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Saturday, February 18, 2012

映画『キツツキと雨』

【2月18日特記】 映画『キツツキと雨』を観てきた。沖田修一監督作品。

前作の『南極料理人』の時も、予告編を見て面白そうだと思ったのだが、なんとなく期待外れなのではないかという勘が働いて観なかった。ところが、この勘はあまり当たっていなかったようで評判が良かった。そして、今作も同様に評判が良いので、自分の勘は信じずに観に行くことにした。

冒頭が予告編にあったあのシーンだ。きこりの克彦(役所広司)がチェーンソーを使っているところに、映画のチーフ助監督(古舘寛治)が現れて、「撮影やってるので、一瞬音を止めてもらえませんか」と言いに来るシーンである。

この2人の会話の間が良い。いや、全編にわたって台詞の間にはかなり神経を使った演出になっている。

克彦のボケた受け答えも良いが、チーフ助監督の腰が低いようで逆に厚顔な感じがとても良い。この古館という役者、僕は知らなかったのだが、沖田映画の常連らしい。

残念なのは、予告編を観た人は小栗旬が扮する田辺幸一が「気の弱い映画監督」であることを既に知っていることである。あれ、予告編の中でわざわざ謳う必要があったのかなあ? 観客も克彦と同じように、「なんだこのいじけた役立たずの若者は!?」という眼で見始めることができたらもっと面白かったのに、と思う。

それから、もうひとつ思ったことがあって、この田辺幸一が25歳の若さで監督の座に付いており、逆に監督の座についていながらなんとも気後れした態度を見せているのは、恐らく現実の沖田監督と同様に、学生時代に自主制作映画で注目されて起用されたのは良いが、今までずっと学生仲間と一緒に撮っていたのがいきなりプロの職人の中に放り込まれて…、という設定なのだろう。

確かにそういう想像はつくのだけれど、どこかにそれを匂わせる台詞ひとつくらいあったほうがよかったのではないかなということである。

気になったのはそれだけ。あとは気持ちの良い、楽しい映画だった。

カメラはしばしば動きを止めて、役者たちの長い芝居を見せてくれる。このリズムがなかなか良い。克彦と田辺があんみつを食べるシーンなどは、途中から2人のアドリブ合戦になったので面白くてカメラを止めなかったのだろう。そういうシーンがちょこちょこある。

結構多彩な役者が出演しているが、その中でも特に僕が昔から大好きなのが神戸浩(かんべひろし)。ちょっと抜けた酒屋の主人をやっていたのだが、もうサイコー。自分でゾンビーって叫ぶゾンビを初めて観た(笑)

で、カメラマン(嶋田久作)が監督に「このカット、レール敷いて撮っていいか?」って訊く辺りから、劇中の撮影現場に一体感が出てくるのと同時に、観客の我々にも映画作りの愉しさがひしひしと伝わってくる。見事な脚本である。

「ゾンビ映画の撮影の虜になって、撮影現場に入り浸ってしまう60歳のきこり」というなんじゃそりゃの設定なのだが、そのなんじゃそりゃ感はそのままに、しっとりとした良いお話に落としこむ手管はかなりのものだと思った。

木製の将棋盤や木製のチェアなど、小道具の使い方、織り込み方も冴えている。細部にまで神経の行き届いた映画だと思った。


【2月19日追記】 この記事を書いた後で思い出した。この映画でチーフ助監督を演じていた古舘寛治という役者は『マイ・バック・ページ』で妻夫木聡の先輩記者役をやってた人だ。あの役も非常に印象深かった。

調べてみたら、他に僕の観た映画では『松ヶ根乱射事件』にも出演しているようだ。ただ、こちらは端役だったらしく、全く記憶に残っていない。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

soramove
ラムの大通り

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» 『キツツキと雨』 [ラムの大通り]
----確かこの映画って、 去年の東京国際映画祭で話題になっていた作品だよね。 「そう。 『南極料理人』で一躍脚光を浴びた沖田修一監督作品。 もとより、映画祭は映画が好きでたまらない人々の祭典だから、 よけいにこの映画は受けたんだろうね」 ----どういうところが...... [Read More]

Tracked on Thursday, April 19, 2012 20:30

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