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Saturday, January 28, 2012

映画『麒麟の翼』

【1月28日特記】 映画『麒麟の翼』を観てきた。このシリーズ、原作は一切読んでいないのだが、テレビドラマ『新参者』は、単発『赤い指』を含めて全回観ている。

で、今回の映画版を見終わって強く感じたのは、「これは僕が知っている加賀恭一郎ではない」という違和感だった。それは、ネタバレになるのであまり書けないが、事件に責任のある登場人物を加賀が強く非難するシーンのせいである。

いくら自信満々でも不遜でも構わない。でも、阿部寛がこれまで演じてきた加賀は決して面と向かって罵倒するような人物ではなかったし、臭い“正義”を説いたりもしなかったはずだ。加賀にこんな台詞を吐かせて、もしもそれを「今回の加賀は少し人間臭いところを垣間見せる」などと称するのだとしたら、それは小賢しいことだと思う。

いろんなものを胸のうちに抱えながら、見かけはあくまでクールな加賀こそが加賀の魅力ではなかっただろうか。そんな加賀と、直情的でおっちょこちょいな松宮(溝端淳平)との対比、松宮や青山亜美(黒木メイサ)とくらべると遥かに大人に見える加賀なのに、それより遥かに枯れている加賀の父(山崎努)との対比。

──そういう対比の構造こそが、このドラマ・シリーズを支えてきたキモではなかったか? 今回の脚本は今までに培ってきたそういう構造をちゃんと読み込めていない感じがした。

確かに対比という意味では、加賀が事件の関係者に強く当たるという行為を緩和する存在として、加賀の父を看取った看護師・金森登紀子(田中麗奈)が登場する。勝手なことばかり言う加賀に対して、「何も解ってない」と抑えつける役回りであるのだが、しかし、そういう形でバランスを取るのでは救いがない、と僕は思う。

あくまで加賀本人に「しまった、俺も他人にそんなこと言う資格なんかないのに」という素振りを見せさせて、加賀本人の中の両面性を描くことによって、初めてそれは観客に届き、伝わって行くのではないだろうか?

また、どうしても激昂する加賀を見せたいのであれば、それまでのシーンでもっともっと加賀を追い込んでおかなければ必然性がないし、そこからさらに揺り戻す加賀を描いて行く必要もあると思う。

そこが観ていて一番引っかかった点である。

東野圭吾という作家は好きな作家ではないので、僕はこの人の小説は2~3作しか読んでいない。

ただ、筋運びはとても上手な人なので、映画化するに当たっては登場する人物をちゃんと人間らしく肉付けすれば良いだけ──と、テーマがはっきり見えているので、映画化するのは楽な作家ではないか。そんな風に僕は常々思ってきた。

そういう観点から見ると、今回の脚本はちょっと失敗の感がある。ただ、設定はとてもよく考えてあるし、日本橋から始まって日本橋で終わったり、「世の中甘くない」と冬樹(三浦貴大)をたしなめた香織(新垣結衣)に対して、加賀が「世の中を甘く見ている方が良い」と諭すなど、非常に巧く繋げた展開である。

俯瞰で始まり俯瞰で終わるカメラも粋だ。特に冒頭の、麒麟像を舐めて縦に回るカメラは印象的だ。

脚本も全般に失敗だったとは思わない。加賀と松宮のコンビは今まで以上に凸凹感を強調して、結構笑いも取れている。謎解きも後半一気に持って行く展開で飽きさせない。

「分かりません」という台詞に却ってリアリティがあったりもする。事件の前提がひっくり返った時に、本部長(北見敏之)が大声で「加賀っ!」と呼ぶ辺りは見事な運びだとも思った。

ただ、やっぱり、青柳(中井貴一)が瀕死の重傷を負いながら 300m も歩いたということの説得力がないように思うのは僕だけではないのではないだろうか? なんと気高い父なのか。あまりに志が高すぎて、いくらなんでも少し無理があるのではないだろうか?

うん、僕がひねくれているのかもしれない。特に父子の愛情などというテーマになるとそうなのかもしれない。あるいは東野圭吾を読むたびに不満を覚えるような読者だからそうなのかもしれない。

素直に感動する人もいるんだろうな。そういう感想もちょっと聞いてみたい気がするような、そんな良い話ではある。

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