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Wednesday, February 29, 2012

アカデミー授賞式

【2月29日特記】 月曜日に WOWOW でアカデミー賞の授賞式を観た。昼間の生放送ではなく、編集して字幕つけたやつ。全部観たわけではない。結果はすでに twitter で知っているから、誰がどの賞を獲ったか知りたかったのではない。それに、選ばれている過半の作品が日本で上映前のものであるから、どの映画が獲るのだろうというワクワク感もあまりない。

それでも観るのは、言わば賞ではなくショーに興味があるからである。

そう、毎年同じ気持ちで最低でも何分かは観ている。で、なんでこんなに面白いのかと毎年思う。

司会者やプレゼンターのジョークが面白い。ただ、冗談のセンスは日米でかなり異なる向きもあり、たまになんだかよく解らない、イマイチ笑えないのもある。

しかし、中には我々日本の視聴者だけではなく、会場の客も明らかに笑っていないのもある。要するにスベっているわけだ。

三流のコメディアンならいざ知らず、いずれ劣らぬ世界的な名優と言うか、セレブと言うか、そういうすごい人たちが、恐らくは一生懸命考えて用意してきたジョークが空回りするとは、胸中如何ばかりかと思う。

ただ、僕はすごい人がスベるのを楽しみに観ているわけではない。何と言うか、ショーのあり方の全てが素敵だから目が離せないのである。

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Monday, February 27, 2012

危ないところだった

【2月27日特記】 危ないところだった。

1/27の記事にも書いたのだが、税務署から確定申告の書類が送られてきて、どうやら前年に確定申告した人全員に送ってるみたいでご苦労なこった、程度に思っていたのである。

昨年はなんで確定申告したのかもすぐには思い出せなかったくらいなのだが、よく考えてみると一昨年は株で損をしたので確定申告していくらか還付してもらったのである。

今年は損は出してない。と言うか、売っても損の出る株しか持っていないので全く売ってないのである(従って見た目の損はない。もちろん含み損は別だが)。

しかし、ちょっと待てよ。何故だか去年申告した時の書類を後生大事に取ってある。それだけではなくて、去年確定申告する際に参考にした、確定申告特集の載っている株の雑誌まで取ってある。何らかの意味がないと、僕がそんなことをするはずがない。

はて、何の意味で取ってあるのか?──と考えてはたと思い当たった。

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Sunday, February 26, 2012

映画『生きてるものはいないのか』

【2月26日特記】 映画『生きてるものはいないのか』を観てきた。石井聰亙が石井岳龍に改名して最初の監督作品。長編は2000年の『五条霊戦記』以来とか。僕は1995年の『水の中の八月』以来。ま、『五条霊戦記』も WOWOW で観たけど。

随分演劇的な作品だな、と思ったのだが、それもそのはず、前田司郎の岸田國士戯曲賞受賞作(ということは、芝居の世界ではめちゃくちゃ有名な作品だったのだ!)で、映画のほうでもその脚本がほぼそのまま採用されているとのこと。

当然舞台だからこそ意表を突ける構造があり、芝居だからこそ功を奏する演出があるのだが、石井監督はそんなことに拘るのは器が小さいとでも言わんばかりに、お構いなしにほぼ原作通りの脚本で映画を作ったらしい。

なにしろ原作の戯曲を読んで映画化を決意し、結局舞台のほうは一度も観ないで映画化したというところが面白い。

さて、この映画の何がすごいって、それは台詞である。ものすごい量の台詞がめちゃくちゃリアルに飛び交う。もう電車の中や喫茶店で聞こえてくる、隣の席の若者たちの会話そのまんま。

そうそう、こいつらこういう意味のないツッコミするんだよなあ、という感じ。聞いててイライラしてくるくらいリアル。

特に最初のほうの、喫茶店で修羅場を迎えているカップルの会話と、大学の校庭での女子大生たちの会話が本当に生き物みたいにリアルである。そのテンポ、ニュアンス、コミュニケーションの皮を被ったディスコミュニケーション、軽さと馬鹿さ──いかにもいかにも、なのである。

これは脚本家が登場人物の口を借りて言わせている、ストーリーを進めるための道具ではない。脚本家の措定したキャラが勝手に立ち上がって歩き出して喋っている言葉である。今までたくさんの映画を観てきたが、ここまで見事な会話劇は初めて観た。

