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Friday, December 23, 2011

僕と森田芳光監督

【12月23日特記】 一昨日、その前日に急逝した森田芳光監督について書いた。どれほど僕が心酔していたかを書いたつもりだ。

ただ、僕は彼の作品を全部観ている訳ではない。途中何年も全く観なかった時期が2回ある。

一昨日は出張中だったので手許にデータがなくて書けなかったのだが、改めて僕が何を観たかをここに書いておきたい。僕なりの供養のつもりである。それ以外の意味はない。

僕にとっての衝撃的な出会いは1981年の 35mm デビュー作『の・ようなもの』だった。そのことは一昨日の記事に少し書いた。

だが、その前に 8mm の『水蒸気急行』と『ライブイン茅ヶ崎』がある。この2本は2006年の PFF in Osaka で観た。しかし残念ながら、後の森田映画の完成度から見たらかなりひどいと言っても良い、まだ「習作」という感じの映画だった。

話を『の・ようなもの』に戻そう。

あの映画の当時のキャッチフレーズは確か「ニュアンス映画」だったと思う。確かにニュアンスは伝わった。だが、ニュアンスで済ませるにはあまりに豪速球だった。あの色彩、あの構成──何故ただ夜明けの街を歩くだけのシーンがこんなにも胸に突き刺さるのか!

その豪速球にぶっ飛んだ僕は、迷うことなく次作『シブがき隊 ボーイズ&ガールズ』を、シブがき隊ファンの女の子たちの中にひとり混じって観た。面白かった。前作は有り金はたいてブッキングした秋吉久美子以外あまり知ってる人がメインで出てこない映画だったのに、一転してアイドル主演というのが面白いなあと思った。

かと思えば、そのあとは『本(マルホン)噂のストリッパー』、『ピンクカット 太く愛して長く愛して』と日活ロマンポルノが2本続いた。この辺りもすごい監督だなあと思ったのだが、肝心の映画の方は知らぬうちに上映が終わっていて、結局観ていない。

そして、その次が出世作となった『家族ゲーム』(1983年)だ。これについては多くを語る必要がないだろう。映画の作り方としての新機軸を感じさせる一方で、はっきりと『の・ようなもの』の延長線上にある作品だと思った。

1979年の日本レコード大賞新人賞の決選投票でサザンオールスターズが渋谷哲平に敗れて選外となったあと、暫くして発売された3枚目のシングル『いとしのエリー』を聴いた瞬間に、僕は「見てみろ! やっぱりサザンは本物だったじゃないか!」と快哉を叫んだのだが、『家族ゲーム』のときにも同じような嬉しさがこみ上げてきた記憶がある。

その次が沢田研二主演の『ときめきに死す』。走行中の車の周りをぐるっと1周するカメラワークに度肝を抜かれた。これは丸山健二原作である。

そして次が、僕が大ファンである薬師丸ひろ子の『メインテーマ』である。3回観た。当時のメモに僕は「3度見て、森田芳光という監督が恐ろしくなった」と書いている。薬師丸ひろ子の主演映画の中でも、この作品は白眉だと思う。この映画か、青山真治監督の『レイクサイドマーダーケース』が彼女のベストではないだろうか。

そして、そのあとが夏目漱石の『それから』(1985年)だ。これも賞を獲ったりして評判の良い映画であったし、画作りとしてはとても面白かったのだけれど、僕はこの辺りから、オリジナルではなく大御所の原作を映画化する森田芳光に対して少し抵抗を覚え始めていたのである。

それに続いて今度はとんねるずの『そろばんずく』、小林信彦原作の『悲しい色やねん』、よしもとばななのベストセラー『キッチン』と毛色の違う映画が3本続いたのだが、そういう抵抗感もあって、この3~4年は僕は完全に森田芳光から離れていた。

