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Saturday, March 10, 2012

映画『TIME/タイム』

【3月10日特記】 映画『TIME/タイム』を観てきた。初めて予告編を見た時から大変魅かれた映画。で、この手の映画で多いのは、予告編がほとんど全てで、わざわざ映画館でお金払って全編観るこたぁなかった、というパタン。

──この映画はある意味そういう映画であるとも、いやいや決してそういう映画ではないとも言える(それはつまり、予告編のインパクトがそこまで強かったという証でもある)。

単に筋だけ追って行く人にとっては確かに少し物足りないかもしれない。大どんでん返しとか、遂に謎が解明されるとかいう終わり方ではないので、予告編から受けた衝撃に比べると、見終わった時の感動は小さいかもしれない。多分それが落胆する人のパタンなのだろう。

しかし、僕は大変面白かった。それは、この映画が、まさに画として面白かったからだ。

画として面白いというのは、必ずしも綺麗な風景や見事なセット、あるいは凝ったカメラワークだけを言うのではない。それ以前に、画面の中でのジャスティン・ティンバーレイクとアマンダ・セイフライドの動きがまことに「絵になっている」からなのである。

僕は『ソーシャル・ネットワーク』を観るまでジャスティン・ティンバーレイクが役者をやってるなんて知らなくて、しかも強烈な役だったので結構印象に残った。で、今回はあの役とは180度違うと言って良い役柄である。この人、俳優としても才能があるのかもしれない、と今ごろ思った次第である。

そして、アマンダ・セイフライドのほうは今回初めて見たのだが、これがいい! スタイルも良いし、セックス・アピールは満点である。濃い目の化粧もそんなに嫌味がない。金持ちのわがまま娘の良さも悪さもちゃんと見せてくれて、とても魅力的である。

この2人の占める割合が非常に高かった。この2人が走っても、跳んでも、撃っても、抱き合っても、それはともかく魅力的な画なのである。そして、パンフを読み返してみてもよく分かるのだが、いろんなカットが、色と言い角度と言い、悉くドラマティックなのである。だから飽きない。

そして、何よりも物語の設定である。

この物語では全ての人間の成長は25歳でストップする。つまり、70歳の爺さんでも25歳の若者の顔と体をしている。ただし、25歳になった瞬間から全ての人間の左腕に埋め込まれたボディ・クロックが起動し、余命時間のカウントダウンが始まる。

そして、その余命の長さにはとんでもない貧富の差があって、富裕ゾーンに住む者は何百年もの時間を持っており、スラム・ゾーンに住む者は毎日1日にも満たない時間しかなく、生き延びるために働いて時間を稼ぐしかない。そう、ここでは全ての商品は通貨ではなく時間で売り買いされる。生き延びるための時間さえも。

──なんと秀逸な設定か! なんと面白い空想科学か!

この設定を考えた時点で、もうこの映画の成功は約束されたようなものだと思う。この設定を立て、脚本を書き、監督をしたのがアンドリュー・ニコルである。あまり洋画には詳しくない僕でも、「ははあ、『トゥルーマン・ショー』の脚本書いた人か」と納得してしまう。

ただし、どう考えても、あらゆる点で「警備」が甘い──そういう進行上の穴がある。ストーリーはそういう疵のある設定の上で動いて行く。そういうところが許せないと言う人は多分この映画は楽しめないだろう。

パンフでは誰かがこの2人をボニーとクライドになぞらえていた。僕はちょっと違うように思う。ただ、『俺たちに明日はない』と同様、この映画も単に若い2人の強盗を描いて終わる娯楽作品ではなく、そこに社会性や精神性を強く焼き付けている。それがそう簡単に真似のできない脚本である所以だと思うのである。

かなりの名人芸を見せてもらったな──見終わってそんな印象が強く残った映画だった。


【3月11日追記】 後から調べたら、この映画の撮影監督はロジャー・ディーキンスと言う人で、コーエン兄弟のほとんどの作品の撮影監督を務め、アカデミー賞にも9度ノミネートされているそうである。

道理で「画として面白い」はずである。

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