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Saturday, February 25, 2012

浴室の天気図

【2月25日特記】 家のお風呂に入っていると、浴室の天井に雫がいっぱい垂れ下がっていて、それこそ♪湯気が天井からポタリと背中に、みたいな状態の時と、カラッと乾いて全くそうでない時がある。

仕組みがよくわからないのだが、これは妻のせいではないかと僕は踏んでいるのである。彼女は浴室から出た後、脱衣所が寒いと言って、暖房の入ったお風呂のドアをよく開けっ放しにしているのである。

そうすると、冷たい空気が浴室に流れ込んで、みたいなことではないか、と僕は想像しているのである。

で、もしそうであるとすれば、これは天気と同じではないかという気がしてきた。

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Friday, February 24, 2012

『持ち重りする薔薇の花』丸谷才一(書評)

【2月24日特記】 丸谷才一は、僕にとっては読むのが最後になってしまった大物作家だった。なにしろ初めて読んだのが2003年の『輝く日の宮』である。その後遡って『裏声で歌へ君が代』を読み、今作が3冊目になった。

読んだことのない時からずっと気になってはいたのである。ただ、「日本語の達人」という触れ込みに恐れをなしたということもあるし、いまだに旧仮名遣いで書いているという偏屈さに対する反感もあったし、「きれいな日本語が書けるだけでは仕方がないではないか」と高をくくっていた面もあった。ところが、読んでみるとそうではないのだ。

この作家は何よりもお話が面白いのである。稀代のストーリー・テラーなのである。ともかく話に引き込まれる。先が読みたくてどんどん進む。そして、文章がうまい作家であることを感じるのは全部読み終わってからなのである。

文章がうまい作家は読んでいて引っかからない。そんなにお前は読んでいて引っかかるのか?と言われれば、僕の場合は割合そうである。

「この場面でこの台詞は不自然ではないか?」「会話であるのにあまりに説明的ではないか?」「この文節はあの文節の前に持って行ったほうが文意が通りやすいのではないか?」「この力の入りすぎた表現は何だ!」──いろんなことを思う。

ところが丸谷才一を読んでいるとそんなことは全くない。それはプロの文章家として一番求められることなのであって、本当に文章が書けるということの証明なのではないかと思う。

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無題

【2月24日特記】 皆さんの会社がどうなのかは知らないが、ウチの場合は毎月、会社の健康保険組合から「医療費のお知らせ」という紙が配られる。いつ、どこの医療機関/薬局で、誰がいくら使って、そのうちいくらを健保組合が負担していくらを本人が負担したか、というリストである。

これが何のためのものなのかがよく解らない。

ご存じの通り、例えば医療費控除を申告するとなると、証憑として有効なのは正規の領収書だけであって、この通知書は何の役にも立たないのである。

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Wednesday, February 22, 2012

ひこまたは何処?

【2月22日特記】 突然ひこまたがいなくなったのである。ご記憶の方はあんまりおられないかもしれないが、このブログの左カラムの下の方に「ひこまた」のブログ・パーツがあったのである。

言語を憶える「おはなしロボット」という触れ込みのキャラで、ユーザと会話して語彙を増やして行く。もちろん人間並みの語彙はないから、ときどきトンチンカンな会話になる。それがまた面白い──そういうキャラだった。

それがいつからか何も表示されなくなったのである。実はこのブログとは別の、自分のホームページにも貼りつけていたのだが、こちらも消えている。消えているだけでなく、その下にあったブロックが上に繰り上がって、元から何もなかったような見ばえになっている。それはブログも同じである。

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Tuesday, February 21, 2012

2/21サイト更新情報

【2月21日特記】 サイトを更新しましたのでお知らせします(このブログのことではなく、併設している私のHPの更新案内です)。

今回もいつものペースで、bk1 に投稿している書評と、レギュラーで更新している言葉のエッセイがひとつずつです。

書評は久しぶりに「今週のオススメ書評」に選ばれました。山田詠美さんの最新作を取り上げたものです。エッセイのほうはホイットニー・ヒューストンの死亡記事を読んでいてふと思いついたもので、マイケル・ジャクソンが亡くなったときにも同じような記事を書いています。

という訳で、今回の更新は以下の通り:

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Monday, February 20, 2012

立つ比重

【2月20日特記】 小学校の同級生で篠田章子(仮名)という女の子がいた。一応プライバシーに配慮して苗字だけ偽名にしてみたが、名前のほうは本当に章子ちゃんである。

さて、その章子ちゃんと同じクラスで、しかも隣同士の席に座っていた時に漢字の書き取りのテストがあった。

僕は国語や漢字は割合得意だったので早くに全問を書き終わった。ただし、1問だけを除いて。

それは「ぶんしょう」という問題だった。「ぶん」が「文」であることは分かっていたのだが、「しょう」がどうしても思い出せない。

そうすると、隣に座っていた章子ちゃんが、ひそひそ声で話しかけてきた。

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Sunday, February 19, 2012

映画『セイジ 陸の魚』

【2月19日特記】 映画『セイジ 陸の魚』を観てきた。女性客がほとんど(しかも、一人客が多い)なのでびっくり。

西島秀俊がいて、森山未來がいて、そこに新井浩文ほか。ほとんど紅一点で裕木奈江がいるが、ロマンスもアドベンチャーもなく、徹底的に無骨で男臭い映画だ。ここまで男臭い映画にこれだけ女性客が多いのはやはり西島秀俊の人気か? 森山未來や伊勢谷友介の人気も加わってのことなのか?

しかし、このストーリーはどうなのだろう? これでは「何だったの、これ?」とげっそりして帰る客もいるのではないかとちょっと心配になる。あまり頭の中が整理できないまま脚本を書いてしまったのではないか、と感じた。

が、そうではなかった。エンド・ロールで原作小説があることを知った。ということは脚本がまずかったのではない。選んだ素材が難しかったのである。

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Saturday, February 18, 2012

映画『キツツキと雨』

【2月18日特記】 映画『キツツキと雨』を観てきた。沖田修一監督作品。

前作の『南極料理人』の時も、予告編を見て面白そうだと思ったのだが、なんとなく期待外れなのではないかという勘が働いて観なかった。ところが、この勘はあまり当たっていなかったようで評判が良かった。そして、今作も同様に評判が良いので、自分の勘は信じずに観に行くことにした。

冒頭が予告編にあったあのシーンだ。きこりの克彦(役所広司)がチェーンソーを使っているところに、映画のチーフ助監督(古舘寛治)が現れて、「撮影やってるので、一瞬音を止めてもらえませんか」と言いに来るシーンである。

この2人の会話の間が良い。いや、全編にわたって台詞の間にはかなり神経を使った演出になっている。

克彦のボケた受け答えも良いが、チーフ助監督の腰が低いようで逆に厚顔な感じがとても良い。この古館という役者、僕は知らなかったのだが、沖田映画の常連らしい。

残念なのは、予告編を観た人は小栗旬が扮する田辺幸一が「気の弱い映画監督」であることを既に知っていることである。あれ、予告編の中でわざわざ謳う必要があったのかなあ? 観客も克彦と同じように、「なんだこのいじけた役立たずの若者は!?」という眼で見始めることができたらもっと面白かったのに、と思う。

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Friday, February 17, 2012

『ももへの手紙』完成披露試写会

【2月17日特記】 映画『ももへの手紙』の完成披露試写会に行ってきた。うん、悪くない。アニメの世界は詳しくないのだが、こういうのってプロダクションI.Gの新機軸じゃないかな。

冒頭から水の滴り、風を受けた髪の毛のそよぎ、フェンダー・ミラーが電信柱を擦りそうになりながら路地を抜ける自動車、日陰から日向に出た時の光と影の境界の動き──どれをとっても「感じ」が出ている。

絵が単にストーリーを進めるための道具にはなっていないし、逆に徹底的に写実を追求したものにもなっていない。

その一方で、怯えたときのもものバランスの崩れ方、寝そべったまま背中で滑って移動する様など、見事な観察力で捉えた人間の動きや傾きの描写には舌を巻く。ただの平面アニメなのだが生命が宿っている気がする。息吹が感じられる。ひとつひとつがちゃんと「表現」になっている。

作画監督はジブリにいた人らしいので、少しジブリっぽい作風ではあるが、人間も妖怪も、ジブリよりも味がある気がする。アニメの動きで観客の笑いを取れていたことも、その画の確かさを裏付けている。

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Wednesday, February 15, 2012

レーザー砲発射せよ

【2月15日更新】 昨年末に自宅用のレーザーポインタを買ったのである。いや、別に家でパワポのプレゼンをしようというのではない。カラスの撃退に効くと聞いたからである。