そして久しぶりに観たのが1989年、石田純一主演の『愛と平成の色男』。これはほとんど評判にもならなかったが、僕はもうめっちゃくちゃに面白いと思った。見終わってうっとりとしてしまった。この映画が僕に森田芳光を再評価させ、そしてその評価を揺るぎようのないものにしたのである。

この作品でまた完全に森田ファンに復帰した僕は、そのあと『おいしい結婚』、『未来の想い出』、『(ハル)』と立てつづけに観た。今から振り返れば、『(ハル)』が如何に時代を先取りしてたかは明らかである。

しかし、次の『失楽園』は渡辺淳一のベストセラーであるところに嫌気がさして、やっぱり観なかった。森田監督の死亡記事では「『家族ゲーム』や『失楽園』の」という書き方をしているものが多く、そうか、世間的にはそんなに目立った作品だったのか、と正直驚いている。

その次の『39 刑法第三十九条』(1999年)は観た。これも面白かった。

しかし、その次の『黒い家』は、貴志祐介の原作を読んでものすごく面白かったのは事実だが、一方でここまで後味の悪い小説を書くということに対して拭いようのない拒否感を覚え、大好きな大竹しのぶ主演だったにもかかわらず、ものすごく迷った末に、理性の力で自分を抑えつけて結局観に行かなかった。

それに続いたのは宮部みゆきの『模倣犯』だった。宮部みゆきは決して嫌いな作家でもないのだが、あれ?森田監督はそっちのほう行っちゃうのか?という感じで、結局これも観なかった。

次の『阿修羅のごとく』は向田邦子原作で、森田芳光と向田邦子という組合せがどうしてもピンと来ずパス。そのまた次の『海猫』は今度は伊東美咲のメロドラマということで、ナニソレ?あの森田芳光は一体どこへ行ったんだろう?と思ってこれまた観ていない。

そして、2006年『間宮兄弟』で、僕としては漸くあの森田芳光監督が戻ってきたという感じだった。期待に胸を膨らませて観に行き、あまりの満足に小躍りしながら帰ってきた。これは久しぶりの森田映画らしい森田映画で、もうファン冥利に尽きる作品だった。

この作品があまりに面白かったので、そのあとは『サウスバウンド』、『椿三十郎』、『わたし出すわ』、『武士の家計簿』と、原作ものであろうがリメイクであろうが時代劇であろうが、結局全部観ている。

そして、『僕達急行』が最後の映画となる。久しぶりのオリジナル作品である。やっぱり彼のすごさはオリジナル脚本の中にこそ浮かび上がって来るのではないだろうか?  前にも書いたが 3/24 封切りである。僕が観た一番古い作品である『水蒸気急行』と繋がっている部分がきっとあるんじゃないかと思う。

楽しみにしているとかしていないとかいう次元ではない。もう、あの森田映画は観られないのである。新作はこれが最後なのである。だから何が何でも観る。そして、見逃してきた作品も、機会があれば全部見て行こうと思う。

森田芳光がいなければ、今の僕はなかったと心の底から思っている。映画という枠を超えて、彼は僕にいろんなことを教えてくれたと思っている。

「メジャーなんて、目じゃあないっすよ!」

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Comments

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Posted by: 日本インターネット映画大賞 | Sunday, December 25, 2011 at 09:55

センスのある図形を思わせる器用な監督さんでした。

Posted by: 雨止み | Friday, March 23, 2012 at 10:03

リアリティーさんて森田さん映画をほぼ観られているのですね。この人の作品よりその事しかすごいと思いました(笑)。

Posted by: 雨止み | Wednesday, September 23, 2015 at 02:40

> 雨やみさん

2度も書き込んでもらってありがとうございます。たくさん観ているのは、ラーメン好きの人が好きなラーメン屋に通うようなもので、ま、単なる結果です。

それと、上にも書いているように、観ていない映画もたくさんありますよ。

Posted by: yama_eigh | Wednesday, September 23, 2015 at 08:49

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