不思議なお釣り
【10月30日特記】 先日ネット上の記事で読んで、ものすごく気になって、いつまでも脳裏を離れないことがある。それはお釣りと代金の受け払いの仕方についての記事だった。
その記事を書いた女性は、店員がこちらの意図を理解してくれず、ちゃんとお釣りをくれなかったことを嘆いていたのであるが、僕にはどうも解せないのである。みんなそんな支払い方をしているのだろうか?
彼女は「630円です」と言われて1200円を出したと言う。ところが、店員は「630円なんですけど」と言ってお釣りを出そうとしないと言う。そりゃそうだ、と僕なんぞは思ってしまう。僕だってその店員と同じように、彼女が代金を聞き間違えたのだと思うだろう。
彼女は仕方なく千円札を残して百円玉2枚を引っ込め、店員から370円のお釣りを受け取ったと言う。で、その時彼女と一緒にいた彼女の夫は、彼女の意図を完璧に理解していて、「大人の対応だったね」と言ったのだそうだ。なんと素晴らしい夫だろう。
ここまで読んで、皆さんはもう理解できただろうか? 僕が読んだ時はすぐには理解できなかった。でも、そこには「うんうん、私もやる」みたいなコメントが割合たくさん書き込まれていたものだから、僕は心底驚いたのである。
彼女の意図は何だったのか?──五百円玉1枚と70円のお釣りをもらおうとしたのである。
僕は何度考えても、これは凄いと思う。そして、みんな本当にこんな高等な支払い方をしているのかな、と訝るのである。
- 「630円です」と言われて1030円を出す
これなら僕もやる。
- 「628円です」と言われて1028円を出す
これもやる。そして
- 「628円です」と言われて1030円を出す
これもやる。しかし、
- 「630円です」と言われて1200円を出す
これはこの記事を読むまで一度もやったことがないし、全く思いつきもしなかった。せいぜい、
- 「630円です」と言われて1130円を出す
ぐらいが考えつく限度で、その場合も「五百円玉でお釣りくれる?」と言い添えるだろうと思う。
4)はあまりに難しいのである。
3)と4)を比べると、1030-628=402 と 1200-630=570 で、どちらも同じ4桁の引き算で、あまり違いがないように思うかもしれないが、とっさの暗算でやるには後者のほうが圧倒的に高度なのである。
何故なら 1030-628=402 のほうは 30-28=2 1000-600=400 と2つに分けて計算した上でお釣りとして2円と400円を用意すれば良いが、1200-630=570 のほうではそういうメソッドが使えないのである。
それに、1)であれば「ああ、お釣りに十円玉をじゃらじゃらもらいたくないんだな」と店員も察しがつくだろう。同様に2)であれば、「お釣りに一円玉をじゃらじゃらもらいたくないんだな」、あるいは「持っている一円玉や五円玉を処分したいんだな」と、3)も同様に、「お釣りに一円玉やら十円玉やら百円玉やら、いろんな種類の硬貨ををじゃらじゃらもらいたくないんだな」、あるいは「お釣りが計算しやすいように出してくれたんだな」と想像がつくだろう。
ただし、4)の場合は引き算をしてみて計算結果が出た所で初めて、「あ、この人は500円玉がほしかったのか!」と気づくのである。
その点、5)であればもう少し気づくのが早くなるのではないかと思うのである。そして、それでも店員が却々気づいてくれないかもしれないという心配があるので、念のために、親切心から、「五百円玉でお釣りくれる?」と言い添えるのである。
そこまで考えると、4)は店員にあまりに高度な能力を求めていないだろうかと僕は思うのである。特に僕のように言い添えることなく、黙って1200円を置くのはどうなんだろう? それで気づいてくれなくても仕方がないのではないかと思うのである。
それに、この支払い方には致命的な欠陥がある。
それは、ひょっとするとそこのレジでは五百円玉を切らしていて、百円玉5枚と十円玉7枚が返ってくる惧れがあるということである。
もちろん、それがまさか五百円玉を切らしているとは思えない大きなスーパーの、まさか五百円玉を切らしているとは思えない時間帯のことであるのか、それとも五百円玉を切らしていても仕方がないような、店を開けたばかりの個人商店なのか、といったことにもよると思う。
ひょっとしたら、この彼女はそこまで読みきって、黙って1200円を置いたのだろうか?
ふむ、この人ならそういう可能性もあると思う。
と、そこまで考えて、やっぱりどうしても、みんな本当にこんな高等な支払い方をしているんだろうか?と不思議で不思議で仕方がないのである。
あなたは普段そういう受け払いをしていますか?
Comments
私も店員さんと同じで、きょとんとしてしまうと思います。
この記事もじっくり読んで、ようやく意味が分かったので。
最近はトシのせいか小銭を揃えるのが面倒で、札で払って財布が重くなる一方です。
Posted by: リリカ | Wednesday, October 31, 2012 20:28
> リリカさん
ですよね。僕だけじゃないですよね。安心しました。しかし、リリカさん、最後の1行が哀しいですよ(笑)
多分まだそんなお年じゃないんでしょ?
ま、財布は軽いより重いほうが良いですけどね。
Posted by: yama_eigh | Wednesday, October 31, 2012 21:31
自動販売機(券売機とか)に対してならやるかも知れませんが、対ヒトのときはやらないですね。
払う側として思いつくのも難しいです。
機械なら少しずつ払う金を足していけるから、途中で思いついて小銭を追加してみたりします。
Posted by: sam | Thursday, November 01, 2012 09:23
> sam さん
あ、なるほど、そうですね。自動販売機にお金入れながら、途中で気づいて10円玉足したりすることはありますね。
Posted by: yama_eigh | Thursday, November 01, 2012 09:31
この支払い方、一般的だと思ってました。スーパーやコンビニでもキョトンとされた経験はなく(逆に間違って出して足りませんよとキョトンとされたことはある)、投稿された方の戸惑いはよくわかります。
当方関西人ですが、地域性があるのかもしれませんね。
Posted by: kan | Thursday, November 01, 2012 22:36
> kan さん
あ、やっぱりそういう人もいるんですよね。僕が読んだ記事にも「あるある」「分かる分かる」っていうコメントがたくさんありましたから。
思うにこれは、やる人/やらない人、知ってる人/知らない人、馴染む人/違和感を覚える人、に二分されるみたいですね。
Posted by: yama_eigh | Thursday, November 01, 2012 23:25