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Saturday, May 19, 2012

映画『ポテチ』

【5月19日特記】 映画『ポテチ』を観てきた。原作の舞台でありロケ地である仙台で先行ロードショーした後、漸く関西にも回ってきた。

原作・伊坂幸太郎、監督・中村義洋、出演・濱田岳、音楽・斉藤和義という組合せでは『フィッシュストーリー』(09)『ゴールデンスランバー』(10)に続く3作目、斉藤を除いた3人の組合せだと『アヒルと鴨のコインロッカー』(07)から数えて4作目になる。

これだけ同じメンバーが続くというのは、原作者の伊坂が如何に中村のチームを信頼しているかを物語っている。この映画で中村監督自身が演じている「中村親分(専務)」という役柄は、伊坂がそもそも役者・中村義洋のイメージで小説に書いたキャラクターだと言うから、その親密度も窺い知れるというものである。

僕は伊坂幸太郎の本は何冊か読んでいるし、濱田岳の映画も結構見ているし、斉藤和義の歌も何曲か音源を持っており時々聴くが、でもとりたてて彼らのファンであるというほどのものではない。ただ、中村義洋監督についてはかなりのファンである。

『ルート225』(06)以来、僕が映画館で見るのはこれが10本目である。脚本家としては『刑務所の中』(03)以来7本目ということになる。そして、監督としても脚本家としても、間違いなくこの映画が中村義洋の最高傑作になったと思う。とても良かった。ものすごく面白かった。そして深い深い感動がある。

如何にも伊坂幸太郎という感じの作品である。もう4作目ともなると、中村義洋監督は伊坂のトーンというものを正確に心得ている。いろんなパタンの伊坂作品の中で、これがどのあたりに位置するどういう色合いの作品なのかということまで、細かく把握している感じがある。

この作品はちょっと不思議な作品である。写実性は少しだけ脇にやって、ファンタジーが前面に出てくる。そして、ファンタジーが前面に出てきた分、鮮やかな希望が現れる。

主人公の今村(濱田)は空き巣である。とはいえ、ただ空き巣だけやっていれば良いものを、なんだか余計なことばかりしている。今村が同棲している若葉(木村文乃)と出会ったのも、中村親分(中村)と2人で空き巣に入った家にかかってきた電話に反応したのがきっかけである。

今村には黒澤(大森南朋)という兄貴分がいる。この黒澤も空き巣で、副業は探偵で、他人の気持ちが解らないと言う。この4人の会話がとても奇妙で面白い。そもそも今村という男が変わっているのだが、他の3人もかなり変わっていて、でも、この4人の変わり者の歯車ががっちり噛み合っているところが面白い。

そして、今村は自分と生年月日が同じプロ野球選手・尾崎(阿部亮平──この人はいつも怪物みたいな役柄ばっかりだった俳優で、今回はものすごいイメージ・チェンジである)にものすごく肩入れしている。──これぐらいにしておこう。結構ストーリーが命の映画であるから。

もちろん原作に負うところも多いのだが、それにしても本当によく書けた脚本である。スタッフ/キャスト・ロールの後のラストシーンまで見事に繋がっている。ため息が出そうなほどの計算しつくされたラストである。心がパーっと明るくなる。

人物中心に追ってきたカメラが野球場のシーンで解き放たれたような感じになる。ここでの構図は本当に素晴らしい。

そして、濱田と大森という一癖も二癖もある男優に挟まって演技している木村文乃が、もう信じられないくらい素晴らしい。この映画で初めて知ったのだが、今後の仕事から眼が離せなくなってしまった。

それから、ポテチ、だ。僕がこのタイトルの意味を、そして車の中でポテチを食べるシーンの意味するところを了解したのは、映画館を出て暫くしてからである。

ああ、なるほど、そうだったのか!

この感動は非常に深い。

本当に本当に見事な映画である。なんと8日間で撮ったという短い作品であるが、これは忘れられない作品になった。完全に名人芸の域である。良い映画に巡り会えて、今日はとても嬉しかった。

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