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Saturday, November 10, 2012

映画『のぼうの城』

【11月10日特記】 映画『のぼうの城』を観てきた。そんなに当たる映画だとは思っていなかったのだが、随分入っている。

犬童一心と樋口真嗣のダブル監督という珍しい形であるが、確かこの組合せは前にもあったなあと思って調べてみたら、全くの勘違いだった。

というのは、この映画は一旦完成しながら、激しい水攻めのシーンがあったために、東日本大震災の被災者への配慮から上映が延期されていたのである。僕が前に聞いたのは他でもないこの映画の制作が決まった時であった。あれからもう随分の年月が経っているために、何年か前にもこの組合せがあったと勘違いしたのである。

僕は犬童一心は自主映画時代から観ていて、最初の頃は少女の映画を撮る人、その後はマイノリティの映画を撮る人という印象だったのだが、いつの間にか大御所っぽくなってきて、遂にこんなスペクタクル時代劇を撮るようになった。

樋口真嗣監督は、監督作品としては『日本沈没』と『隠し砦の三悪人』の2本を観たが、ドラマの演出家と言うよりは、やっぱり平成ガメラ3部作に代表されるような特撮の専門家というイメージである。

パンフを読むと、このあまり接点のなさそうな2人が意外にもお互いのことを前から評価していたようで、大抵の人は監督が2人もいて大丈夫かと心配するのだが、この組合せはどうやら合理的な分業が成立する一方で良い化学反応を起こしたのではないかと思う。

史実に基づくベストセラー小説の映画化で、その原作は城戸賞を獲って脚本家デビューした和田竜が受賞作の脚本を小説化したものであり、また、今回の映画脚本も和田竜自身が手がけているというややこしい構造である。

どこか線が切れたような、ネジが外れたような武将と言えば、「うつけ者」と言われた若いころの織田信長が思い浮かぶが、今回の主人公である「のぼう様」(でくのぼうの略である)こと成田長親は、それに輪をかけた外れ者である。と言うか、およそ一国一城の城代が務まるような男には見えない。

そののぼう様が、自らの不思議な人間的魅力で、家臣も百姓も、まさに老若男女の心をひとつにまとめあげて、僅か500人の兵で、石田三成率いる豊臣方の2万の軍勢を蹴散らすという痛快な物語である。

何と言っても、今回の映画の成功は、そののぼうに野村萬斎をもってきたというキャスティングの妙に尽きるといえる。

言うまでもないが野村萬斎は当代一流の狂言師である。だから、声の出し方から、一挙手一投足の挙措に至るまで、他の役者とはまるで違う芝居をしている。まさに野村萬斎ワンマンショーのような趣さえある。そして、このケレン味たっぷりの演技の風合いが他の役者たちの中で浮いているところが、まさにこの役柄にぴったりなのである。

一方、敵役の石田三成を演じた上地雄輔も見事な嵌り役であった。知略家ではあるが戦の才はなく、矜持とはやる気持ちが綯い交ぜになって、沈着と残虐の間を行ったり来たりする様子を肌理細かく演じていた。

佐藤浩市、榮倉奈々、成宮寛貴、山田孝之、前田吟、中尾明慶らの共演者もそれぞれに良い味を出しており、たくさんの登場人物が思いの外くっきりと描き出されていて面白かった。現代風の言い回しが少なからず出てくるところが気にかかりはしたが、上手い脚本だったと思う。

恐らく樋口監督が主導権を握ったと思われる特撮部分も、なるほど制作費が高いだけのことはあると思わせる大迫力で素晴らしかったが、それよりも見落としてはならないのが、元ゲルニカの上野耕路が手がけた音楽である。

彼にしか書けなかっただろうなと思われるような、如何にも16世紀日本風の音楽のようでありながら、どこかちょっとモダンなメロディに、野村萬斎がある部分は自分で詞を書き、そして自ら全編を振り付け、即興も交えながら舞い歌ったのである。これは前述の通りまさに野村萬斎ワンマンショーであり、圧巻と言うほかなかった。

ちょっと長い映画ではあったが、どこにも説教臭いところのない、立派な娯楽大作である。こういうのもたまには良いなあと、時代劇嫌いの僕としては珍しく素直に思えた映画であった。

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Tracked on Monday, December 03, 2012 at 21:55

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