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Saturday, May 05, 2012

映画『宇宙兄弟』

【5月5日特記】 映画『宇宙兄弟』を観てきた。

例えば予告編を見る。面白そうだな、観てみようかな、と思う。でも、僕の場合それだけでは却々よし観るぞ、と決めるところまでは行かない。監督名を確かめて、あ、この監督か、よし観るぞ、というのが僕のよくあるパタンである(もちろん知らない監督だと観ないということでもないが)。

この映画もそうだった。例によって原作の漫画は全然知らなかったのだが、予告編が面白そうだった。そして、監督名を見て、よし観るぞ、と決めたのだが、問題は僕が森淳一監督と勘違いしていたこと(笑)

この映画の監督は同じ森でも森義隆監督、テレビマンユニオンの人だった。

だが、こういうのを怪我の功名と言うのである。カメラが良い、脚本が良い、役者が良い、と三拍子揃った良い映画だった。

出だしの川っぺりの原っぱのシーンから良い。カメラがゆっくりゆっくりパンナップしてくる。そこに南波六太(ムッタ、中野澪)と日々人(ヒビト、中島凱斗)の兄弟。この兄弟が画面の真ん中にはいない。少し下手に寄っている。そういうバランスが良いなあと思う。

この2人が長じて(それぞれ小栗旬と岡田将生が演じている)宇宙飛行士になる話だ。ただし、優等生のヒビトは一気に月面長期滞在のメンバーに選ばれるまでに至るが、劣等感いっぱいの兄のムッタはかなりの紆余曲折がある。

それでも兄が遅ればせながら宇宙飛行士を目指したのは、子供の頃に弟と交わした約束があったからだ。

この2人のシーンで、カメラはしばしばゆっくりゆっくり寄ってくる。これがとても良い感じである。そして、空を見上げて走るムッタの肩越しに薄く見える朝の月とか、月面のヒビトのヘルメットに反射する地球とか、CGも含めてだが、カメラがとてもセンスのある動き方をしていると思う。

撮影は周防正行作品を多く担当している栢野直樹である。

そして、特徴的なのは小栗旬のクロースアップが非常に多いこと。画面の縦の幅の限界まで寄って、シーンによっては何があったのかを小栗旬の表情の動きだけで観客に伝えようとしている。小栗にとってはかなりプレッシャーのかかる現場だったのではないだろうか。

長回しにしてアドリブといった手法も採っていたようだが、僕にはこの、これでもかこれでもかというアップのほうが印象に残った。

脚本は大森美香である。原作はもっともっと長くて、まだ終わっていないということなので、かなりの部分がオリジナルなんだろう。どのくらい原作からそのまま抜いてきたのかは分からないが、この筋運びはかなり巧い。

子供時代の短いプロローグの後、ヒビトが月面に滞在するメンバーに決まった記者発表の場面から手際よく展開し、中盤の、一見あまりメインのエピソードに思えない、ムッタがJAXAで宇宙飛行士の訓練を受けるところにたっぷりと時間をかけて、クライマックスの月面でのヒビトの事故のシーンはあるところでバッサリ省略。

こういう構成は勇気が要るだろうと思う。でも、中盤に時間をかけたのも、終盤で大きくカットしたのも大成功である。結局派手な月面のシーンよりも、訓練所での6人の宇宙飛行士候補生の鞘当てのほうが意味を持って僕らの心に入り込んでくる。

この組立は本当に見事である。台詞にも気負いがなく自然で、でもしっかりと伝わってくる。宇宙を描く上でのSF的な正しさがどうなのか、僕にはよく解らないが、まあ、ちょっとくらい間違ってても良いかという気になるくらいである。

そして、前述のようにアップに耐える小栗旬のケレン味たっぷりの熱演がある。小栗と岡田というキャスティングも最高である。2人とも極めて器用な役者だと思うが、それぞれをこの役に当てはめた発想が大正解だと思う。

吹越満、濱田岳、新井浩文など、僕の好きな役者たちががっちり脇を固め、とても個性豊かに演じている。他にも麻生久美子、井上芳雄、塩見三省、堤真一らが良い味を出している。

そして、本物の元宇宙飛行士、人類が月面に初めて降り立ったアポロ11号の乗組員、バズ・オルドリン。この人の登場シーンを見ながら、ああ多分この爺さん本物なんだろうなあと思ったらやっぱり本物で、そんな爺さんに思いっきり穿った名言を吐かせて、なんか万感胸に迫るものがあった。

いやあ、本当に良い映画だった。心がじんわり温もって晴れやかになるよ。宇宙というものも、兄弟というものも、両方ともとても魅力的に描けている。そこが良いところなのである。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

soramove

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