論争の結末
【8月21日特記】 昨日ヨドバシカメラにいたらエスカレータの乗り方に関するアナウンスが聞こえてきた。曰く、「片側を空けずに、2列になって、立ち止まってお乗りください」。
僕はいよいよそういう時代になったのかと思った。
昔からエスカレータ論争というものがあった。それは乗る時に右側を空けるか左側を空けるかという論争であり、空けた側が即ち「追い越し車線」ということになる。
で、大阪では左側を空けて右側に立つが、東京ではこれが逆になる。何故そんなことになったかというと、そもそも倣った国がドイツとイギリスだったかどこかだったかで、2つの国の風習の違いがそのまま日本の関東と関西に輸入されたからだという。
となると、境目はどこなのか? やっぱり名古屋なのか? では、名古屋ではどちらを空けるのか?
そんな「論争」があり、そして、新幹線の新大阪駅のホームから改札口に降りるエスカレータは大抵右が空いているので、あのエスカレータまでは東京のテリトリーなのである、といった分析があったりもした。
この「論争」はまだインターネットがなかった時代からあったものだが、ネット上でも結構盛り上がった。ところが、ある頃からそこに水を差す人たちが現れたのである。曰く、「エスカレータで追い抜くのは危ないので、歩いてはいけない。立ち止まって乗るべきである」と。
僕らは「関東だ」「関西だ」と言って楽しんでいたところだったので、少々げっそりした。そんなもん、危ないと言い出したらどこでも危ないわけで、例えば人の多い通路でも追い抜くのは禁止すべきだということにならないか、と。
かくして、「論争」は「右か左か」ではなく、「歩くか止まるか」へと様相を変えてきた。が、もちろん論争にはならなかった。面と向かって「何が危ないものか」と言ってみたところで、この論争には勝てそうになかったから。
考えてみればそりゃそうである。僕ら自身はとりたてて危ないとは思わないが、子どもや老人や体の不自由な人たちからしてみたら、やっぱりひやっとする瞬間はあるのだろう。なにしろ、人間が押しても引いても決して止まらないモーターの力で段が動いているわけだから、万一巻き込まれたら危ないに決まっている。
そこに大きな荷物を持った人や、慌てた拍子にバランスを崩した人などが現れたら、やっぱり危ないのである。その危ないことが発生する確率が何%なのかを言い争っても仕方がない。
というわけで、論争は論争にならず、いつしか火が消えてしまった。
そして、とうとう、公共の場では「立ち止まれ」というアナウンスが流れ始めたのである。
僕はいまだに大阪では左側を、東京では右側を空けて立っている。そして、決して無理な追い越しはしないが、片側が空いている時には歩いて進んで行ったりもしている。しかし、もう完全に立ち止まることを心がけなければならないのだろう。
Comments
むしろ「片側を空けるな」が本当の目的では?
・ヨドバシに限らず、混雑したエスカレーターでは立ち止まって乗る側にだけ行列ができてしまうことが多く、エスカレーターのグロス輸送効率が低下。乗り口の混雑で売り場に支障。
・しかし両側で歩かれると振動が大きくなって駆動系に支障をきたすし、そもそものエスカレーターの趣旨に相違する(動く歩道とは違う)。もちろん安全面でも問題が生じるし。
・結果として「両側に乗れ、歩くな」となる。
どうでしょう?
Posted by: tapioka | Tuesday, August 21, 2012 10:04
1947年生まれの小生、記憶にある限り最初にエスカレーターに乗ったのは渋谷の、当時の東横百貨店。1950年代後半だろう。真ん中に立ち、歩いてはいけない。みんなじっと立っていた。それから十数年、並んで二人が乗れるエスカレーターが出現!おそらく、千里の万博の少し前ではなかったか。で、万博の「動く歩道」Moving Walkの登場。今でも覚えているが、万博会場のこの乗り物では、動いているあいだずっと「左側を歩く人のためにお空けください」とアナウンスが続いていた。だから、関西では右に立ち、左を昇降する。なぜ関東で逆になったかはまた稿を改めます。こちらも割に自信があるのだけど。
Posted by: hikomal | Tuesday, August 21, 2012 17:44