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Saturday, July 07, 2012

映画『グスコーブドリの伝記』

【7月7日特記】 映画『グスコーブドリの伝記』を観てきた。

途中で何度か眠りに落ちてしまった。が、これは昨晩寝不足だったせいで、そもそも僕は途中で眠くなった映画や音楽が悪い映画や音楽であったとは全然思っていない。

ただ、問題は途中で何度か眠りに落ちた奴が「良い曲だった」「素晴らしい映画だった」などと言っても全く説得力がないことである(笑) それを覚悟の上で書くが、とても良い映画であった。

1985年の『銀河鉄道の夜』は素晴らしい映画だった。今回はあの時と同じ、宮沢賢治の原作を、ますむら・ひろし原案による猫のキャラクターにして、杉井ギサブローが監督したものだ。

杉井は3年かけて脚本を書いた上で、今回も盟友であるグループ・タックの田代敦巳に制作を委託したが、田代が亡くなり、タックが解散し、その後を手塚プロが引き継いだ形である。

グスコー・ブドリはイーハトーヴの森に両親と妹と一緒に幸せに暮らしていたが、天候不順による冷害で森で食べ物が獲れなくなり、両親は食べ物を探しに家を出たまま結局戻らなかった。そして、妹のネリは突然現れたコトリという謎の人物に攫われてしまった。

ブドリはコトリを追って家を出るが途中で力尽きて倒れ、テグス工場の工場主に拾われて仕事を憶え、里へ降りて赤ひげの畑で働き、畑が旱魃でダメになったために今度は街へ出る。そこでコトリを見つけて追うが見失い、やがてクーボー博士の紹介で火山局の研究員となる。

この間、何年も何年もかかる物語である。そして、観客から見ると、どこからが現実でどこからが夢で、あるいはどこまでが現実でどこまでが幻覚なのか、はたまた幻覚などではなくパラレル・ワールドとでも言うべきものなのか、見ていて判然としないところがある。

ある意味非常に抽象的な作品なのである(だから眠くなる、と言い訳しておこうw)。

見終わって「難しかったなあ」と言っている人がいたが、確かに難しく解釈しようとすると、いろんな解釈を許してしまうので余計に難しくなる。ただ、ブドリに振りかかるさまざまな艱難辛苦は、我々の世の中にあふれる不条理のバリエーションでしかない。

いろんなものを捨象してみると、描かれているのはとても単純なことで、ブドリの家族への愛情と、なんとかして他人のために役立ちたいという思いだけである。

このストレートなメッセージはしっかりと伝わってくる。

なんと言っても、絵の表現力は抜群である。そして、世界観はしっかりと構築されている。キャラクターに魅力があり、登場人物が猫であるという非現実な描き方をしているのに不思議なリアリティがあって、その一方で心地良い浮遊感がある。

キャラクターの動きや表情と田園の風景、建物や乗り物などの街の風景が本当に見事に有機的に絡まって、そこに小松亮太の音楽がマッチして、これは他のクリエイターには決して真似の出来ない独創的なマスターピースになっていると思う。

日本ではとかくジブリの作品に人気が集まるが、僕はこういう作品がもっともっと評価されてしかるべきだと思う。

杉井ギサブローって、てっきりもう80歳近いと思っていたのだが、まだ72歳である。次の作品にもさらに大きな期待が持てるのではないだろうか。

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