カラスは時々ウチのバルコニーにも来ている。今のところそれほど悪いことはしていないが、あいつらは付け上がる体質だから、悪いことをし始めてからでは手遅れになる。普段から姿を見ると追っ払おうとするのだが、なかなかふてぶてしい奴らばかりで、少しの脅しにはまるでひるまない。

その、カラスにレーザーポインタが効くと聞いたのである。

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Monday, February 13, 2012

年賀状の整理

【2月13日特記】 昨日は年1回恒例の年賀状の整理をやった。
(なお、このブログにも何度も書いているのでご存じの方はご存知だが、僕と妻は何年も前に年賀状をやめてしまって、今はクリスマスカードを送っている)

さて、まずはもらった年賀状を、僕宛のもの、妻宛のもの、両名併記のもの、会社に届いたものに分けてそれぞれの枚数を数える。

あまりメリットがない作業に思われるかもしれないが、これを記録しておくことでいろんなことが解る。とても大雑把に見て、僕がもらう年賀状はここのところ年々減る傾向にある(これはとても良い傾向である)。ただし、営業在職中は増えていた。

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『ジェントルマン』山田詠美(書評)

【2月13日特記】 とても山田詠美らしい小説だと思う。愛にゲイもバイもヘテロもない──そういう分け隔てない感覚に基づいて、分け隔てない恋心が分け隔てなく描かれている。恋するって、痛くて、苦しくて、危ういものなのである。それは相手が誰であろうと関係がない。

読み始めて2ページほど、僕らは状況がつかめない。それは恋する2人と言えば、僕らは必ず男女の組合せを思い浮かべてしまうからである。アニー・リーボヴィッツによる有名なジョンとヨーコの写真になぞらえられているので、なおさら勘違いをしてしまう。だが、恋愛はヘテロ同士だけのものではないと僕らは知る。さらに、カップルでいるからといって必ずしも単純に互いに恋する関係であるとも限らない。──夢生と漱太郎はそういう関係である。

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Sunday, February 12, 2012

映画『□△▽▼▼▽⊿△』

【2月12日特記】 ちょっと仕事上の必要があって、今年8月公開予定の映画を観た。

仕事上の必要と言っても、僕はこの映画の制作や出資に直接関わっている訳ではない。ただ、ちょっと仕事上の必要があって観た。

観たには違いないのだが、レビューを書くのはいくらなんでもタイミングとして早すぎる。

それに、ちょっと不手際があって、映画のケツが切れてしまった。そう2時間くらい観たのだが、肝心の最後の何分かが観られていない。何分欠けたのかも定かでない。

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Saturday, February 11, 2012

映画『サラの鍵』

【2月11日特記】 映画『サラの鍵』を観てきた。一昨年の東京国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した作品らしいのだが、久しぶりに本当にしっかりと作られた映画を観たような気がする。

ユダヤ人を迫害したのはナチス・ドイツだけではなく、フランスの国家権力がそれに加担して76,000人ものユダヤ人を収容所送りにしていたということも、その事実をシラク大統領が1995年の演説で初めて国家として認めたということも、僕は知らなかった(多分後者の報道は目にしていたはずだが、忘れてしまったのだろう)。

そういうテーマの新しさ、厳しさもさることながら、目を瞠るのはストーリーを構成して行く確かな力である。

パリ在住のアメリカ人ジャーナリスト、ジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、フランスでのユダヤ人迫害の史実「ヴェルディヴ事件」を調べているうちに、ひょっとして自分の夫が親から譲り受けてこれから自分たちが親子3人で住もうとしているアパートが、かつて強制収容されたユダヤ人の所有であったのではないかと思い至って調べ始める。

そうしてたどり着いたのが、そこに住んでいたスタルジンスキ一家である。

警察が来た時、サラ・スタルジンスキ(メリュジーヌ・マヤンス)は機転をきかせて弟のミシェルを納戸に隠し、外から開けられないように鍵を掛ける。すぐに助けに戻るつもりだったのだが、両親ともども収容所送りになり、何日も戻れなくなってしまう。

──この映画冒頭のあらすじを説明するとなると、こういう表現になる。恐らくこういう順番で説明するのが一番解りやすいと思う。しかし、ジル・パケ=ブレネール監督はこれをジュリアのシーンからではなく、サラのシーンから始める。この辺が上手い。そうやったほうが遥かにインパクトの強いオープニングになるからである。

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Thursday, February 09, 2012

キャベジンのその後

【2月7日特記】 中学校の同級生に某君というのがいた。某君と書いたのは名前を匿しているのではなく、思い出せないのである。同じクラスだったけれど全然親しくはなかった。僕とは違う小学校出身の、背の高い奴だったという記憶しなかい。

ある日その某君が、トイレで会った僕に言った。

おい、お前、何人(なにじん)や?

