サイトとネットワーク
【6月18日特記】 世にブログが出てきたとき、それは「日記型簡易ホームページ」などと呼ばれた。どうも事の本質をついていないネーミングであると首を傾げたものだ。
twitter が登場したときもそうだった。それは「ミニブログ」などと言われた。その呼び方が如何におかしいかについては、このブログにも書いた(「ミニブログは穴あき生姜の夢を見るか?」)。
そして、最近とても気になるのが、ここのところ日経新聞で連日目にする「交流サイト(SNS)の最大手、フェースブック」という表現である。
ソーシャル・ネットワーキングを交流サイトと訳してしまうのはこれまたとんでもない的外れである。みんながひとつのサイトに集まってきて交流しているイメージではないか? それでは昔のBBSと何等変わっていない。
そもそも、中心に企業が作ったサイトがあってユーザがそこを訪れて読んだり書き込んだりする、というところから、それぞれのユーザが自分のPC上でいろんな人と繋がる、という構造に変化したことこそが革命的であったのに、そのことを全く理解していない。
そこにあるのがサイトではなくネットワークなのだという、この根本的な違いが飲み込めていない。みんなが同じ画面を見ているのではなく、かなり親しい友だちであってもそれぞれが微妙に違う画面を見ているのだという面白さを理解していない。
ちょうどコンピュータ・システムがホスト型からクライアント・サーバ型に変わってきたのと同じように Web上のサービスの形も変わってきたのである。ちょうどクラウド化の流れに沿うような形でサービスの形も変化してきたである。
──そこら辺のことを全く解っていない人でなければ、「交流サイト」などというとんでもない訳語は決して出てこないだろう。
「ソーシャル」を「交流」と訳したのはまあ良いとして、「サイト」は一体どこから出てきたのだろう? SNSの最後のSはサイトのSではない。サービスのSである。
「そんなこと言うけど、ソーシャルとかネットワークとか言っても読者にはピンと来ないだろう?」などと言っているのが目に浮かんでくる。しかし、ピンと来ないだろうから、分からんだろうからテキトーに解りやすい言葉を並べておけば良いというものではない。
サイトとネットワーキングは決定的に違うのである。この違いを認識しないのは致命的である。そこが言わばキモなのだから。
分かってない奴が分かってない人に説明すると、ものごとはますます分からなくなるのである。この訳語はその最たる例ではないかと思う。
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