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Friday, May 11, 2012

映画『モンスターズクラブ』

【5月11日特記】 映画『モンスターズクラブ』を観てきた。

豊田利晃監督は『空中庭園』で初めて知った。それまでは全然知らなくて、初めて観たこの映画で「こんなすごい監督がいたのか」と悔しい思いをした。ところが、公開直前に覚醒剤所持で逮捕されて、長いブランクが空いてしまった。

復帰第1作の『蘇りの血』も観た。短い映画だったが鮮烈な印象があった。そして今回のこの映画である。

別に物語があって起承転結があってカタルシスがあるという映画ではない。これは映像詩である。いや、これは詩であると言ったほうが解りやすいかもしれない。ストーリーが観客をドライブしてくれる映画ではない。観客が自分で考えて自分で感じなければならない映画である。

自分で考えて感じることができれば、この映画は刺激に満ちた作品になる。そうでなければ「何だかよく解らない映画」で終わることになる。

物語はないと書いたが、全くないわけではない。ただ、導入部があってそこからどんどん展開してクライマックスへ、というような物語はない。しっかりした設定はある。

垣内良一(瑛太)は雪深い山の中の小屋で自給自足の生活を送りながら爆弾を組み立てている。そして、爆弾ができあがるとそれを大企業の社長などに宛てて送りつけている。死者も怪我人も出ている。

良一には自殺した兄ユキ(窪塚洋介)とバイクの事故で死んだ弟ケンタ(KenKen)がいる。その死んだはずの2人がたびたび山小屋に現れる。現れては良一をなじり、挑発する。そして、なんだか分からない化け物(ピュ~ぴる)も現れる。

良一の両親(國村隼、松田美由紀)も既に死んでいる。生きているのはまもなく大学生になる妹ミカナ(草刈麻有)だけである。

良一のモデルは1990年代にアメリカ社会を震撼させた爆弾魔ユナボマーである。時代も国も変えてあるが、ユナボマーのいろんな要素を取り込んである。ユナボマーは愉快犯ではない。彼の心の底辺にあったのは社会批判であり、文明批判であった。

いや、予備知識を持って見る必要はない。僕も何も知らずに観た。ただ、見終わってからパンフを買って読めば良い。ああ、なるほど、そうなのか、と思う。

最後に流れる詩の言葉がものすごく斬れるので驚いたのだが、これは宮沢賢治だった。そう、この映画は他にもいろんなものを踏まえていたり、引用していたり、意識していたりする。結構深い。そして、いつもながら音楽が映像にすごくマッチしている。

真っ白な雪に囲まれたオールロケの画に時として圧倒される。澄んだ音にも驚かされる。そして、ユキという名前が雪を踏まえているのだという簡単なからくりに、映画の終盤になって気づく。

解釈するも良し、解釈しないも良し。いずれにせよ、あとはそこから僕らが何を思い何を感じられるかが勝負である。

瑛太のデビューは豊田監督の『青い春』である。この映画にはその他にも所謂「豊田組」の役者やミュージシャン、スタッフが多数関わっている。そんな中で、初めての豊田作品出演である窪塚洋介が光っている。

この映画は観客に何かを読み取らせようとする。あるいは感じ取らせようとする。とてもスリリングな映画だと、僕は思った。

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