え?

お前、何人や、って言うてんねん。

お、俺か? 俺は日本人や。

そうか、俺はキャベジンや。

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Wednesday, February 08, 2012

「キネマ旬報」2月下旬号(2)

【2月8日特記】 さて、今年もまた『キネマ旬報ベストテン』の投票結果の僕なりの分析、と言うか、分解をやってみようと思う。

何年か前にふと思いついてやってみたら、結構面白い結果が出るので病みつきになってしまったのだ。

キネ旬ベストテンの投票方法は、審査員が合計55点を持ち点として、第1位には10点、第2位には9点、第3位には8点という風に割り振って行って、最後の第10位には1点を投ずるというものである。で、それぞれの審査員の投票した点数が合計されて、その映画の得点となるのである。

今回の第85回、2011年の投票では、編集部を含む57人の審査員が投票している。

さて、僕が毎回やっている分析は、それぞれの映画の合計得点を、「投票者の平均点×投票人数」という形に分解してみることである。

当たり前のことだが、10人の審査員が1点ずつを投じた映画と、たったひとりの審査員が10点を付けただけの映画は同点になるのである。でも、この2つの得点は性格が違うのではないかというのが僕の考えである。

もしも多くの審査員が投票したのであれば、それはひとことで言ってしまうと万人受けしたということである。それに対して、投票人数は少ないけれど、平均点が高かったので他の映画と同じくらいの得点になったというのであれば、それは観た人、評価した人の思い入れ度が高かったということである。

それを確かめるために、同じ80点でも平均8点×10人なのか、平均4点×20人なのかを調べようというものである。

これは正しい統計学的手法に則ったものではなく、まことに荒っぽく、かつ素人っぽい分析ではあるのだが、やってみるとそれなりに「らしい」結果が出て面白いのである。結果的には当たらずと雖も遠からず、なのではないかと思っている。

もっとも、この荒っぽい分析がそれなりの説得力を持つのは、あくまで上位10作に限ってやっているからであって、これをもっと下位まで拡張してしまうと、少し乱れたものになってしまうだろう。

さて、前置きが長くなったが(と言うか、毎年この前置きの部分は長くなるのだがw)、分析結果を披露することにする:

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Tuesday, February 07, 2012

「キネマ旬報」2月下旬号(1)

【2月7日特記】 「キネマ旬報」2月下旬決算特別号が発売になりました。さて、今年もまた去年と同じ形式で第11位以下の作品を総点検してみることにします。僕自身の2つの記事(12月29日付け1月16日付け)の続編という形になります。

10位までのところで言うと、今年は結講好成績で、僕が「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい映画10本」として選んだ映画のうちの6本が入選しておりました。

ところが、最初に書いてしまいますと、11位から20位までの間には1本しか入っていませんでした。

合計で結局7本。去年が7本、一昨年と一昨昨年が6本でしたから、まあ、最多タイとも言えますが、毎年のペースです。

キネ旬の11-20位を紹介してしまいますと、第11位は『監督失格』。ああ、これは僕が見逃してしまった映画です。

第12位は『エンディングノート』。これはあまり観る気がしなくてパスした映画でした。

第13位は『毎日かあさん』。これはとても良い映画でした。不思議はありません。僕も選ぼうかどうか迷った映画でした。

そして、第14位が『恋の罪』。ああ、ここに入って来ましたか。既に書いた通り、同じ園子温監督の『冷たい熱帯魚』が第3位に選ばれています。僕も『冷たい熱帯魚』を推しました。で、『冷たい熱帯魚』を選んでしまった時点で、「もう、園子温はいいか」と思ってしまったので選びませんでした。

