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Thursday, February 09, 2012

キャベジンのその後

【2月7日特記】 中学校の同級生に某君というのがいた。某君と書いたのは名前を匿しているのではなく、思い出せないのである。同じクラスだったけれど全然親しくはなかった。僕とは違う小学校出身の、背の高い奴だったという記憶しなかい。

ある日その某君が、トイレで会った僕に言った。

おい、お前、何人(なにじん)や?

え?

お前、何人や、って言うてんねん。

お、俺か? 俺は日本人や。

そうか、俺はキャベジンや。

他日、トイレで会うと、また某君は僕に話しかけるのであった。

おい、お前、何人や?

俺は日本人や。

そうか、俺はニンジンや。

読んでお解りの通り、面白くも何ともない。僕らはその後ただ黙っておしっこをして手を洗って出て行くのである。

これはひたすら僕だけをターゲットに投げかけられた会話だったのだろうか? それとも、その頃彼は片っ端からみんなにその質問をしてその答えをコツコツと積み重ねていたのだろうか? ──それは分からない。ただ、その日のことを僕は時々ふと遥かに思い出すのである。

懐かしいのでも、怪訝な感じが甦るのでもない。ただただ、遥かに思い出すのである。

彼が今何をしているのかは知らない。そもそも名前さえ思い出せないのだから、調べようもない。ただ、彼はひょっとすると、もう何事かを成し遂げているのかもしれない。──思い出すたびに僕はそんな気がしてならないのである。

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