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Sunday, September 16, 2012

映画『天地明察』

【9月16日特記】 映画『天地明察』を観てきた。

滝田洋二郎監督と言えば一般的には『おくりびと』ということになるのだろうが、僕は最初に観た『コミック雑誌なんかいらない!』(1985年)の印象があまりに強烈で、と言っても例によってどんな映画だったのかほとんど憶えていないのだが、それでも反骨精神と批判精神の塊みたいなイメージだけは残っている。

その後もそれなりに結構アングラ的な(死語ですが)、ヤバい系の作品が多かったように思うのだが、それが『おくりびと』で、と言うか、アカデミー賞でころっと印象が変わってしまった感がある。そして、とうとう『釣りキチ三平』とか撮っちゃうのか、というのが僕のここのところの印象である。

だから、そんなに期待せずに観に行ったのだが、これは意外に良かった。いや、とても良かった。これは主人公・安井算哲(岡田准一)の夢と、算哲とえん(宮﨑あおい)夫婦の愛の物語である。冲方丁の原作は読んでいないのだが、原作でもこんなトーンだったのだろうか?

脚本は滝田洋二郎と加藤正人の共同である。加藤正人って誰だったっけ?と思って調べてみたら、『雪に願うこと』の脚本家である。この脚本がものすごく良かった。いかにもプロが手がけた感じの、整理のついた、淀みなくしっかりストーリーを運んで行く脚本。気を逸らせない展開。

日本史の授業で習った名前としては、僕は安井算哲よりも関孝和(この映画では市川猿之助が演じている)のほうが記憶に残っている。そして、その頃から僕は、江戸時代の数学者って、縦書きで、漢数字使って一体どんな風に計算していたんだろ?と思っていた。

この映画では、もちろんその江戸の数学をベースにした江戸の天文学が描かれている。とても興味の湧く世界ではないか。なにせ地動説を知らない奴が暦を作り変えるのである(しかし、そういうのに全く興味のない人もいるんだろうな。そういう人はこの映画面白くないかもw)。

しかも、算哲は単に数学から天文学に転じたのではなく、最初はなんと碁打ちである。将軍・家綱(染谷将太)の御前で、本因坊道策(横山裕)と囲碁を打つシーンで、みんなが碁盤を見るために首を伸ばして中腰になる──そう、この映画ではそういう所作がとてもよく描かれているのである。

テーマからして必然的に空を見上げるシーンが多くなる。それを斜め上からカメラに収める。そのシーンに限らず、結構クロースアップが多用される。そして、役者がみんなものすごく良い表情をしているのである。

両方とも大好きな役者だからかもしれないが、岡田准一と宮﨑あおいがとにかく素晴らしい。ひたすら真理と正義を追い求める算哲と、算哲に共感してどこまでも彼を支える妻えん。(宮崎あおい)

そして、他にも笹野高史、岸部一徳、白井晃、佐藤隆太、市川猿之助らが演じる天文学バカ、数学オタクたちのなんという清々しさ!

その算哲の仕事をバックアップする保科正之(松本幸四郎)、水戸光圀(中井貴一)──そんな人たちを見ていると、素朴な生きる勇気が湧いてくる。算哲の前に立ちはだかる有栖川友麿(市川染五郎)らの公家たちとの抗争も見ていてハラハラするが、ここでも算哲に加担する公家・土御門泰福が現れる。

いい話なのである。そして、そこにかぶってくる久石譲の大仰な音楽が見事に機能している。

で、ラストのあの展開! 僕は『ロッキー』のラストを思い出した。そう、ロッキーとエイドリアンである。

時代劇としての考証面は僕の興味の外であるので措くとして、唯一の突っ込みどころは、そんなにしょっちゅう日食やら月食があるのかい?というところである。映画の最後に、「これは冲方丁の原作に基づいているが、史実と違う部分もある」というような字幕が出ていたが、多分その辺りのことを指しているのだろう。

いずれにしても、すごく楽しませてもらった。素直に感動させてもらった。デビューの頃とは印象が違ってきているのは間違いないけれど、こういう映画も良いと思う。今回は本当にプロの力量を見せつけられた気がする。

もっとも、映画が終わって僕の斜め後ろを歩いていた青年は、「僕的にはかなり退屈したなあ」などと言っていた。まあ、そういう人もいるのだろう。

僕はかなり高い点数をつけたいと思う。パンフに載っている養老孟司の寄稿が、この映画の面白さを見事に解説しているので、できればご覧になったあと読んでほしいと思う。

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★★★★★ 岡田准一の表情がいい。算術や天体観測、暦研究など目の前の新しいこと全てにワクワクしている様子が伝わってくる。青年期から壮年期までだけなのに、大河ドラマを見ているような気分になった。安井算哲は棋士としての様々な能力を別の分野で十分に生かした、良…... [Read More]

Tracked on Friday, September 28, 2012 at 23:17

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