それから、第15位は『あぜ道のダンディ』です。ああ、これがこんな良い順位に選ばれてきましたか、という感じ。はい、異存はありません。僕が選ばなかったのは、同じ石井裕也監督で言うと、前年の『川の底からこんにちは』があまりに強烈だったので、ついついそれと比べてしまったからというだけのことです。

やっぱり、監督が自己ベストを更新したような作品が「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい」作品だと思ってるからなんですね。

さて、第16位は『歓待』──何ですかね、これ? 不勉強で申し訳ない。全然知りません。

で、一番意外だったのが第17位の『アントキノイノチ』で、これは僕の周辺ではもうボロカスに貶された映画でした。僕自身は、映画評にも書いているように、そんなに悪い作品とは思わなかったのですが、しかし、とは言ってもまさか20位以内に入ってくるとは夢にも思いませんでした。ふーん、って感じです。

去年公開の映画では、僕の周囲でもう1本、とても評判の悪かった映画があります。それは『ランウェイ☆ビート』です。僕はこの映画も割合高く評価していて、正直言って『アントキノイノチ』と比べると、こっちのほうが出来が良かったと思います。

なのに『ランウェイ☆ビート』の名前は第116位までのどこにも見当たらず、1点たりとも入っていないのに対して、『アントキノイノチ』が20位以内というのはちょっと驚きでした。

続きを見ましょう。第18位が、『婚前特急』。これも「納得が行かない」というほどのことはないのですが、意外に評価が高いですね。ちょっとびっくり。

第19位は『一命』。これも、「三池崇史監督はもういいかな」と思って選ばなかった作品。三池監督の最高傑作ではないように思ったので。

そして、第20位に『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まない』『デンデラ』。前者は僕が選んだ映画でした。これはちゃんとこんな高位に選ばれて喜ばしいことだと思います。後者は、すみません、これもノーマークでした。全く知らない映画です。

さて、ここから先は、例年通り、ランキングの中から自分が観た映画だけを拾って行こうと思います。

あ、その前に、僕が「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしい映画10本」に選びながら選に漏れた作品が3本あります。それは『死にゆく妻との旅路』『軽蔑』『神様のカルテ』です。これらは一体何位に選ばれているのでしょう?

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Monday, February 06, 2012

2/6サイト更新情報

【12月4日特記】 サイトを更新しましたのでお知らせします(このブログではなく、併設している私のHPの更新案内です)。

今回は bk1 への投稿書評が2編、そしてレギュラー・コーナーである言葉のエッセイが1編あります。

書評では三浦しをんさんと川上弘美さんという2人の女流の作品を取り上げました。エッセイのほうは、前に物した「造語と規範性と機械の浅ましさ」に繋がるものです。

という訳で、今回の更新は以下の通り:

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Sunday, February 05, 2012

映画『しあわせのパン』

【2月5日特記】 映画『しあわせのパン』を観てきた。

予告編を見る限り、近年流行りの、ろくに何事も起こらない、都会は悪で田園が善であるという単純な思い込みに囚われた、癒しだとか何だとかいう、そういう映画かと思った。何と言うか、そういう薄味のドラマにはもう食傷気味なのである。

だから観るのはやめておこうと思っていたのだが、決してそういうドラマではないという評をたまたま読んだので、気を取り直して見に行った。

しかし、結果的には、これは僕には全くお呼びでない映画だった。いや、僕がこの映画にとってお呼びでなかったのかもしれないが。

如何にも頭で考えましたという感じの、むせ返るような“作り物感”が溢れた映画だった。台詞が非常に固いのである。

──ちょっとあまり良いことを書けそうな気がしないので、気を悪くしたくない方はどうぞここらで読むのをやめてください。

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Saturday, February 04, 2012

映画『荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE』

【2月4日特記】 映画『荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE』を観てきた。

この映画を観る人は、まずは原作漫画のコアなファンだったり、僕のように原作は全く知らなかったのだけれど、この映画と同じスタッフ/キャストによるテレビ・シリーズを見て嵌ってしまった人だったり、あるいは、出演者の林遣都や桐谷美玲や小栗旬や山田孝之の熱狂的ファンだったりするのだろう。

しかし、僕がもともと興味を持ったのはそのいずれでもない。テレビ・ドラマと映画の両方を監督したのが飯塚健だったからだ。

僕はこの人の劇場公開映画を2本見ている。1本は2006年の『放郷物語』、もう1本が2007年の『彩恋 SAI-REN』である。とても才能のある監督だと思った。ちなみに、この2本ともに出演しているのが、このAUTBではステラを演じている徳永えりである。

