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Sunday, March 18, 2012

映画『僕等がいた 前篇』

【3月18日更新】 映画『僕等がいた 前篇』を観てきた。

『SHAME シェイム』とどっちを観るか迷ったのだがこっちにした。僕のような年代の者にとっては間違いなく『SHAME シェイム』のほうが面白そうに思ったのだが、それでもこっちを選んだのは三木孝浩監督の力量を見極めたかったからである。

前作『ソラニン』を僕は割合褒めた。ただ、映画は褒めたのだけれど、監督の力量は正直言ってよく判らなかった。僕が勝手な解釈で映画を褒めただけだったのか、それとも三木孝浩監督は僕と同じ感性を持った人なのか、そこがよく判らなかったのである。

冒頭からカメラが吉高由里子の周りをグルグル回る。普通冒頭からこんなことはあまりやらない。しばらくは「なんか力入ってんなあ」というカメラワークが続く。でも、最後まで見通すとやっぱり画作りの巧い監督だなあと思う。人も景色も、良い画がたくさん出てくる。

『ソラニン』に続いて原作はコミックスで、なんと1200万部突破の大ヒット少女コミックなのだそうである。例によって僕は読んでいない。で、当然恋愛を中心としたドラマである。

クラスの3分の2の女子が好きになるという矢野(生田斗真)。その彼に反発しながら、いつしか彼のことを好きになっていると気づく高橋(吉高由里子)。そして、それを素直にすっと言葉に出せる高橋。この2人が主役である。

そして、矢野となんかワケアリな感じの、暗~い優等生・山本(本仮屋ユイカ)。矢野・山本と中学から一緒で、矢野の親友であり、矢野と高橋の間を取り持つうちにどうしようもなく高橋を好きになってしまう竹内(高岡蒼佑 ※フィルム上のクレジットではまだ「蒼甫」)。

──その4人を中心とした物語である。ただ、冒頭の高橋の語りから、高橋と矢野の恋愛は現在進行形ではないことが判る。今どこにいるのかも知らないと言っている。このことがドラマを見ている上でずっと気になる。

で、ストーリーは、一刀両断にしてしまうなら、メロドラマである。青春ものである。青春を過ぎて久しい者が見ると、やや恥ずかしい。やや子供騙しな感じもする。ただ、台詞がよく書けているので不思議に安っぽさがない。

決して自然な台詞ではない。青春ドラマにありがちな、やや大仰な、かなり気取った台詞である。けれど名台詞ではある。原作の台詞をそのまま活かしたところが多いらしいのだが、その名台詞を他の台詞と自然に溶け込ませて、非常に巧く流している。正直巧いと思う。脚本は吉田智子。僕の観た映画では『クローズド・ノート』を書いた人。

で、何と言っても吉高由里子がめちゃくちゃ良い。天真爛漫で、天然ボケで、普通っぽくて、屈託がなく、とても素直で、前向きな高橋七美をあますところなく表現している。ともかく強い女の子である。しなやかさとしたたかさがまっすぐに伝わってくる。

2007年の『転々』で見初めて以来、彼女の出演作を映画館で見るのはこれが9本目だが、どの吉高由里子よりも素晴らしかった。さながら全編吉高由里子ショーである。

──そう思いながら帰宅して、自分が書いた『ソラニン』の映画評を読み返してみたら、そこには「宮﨑あおいショーだと思って観るならファンにとっては堪らない映画である」と書いてあるのでびっくりした。うん、そんな風に上手く出演者の魅力を引き出せる監督なのかもしれない。

そして、共演の高岡蒼甫がいつも通り本当に巧い! さらに、高岡同様僕が大好きなのが本仮屋ユイカ。今回はいつもとちょっと違うキツイ役。これも却々のものである。

そういうわけで、結構引き込まれて見てしまうのである。自分の若いころの恋愛を思い出して、同時に苦々しい感じまで蘇ってきてしまう。画面の中の2人と自分の恋愛を、いつしか重ね合わせて観ている自分がいた。

で、結論。この監督は多分登場人物を突き放した眼で観ている。──そう、僕はそれが確かめたかったのだ。

人物に入れ込んで描いていると、逆に人物に対する優しさは現れてこない。監督は矢野と高橋を突き放して、彼らが人を苛立たせる部分も含めてしっかり描いている。そういう彼らの未熟さに対する優しさも自然に現れてくる。

さて、今回はどこで終わるのかな、と思っていたら、しかし、これがあまりにあまりの終わり方ではないか! えー、そう来るか! 最後にそんなこと言われても、と言うか、え、それは予期できんかったぞ、と言うか。──ともかくこれは後篇を観るしかないのである。

黒味にキャスト/スタッフのロールがスーパーされ、エンディング・テーマである誰かの歌が始まる。待てよ、この声は聴いたことある。この特徴的な高音部の割れ方は、そうか、ミスチルの櫻井だ。──などと思いながら耳を澄ます。良い曲である。

で、このあと絶対に後篇の予告編が入るだろうと確信して待っていると、果たせるかな予告編が始まる。帰りかけた客が通路で足を止めている。

もう、この予告見ると次を見る以外選択の余地はないのである。そう、つまり、前篇ではまだ物語はほとんど始まっていなかったのである。今日観たものは前篇と言うより序章である。逆に言うと、だから2作に分けたのだろう。1本でこの物語を描くとしたら、今日の部分はかなりばっさり落とした上で、恐らく最初の20分くらいにまとめるしかないだろう。そうする訳には行かなかったのである。

そうするには惜しい前篇である。しかし、結果的に作品としてのまとまりにはやや欠けてしまった前篇でもある。

最近この手の2部作、3部作が増えてきた。『20世紀少年』のときにも書いたが、まだこのタイミングでこの作品を評価すべきではない。これは後篇を見終わってから2本一緒に評価すべき作品である。

ただ、ここまでの時点で、生田斗真も含めて、役者たちの演技は素晴らしく、とりわけ吉高由里子が目を瞠るほどの魅力全開であった。それだけは確かであると書いておこう。

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