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Saturday, June 09, 2012

映画『シグナル 月曜日のルカ』

【6月9日特記】 映画『シグナル 月曜日のルカ』を観てきた。

監督の谷口正晃は助監督時代から名前に記憶があり、劇場用長編デビュー作の『時をかける少女』(主演:仲里依紗)で「ああ、いい監督だ」と思ったのだが、その後桐谷美玲主演の2作を見逃して、今度こそは見なければと思って見に行ったのだが、今作はちょっとしんどかった。

まず、上手い役者がいない。主演の三根梓は映画初出演で初主演なのは良いとして、実は初演技でもある。パンフを読むと如何に彼女が演技者として長足の進歩を遂げたかが書かれているが、それにしてもこの役は荷が重い。

これを演じられるとしたら誰だろう? 思いつくままにいろんなタイプの女優を挙げると、谷村美月、満島ひかり、美波、小池栄子、松たか子、中村映里子──いずれにしてもかなりの実力者でないと却々難しい役であると思う。

脇を固めている、西島隆弘にしても井上順にしても宇津井健にしても、味のある役者ではあるが巧い役者ではない。だから全体に芝居が浮いてくる。

西島隆弘はとても面白い雰囲気を醸しだす役者で、僕は嫌いではないのだが、ストーリー展開のせいもあるが、ここでは演技全般が非常に人工的な感じを与えてしまう。唯一上手いと言えるのが高良健吾かと思うのだが、これがまた思いっきりエキセントリックな役なので、これまた浮いた感じになってしまう。

そもそも設定自体がかなり浮いた感じの話なのである。

夏休みに帰省した大学生・恵介(西島隆弘)が地元の名画座の映写技師補助のバイトに応募する。そして、支配人の南川(井上順)に採用される(しかも、バイト代はこの地域の平均値の倍額である)のだが、彼は女性の映写技師長であるルカ(三根梓)に関して3つの約束をさせられる。

  1. ルカに恋愛は禁止
  2. 月曜日のルカは憂鬱なのでそっとしておく
  3. ルカの過去を聞いてはならない

と、ここまで読むとかなりミステリアスなタッチに思われるのだが、実はこのタッチは持続しない。それが原作となっている小説のせいなのか、あるいは小林弘利・鴨義信の共同脚本のせいなのか分からないが、なんかまとまりに欠けていて、と言うか、息切れ感/継ぎはぎ感が出てくる。

そして、進行の随所に大きな穴、小さな穴があって、そのため観客は映画に没頭できないのである。

例えば、ルカを探しているウルシダレイジ(高良健吾)が3年間もルカの居所がつかめないというのはいかにも不自然。ひとりで顔を伏せて泣いていたルカがわざわざ恵介の方を向き直って泣き顔を見せるというのも不自然、等々。

作中の恵介の台詞にもあるように、これは「都市伝説のような話」なのである。で、都市伝説のような実体の乏しさをそのまま映画に持ち込んでしまった印象が強く、とても人工的な造形に思えてしまう。そして、不思議なことに、それに合せて台詞の間まで少し現実感を失っている気がする。

一生懸命頭で考えましたという筋立てに乗って、三根梓が一生懸命頭で考えた演技をしている感じが出てしまっているのである。

とは言え、路地みたいなとこを通って入っていく名画座のセットは素敵で、画は全般に感じが良い。ちょっと良いお話にしようとしすぎた感もないではないが、爽やかにまとめたとも言える。

そして、三根梓は眼力(めぢから)のある女優である。今後演技の幅を広げればもっと味が出てくるだろう。

まあ、いずれにしても、監督に対しても演者に対しても、次回作に期待、というところではないかなと思う。うん、悪い映画ではないのだけれど。

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