そういう興味から、まず2011年7月期に放送されたドラマを観た。

なんじゃ、そりゃ、という感じのドラマだった。最初の1話、2話あたりは観ていてとてもしんどかった。いくらなんでも、こんな荒唐無稽でどうする?という感じだった。

それが、3話、4話と続けて観るうちに、いつの間にやら見事に嵌ってしまった。何が何だか全然解らないのに、解らないまま不思議に深い感慨を与えてくれる──そういう作品ってたまにあるのである。まさにこれがそういう作品だった。

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Friday, February 03, 2012

出口入口論争ふたたび

【2月3日特記】 一昨昨日の記事で少し触れたが、一昨日大腸内視鏡検査を受けた。

3~4年前に体調の異変を感じて初めて受けたのだが、その時は異常というほどのものは認められなかった。それから3年が過ぎたのでそろそろ再検査してみますか、と言われていたのだが、まだ良いかと思っていたら、急にまた体調が悪くなったので、思い直して再検査の予約をしたというわけである。

で、これが結構大変なのである。いや、検査を受けている間はそれほど大変でもないのだが、そこに至るまでが結構大変なのである。

検査前夜に素うどんを食べて以降、検査が終わるまで何も食べられない(今回の僕の検査は15:00開始だった)。ま、それはそれほどしんどくはないのだが、検査当日の朝から、大腸を空っぽにするために下剤を飲まさせるのである。

下剤ったって錠剤ではない。粉末を1.8リットルの水で溶いたものである。

で、それを200ccずつ、10~15分間隔で、9回に分けて、2時間以上かけて飲んで行く。

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Thursday, February 02, 2012

『神様2011』川上弘美(書評)

【2月2日特記】 bk1 から現物が届くまでこんなに薄っぺらい本だとは知らなかった。短編小説集である。最初に筆者が1993年に書いた『神様』という小説が掲載されている。お弁当を持って熊と一緒に散歩に行くという、とても現実離れした小説である。ちょうど小川洋子の作品のように、とても不思議なことがまるで何でもないかのように起きている。

それから、昨年その作品に手を入れた『神様2011』という短編が続いている。「手を入れた」と言っても、ほとんどは元のままで、ほんの何箇所かが書き換えられているだけである。しかし、ほんの何箇所かが書き換えられているだけなのに、熊と散歩に行く半ばファンタジーが、完全に福島の原発事故を扱った小説に変貌してしまうのだ。この不思議を何と考えたら良いのだろう。

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WOWOW 『人間昆虫記』

【2月1日特記】 録画したまま放ってあった WOWOW の『人間昆虫記』を2日かけて見終えた。手塚治虫の漫画が原作で、基本30分枠×7話(ただし、初回と最終回は10分枠大)の構成である。

脚本は全部高橋泉が書いていて、演出は高橋が自ら当たっている回と白石和彌が担当している回がある。

高橋泉と言えば、廣末哲万と組んだ『ある朝スウプは』や『14歳』で観客の度肝を抜いた脚本家/監督である。ずっとそういうマイナー、アングラ路線で行くのかと思ったら、最近では『ソラニン』や『ランウェイ☆ビート』などでも達者なところを見せている。そう、本当に「達者な」という表現が合う作家である。

一方の白石和彌と言えば、僕は見逃してしまったのだが、非常に評判の高かった映画『ロストパラダイス・イン・トーキョー』でデビューを飾った人だ。

それに加えて、主演の美波、ARATA という結構渋いスタッフ/キャストで却々見応えのある作品になっているのが嬉しい。

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『舟を編む』三浦しをん(書評)

【2月2日特記】 僕は三浦しをんのことはあまりよく知らない。何しろ『風が強く吹いている』一作しか読んでいないのだから(まあ、映画で『まほろ駅前多田便利軒』は観たが…)。

ただ、その一作から受けた印象は、「設定と筋運びの人」であって、あまり言葉そのものに切れのある人ではなかった。その人が辞書編纂者を扱った小説を書くというのがなんとも面白そうで取り寄せたのである。

ただ、読む前に想像したような、言葉や辞書の非常に深い薀蓄に分け入って組み立てた文章ではなく、やはりここでも彼女は設定と筋運びの人だった。

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