第に福田の頑なな心をほぐして行く。

途中何度もカメラは空を捉える。観客はタイトルに引っ張られて、ああ、自分の不甲斐なさを情けなく思いながら空を見上げているのか、と思ってしまう。

ふがいない僕らはどうなるのか──映画が終わるまでの間に何かが解決するのだろうか? 答えは否である。

そう、『その夜の侍』の記事にも書いたが、実際の人生においては、ドラマや映画みたいな綺麗なけじめはないのである。ただ、続いて行く。苦しみを抱えたまま、ふがいなさなに打ちひしがれたまま。

だが、そこにどことはなしに希望の匂いが残されている──それがタナダユキだと思う。

送電線が走っている。空が電線で切られている。都心のど真ん中よりは少し離れた、そういう町である。そして、どのカットにもなんか寂しさが溢れている。そういう撮り方が上手いなあと思う。

ただし、観ていて2つの話があまりにバラバラなような気がする。これでは1本の映画としてのまとまりを出せるのだろうか、と思ってしまう。

でも、結局見終わってみると、なんか2つの話を串刺しにしている思念のようなものがあるように思えてくる。ふがいない主人公たちは空を見る。そして、一気に何かが好転するというようなことはない。『百万円と苦虫女』のときと同じような、その突き放した感じが良い、と僕は思った。

田畑智子を主演に選んだのは大正解だったと思う。そして、田畑智子、永山絢斗、窪田正孝の3人に加えて、原田美枝子、山中崇、小篠恵奈らの共演者も素晴らしい。

ふがいない僕らにも仄かな希望の匂いが感じられた気がする。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

ラムの大通り

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----この映画、 タナダユキ監督の作品だよね。 『百万円と苦虫女』』だとか『俺たちに明日はないッす』とか あまり気に入っていなかったような気がするけど…。 「うん。 でも、やはり注目の監督ではあるし、 やはり押さえておかなければと…。 噂では、過激なシーンもあ...... [Read More]

Tracked on Tuesday, January 01, 2013 at 00:08

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