多分、靴紐
【7月25日特記】 今朝僕が会社に行く時にマンションのエレベータに乗り合わせた家族がいた。家族としては少し変な組合せかもしれないが、やっぱり家族だろうと思う。
30歳を少し超えた辺りの女性。30代半ばか、ひょっとしたらアラフォーの女性。そして60代後半ぐらいの男女。
この男女は見るからに夫婦という感じ。となると、夫婦と2人の娘か? そういう組合せで2LDK(あるいは3LDKかもしれんが)から出てくるというのも珍しいが、ひょっとすると娘たちが両親の家に泊りに来ていたのかもしれない。
で、多分これから4人で旅行に行く。多分海外。
4人のうちの3人が、旅行に行くにしてはあまりに軽装なのだが、これは恐らくスーツケースを既に空港に送ってあるということなのだろう。一番若い女性だけがキャリーバッグを引っ張っている。多分忙しくて事前に送る暇がなかったのか、あるいは、キャリーバッグだから別にいいと思ったのか…。
そうやって、いろいろ観察していると、どこからどう見ても家族の海外旅行という風に見えるのだが、僕が最初にそう確信したのは老夫婦の靴である。
おそろいではない。が、2人とも真新しいスニーカーを履いている。真っ白なスニーカーではなく、模様をあしらったスニーカーなのだが、白いところがやけに白い。歩く後ろ姿を見ていると、靴の裏までいかにも今日初めて履きましたという感じに白い。
多分あの靴で観光地を歩きまわるのだろう。「お母さん、そんな靴じゃすぐに足が痛くなって歩けないわよ」と娘に言われて、「じゃあ、ついでに俺も」などと言い出した夫と2人でスニーカーを買いに行ったのだろう。
履いているズボンが、ズボンという感じではなく、もちろんパンツなどと言う代物ではなく、ああ言うのは昔スラックスなどと言われたんだろうなと思うのだが、そのズボンと靴の組合せが全然合っていない。その感じがとても張り切った海外旅行っぽいのである。
とりわけ僕の目を惹いたのは、靴の白さよりも、靴紐の白さである。真夏の朝のきつい太陽に照らされて、輝くような白さだった。あの白さを見て、家族の(ひょっとしたら初めての)海外旅行という気がしてきた。
時には靴紐がいろんなことを語ってくれる。白いのもまたいいなあと思った。
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