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Saturday, December 24, 2011

第三舞台 封印解除&解散公演『深呼吸する惑星』

【12月24日特記】 第三舞台 封印解除&解散公演『深呼吸する惑星』を観てきた。久しぶりに演劇的な高揚感を味わわせてもらった。

ただ、僕は決して熱心な第三舞台ファンではなかった。

もちろん早くから名前は知っていたが、見始めたのは仕事の上で鴻上尚史さんと繋がりができてからだったので、最初に観たのが1991年3月14日(木)紀伊國屋ホールでの『朝日のような夕日をつれて』、次が翌年1月14日(火)シアターアプルでの『天使は瞳を閉じて』で、今日のこの公演が実はまだ3回目にして最後ということになる。

それに2007年3月31日(土)シアター・ドラマシティでの『僕たちの好きだった革命』を含めても、鴻上芝居はまだ4度目の体験である。

だから、彼らの芝居についてあまり深く語るほどの知識も経験も持ち合わせていない。今日の公演は、昔っからの濃いファンたちに向けてのサービスも満載であったようで、僕なんかからするとたまに観客がなんでそんなに沸いているのか解らないシーンもあった。

でも、もちろん、ファンサービスに終止するような芝居ではない。初めて見る人にもなんとなく想像がつく部分もあっただろうし、たとえたまに他の観客の笑いから取り残されることがあっても、充分に楽しめたはずだ。

言うまでもないが、芝居にはいろんなところにいろんな意味が込められており、それを読み取るのは観客の仕事である。例えばこの芝居から安保や原発事故を読み解く人もいるだろう。出会いとか人を信じることとか言う人もいるだろう。そして、恐らく多くの人がまず読み取るのは死、あるいは不在ではないだろうか?

冒頭のシーンで語られるのが、「人が死んだら、その後、その人がやっていたブログや SNS はどうなるのだろう?」という、僕がかつて『我去りし後』というタイトルでこのブログに書いたのと同じ疑問だった。

そうか、鴻上さんも同じ疑問を持ったんだ、と思うと、なんかすんなり芝居に入って行けた。

そこから話はある人のブログに載っていた小説という体で SF の世界に入って行く。ここまでまともに SF めいた設定は鴻上尚史の芝居としては初めてらしい。

そこから先はもうあまり筋を書いても仕方がないだろう。実際に見てもらうしかない。当たり前だが、僕が何度か観た鴻上さんの芝居や映画の延長上にある作品だなあと思う。ただ、少し構成がストレートになったような気はする。

その件については、パンフを買って読んでいたら鴻上さんと角田光代さんの対談があって、その中での鴻上さんの発言にピンと来るものがあった。

それは阪神大震災とサリン事件以来、世界が難解であることがむき出しになってしまったために、せめて分かるものを手に入れたいと思うようになったのか、観客の中に難解なものに対する拒否感が出てきたという趣旨の話だ。

「1回見て分からない作品は失敗作だと思います、19歳」みたいなアンケートがいっぱいでてきた。

と言う。

なるほど。多分そう事情もこの戯曲に影響を与えてしまっているのかな、と思う。しかし、だから鴻上尚史は身を縮こませて妥協しているかと言えばそうではない。とかく

今どきの若いやつって怒鳴ったらその場でいなくなるでしょ?

というような扱いにくい若手俳優など使わずに、筧利夫、長野里美、小須田康人、山下裕子、筒井真理子、高橋一生、大高洋夫という気心の知れた役者たちを起用して、恐らく稽古場で彼らに対して容赦なく怒鳴って、思う存分追い込んで作り込んできた芝居だったんだろう、と思う。観ていてそんな感じが伝わってくるのである。

そういう意味では、むしろのびのびとした鴻上芝居だったのではないだろうか?

ただ、我々オールド演劇ファンにとっては少しライトすぎる感じはあった。我々にとって、そもそも演劇とは、「なんだか解らないけど、この高揚感は何だ? この切迫感は何だ? この胸の苦しい思いは何だ? このカタルシスは何なんだ?」というものではなかったか?

唐十郎も、別役実も、つかこうへいも、みんなそうだった。複雑なものを分析して再構築するのが科学であるとしたら、複雑なものを複雑なまま全体像を捉え、それを象徴的に展開して見せるのが演劇ではなかったのか?

時代は変わる。ある意味、鴻上尚史はそれにキープアップしている。だから、この芝居は第三舞台の集大成などではなく、新しい鴻上尚史の出発点ではないか、などと考えてしまった。

そう、ある意味、こういう風に観客にものを考えさせるのが演劇だった。ひとりひとりにそれぞれ違ったいろんなことを考えさせるのが演劇だった。そういう意味ではこの芝居は依然として典型的な演劇であったとも言える。

それがなくなっちゃあダメなんじゃないかなあ、などと思ったりもした。

第三舞台はこれで終わりだし、鴻上尚史も少しずつ変化しているのだろう。しかし、芝居というもの、演劇という世界はまだまだ棄てたもんじゃない──そういうことをしっかり感じさせてくれるところが、やっぱり鴻上尚史の力量なのではないかと思った。

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