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Saturday, August 25, 2012

映画『るろうに剣心』

【8月25日特記】 映画『るろうに剣心』を観てきた。監督は大友啓史。知らない人だと思ったら、NHKにいて『龍馬伝』を撮った人。退職したらしい。今回は僕にしては珍しく監督から入ったのではなくて、予告編が面白そうだったから観に行った映画である。

しかし、実は2~3日前にネット上でかなりの酷評を読んだのである。

ただ、その人は原作と時代劇にかなりのこだわりがある人のようだったので、僕のように原作は読んだこともなく、時代劇にも興味がない、と言うかむしろ本格時代劇なら観に行かないような人間なら大丈夫じゃないかと思って、観ることにした。

で、ネットで予約しようとすると大入り満員ではないか! 僕も長らく映画の座席をネットで予約してきたが、上映開始までに2時間近くあるのにパラパラと4席しか空いていないというのは初めてである。

さて、実際に観てみると、彼が酷評していた点は、原作との違いという部分を除けば、解らないでもない。

鳥羽伏見の戦いをプロローグにして、明治10年という、時代劇の設定としてはかなりはみだしたところを狙っているのだが、まあ、そういう難しさがあるのも確かだろう。

人斬り抜刀斎と言われた緋村剣心(佐藤健)は、かつては来るべき良い時代を信じて人斬りとして薩長のために働いた。ところが今では抜刀斎の名も捨て、「不殺の誓い」を立て、「るろうに」として放浪している。脇に差した刀も普通の刀とは逆側に刃がついている「逆刃刀」である。

この逆刃刀、そして頬に残った十字の傷、人斬りとして働いていたのが14~19歳、という辺りの設定が非常に巧い。

ただ、筋運びは時として非常に乱暴で粗い。

剣心と薫(武井咲)の出会いのシーンにしても、ニセ抜刀斎の人相書きを観ていた剣心に薫がいきなり斬りかかる(しかも木刀で)というのはあまりに唐突であるし、剣心が警察から釈放されるタイミングを何故薫は知っていて傘を持って出迎えに来たのかなど、首を傾げたくなるところも時々ある。

で、言葉にしても、剣心のほうは「お前は忍者ハットリくんか?」って言いたくなるほど「…でござる(よ)」を連発するのに対し、他に時代掛かった台詞を言う役者はおらず、武井咲にいたっては平成の女子となんら変わらない。いや、言葉だけでなく精神構造も平成女子かも知れないw

ニセ抜刀斎(吉川晃司)の妖術みたいなのは一体どういうものなのかさっぱり分からんし、その術を解く仕組みもなんだか分からない。

他にも時代考証のこととか言い出すときっといろいろあるのだろうし、ま、突っ込みどころ満載なのであるが、しかし、それでも面白いのでござるよ(あれ? 感染ってしもたw)

これはジョン・フォードの西部劇に対するマカロニ・ウエスタンみたいなもんなんですかね? ともかく面白い。

殺陣の動きの速いのなんの! 「あれ一体どうやって撮ったの? 合成入ってる?」と訊きたくなる(実はほとんどCGは使っていないらしい)。あんまり速くてちゃんと目で追えないなんてのは殺陣としては邪道だと思うのであるが、しかし、それが面白いのである。

僕はこれほどスピード感のある斬り合いを観たことがない。人間がいつまでもあんなスピードで動き続けられるはずがないということは、ここでは問題にならない。

カメラも上から撮ったり下から狙ったり縦横無尽で息つく暇もない。

佐藤健のひょうひょうとして、しかし閃光の如く速く、そして強靭な感じも非常に良い。

で、アクロバティックなアクションだけで魅せて行くのかと思ったら、終盤から往年の東映のヤクザ映画になる。悪徳組長のところへ、とうとう堪忍袋の緒が切れた高倉健さんが単身殴りこみをかけようとすると、横から池部良が現れて同行する──みたいな展開である。

また脇役が良いんだよなあ。このヤクザ映画でいう悪者の組長に当たるのが実業家の武田観柳で、これを非常に漫画的なオーバーアクションで演じているのが香川照之。

それから、その用心棒である化け物みたいな男・鵜堂刃衛を演じているのが、「これ誰だっけ?」と途中まで分からなかったのだが吉川晃司である。そして、とりあえずは剣心の敵として現れる「斬馬刀」の使い手・相楽左之助が青木崇高。この3人はよく嵌っていた。

そして、数少ない歴史上の人物として、山県有朋に奥田瑛二、元新選組で維新後は山形に使える警察官・藤田に江口洋介が加わり、さらに悪党の面々として綾野剛、深水元基、須藤元気など、これでもかこれでもかと言うほどむくつけき男どもが出てくる。かと思えば蒼井優が良い感じの脇役で出ている。

で、剣心は最後まで逆刃刀の柄を返さず、人を斬らずに終わるのか? まあ、設定はあちこち綻んでいるのかもしれないけど、それなりにハラハラして興味は絶えない。ただ、確かに某氏が書いていたように尻が少し長すぎる気はしたけど。

でも、まあ、客が入るのは解る。だって、面白いのでござるよ。そう、結局この台詞に戻ってくるように、細部にも神経を使って人物がよく描けているということに他ならないのだと思う。いいんじゃないかな、こういう映画も。

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