『ゴーストハント5 鮮血の迷宮』小野不由美(書評)
【11月12日特記】 ずっと気になっていた小野不由美を初めて読んでみた。初めて読むのにシリーズ物の第5作とは如何なものかと我ながら思うが、買った時には気づいていなかったのだからしょうがない。
で、残念ながらこれは僕が好きなタイプの小説ではなかった。
ふーん、京大推理小説研究会出身ですか。その割には設定・進行ともに随分マンガっぽいね。まあ、そのあたりが僕があまり好きではない所以なのだけれど、でも、まあ、そこそこ面白かったのは事実である。
多分シリーズ第1作から順序正しく読んできていたら、恐らく読んでいるうちにレギュラーのキャラがしっかり立ってきて、随分楽しみ方も深くなったのではないかと思う。
多分毎回そういう構成なのだろうと思うのだが、高校生を主なメンバーとする「渋谷サイキックリサーチ」が怪現象を解決する話である。で、今回は増改築を繰り返して迷宮のようになった大邸宅で行方不明者が続出し、それを解決するために全国から霊能者が集められたという設定。
この手の小説は展開が命なのでネタバレに繋がることは一切書かないが、今回は一連のシリーズの中で、語り手である麻衣の霊能者としての覚醒に少し焦点が当てられている。麻衣のある種の成長物語的なしつらえをしてあるところあたりが読者に受けている点なのかなあと想像したりもする。
そして、彼女の能力が発現して彼女が見てしまう夢の描写は結構おどろおどろしい。また、渋谷サイキックリサーチの所長であるナルこと渋谷一也がてきぱきと判断して、結局のところ事件を解決したようなしていないような終わり方が僕は気に入った。
とかくありがちな単純なハッピーエンドに収束させないところがこの作家の力量なのかな、などというのが初めて読んでみた者の感想である。
さて、次は大作『十二国記』に手をつけようかどうしようか、などと考えている。
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