雑感:バスの中で(2)
【5月1日特記】 ちょうど2年くらい前にも書いたことだが、バスに乗る度に世の中が変わったと思う。
僕らが小学生の時、僕らはともかく他人に迷惑をかけないことを最優先に生きていた。だから、自分のせいでバスの発車が遅れたりすることのないように、自分が降りる停留所に近づく前に車内を歩いて降り口の近くまで行っておいたものである。
そういう生き方がしみついているから、何をするにも他人に嫌がられないことが一番大切なことだった。他人から尊敬される立派な人間というのはまず何を措いても他人に迷惑をかけない人間であった。
だから、例えば僕らがゴルフを始めた時は、ともかくクラブを3本持って走ることを心懸けた。自分が楽しいかどうかなんて二の次である。
話が飛躍しすぎるかもしれないが、オリンピック選手はインタビューを受けたとき、決して「楽しみたいと思います」などとは言わなかった。ただ日本人として恥ずかしくない、国家の名誉を汚さないプレーを心懸けるだけであった。
別に昔の人は偉かったという話ではない。ひょっとしたら、事故が起きた時に訴えられるのを恐れて、バス会社が方針を転換しただけのことなのかもしれない(昔はそんなことで訴える人は独りもいなかったから)。
だから、それが生き方として良いか悪いかを今ここで言うつもりもないし、多分一概に言い切ってしまうこともできないだろう。
ただ、世の中は昔と180度変わってしまったのだと、バスに乗る度に、バスに乗って「バスが停まってから席を立ってください」という表示を目にし、アナウンスを耳にする度に、実感するのである。
で、世の中が180度変わったことによって、もちろん昔あった問題が解消したというようなこともたくさんあるだろう。だが、一方で間違いなく、昔はなかった問題がどこかで持ち上がっているはずである、という気がするのである。
その問題が何なのかよく解らないまま書いているのだが、しかし、自分はその新しい問題にちゃんと対処できるのだろうかと考えてみると、何やら獏とした不安に襲われるのである。
そういうわけで、僕はバスに乗る度にちょっと不安になる。我ながら変な話だとは思いながら。
Comments