ヴァインランドから逃れて
【9月26日特記】 トマス・ピンチョンの『ヴァインランド』を読んでいたのだが、とうとう読了するのをあきらめた。こんなことって人生初めてではないかな? いや、何でも忘れてしまう質だから今までにも何度かあったかもしれないけど、でも、せいぜい人生2回目とか3回目だと思う。
僕にとっての初めてのピンチョンだった。それが今日挫折で終わった。
僕は買った本はまず間違いなく読むし、読み始めた本を途中で投げ出すこともまずない。
それが、この本はそうは行かなかった。しんどいなあと思いながら読み続けて、それでも一応は最後まで読み通そうと思っていたのに、とうとう断念した。こんなことはめったにあることではない。
読む前からしんどいだろうなとは思っていた。しかし、投げ出すほどしんどいとは夢想だにしなかった。
アメリカの作家で言えば、ドン・デリーロにしてもリチャード・パワーズにしてもスティーヴ・エリクソンにしても読むのに難渋する長編作家である。ただ、僕にとってのピンチョンがこの3人と違うのは、ピンチョンには彼らのように読んでいてクラクラする感じがなくて、ずっとなんかゴチャゴチャした感じだったということだ。
帰りの電車の中で毎日15分か20分だけ読む(日によっては読まないこともある。そして土日祝は読まない)という読み方が良くなかったのかもしれないが、読み始めてすぐに、というか、読み始めた最初から誰が誰だか分からなくなった。時間が前に流れているのか後ろに戻っているのかさえ区別がつかなくなった。
登場人物の名前が憶えられない上に現在のシーンか回想シーンかの区別もつかなくなると、そりゃあ読んでいても何が何だか分からないと言うものだ。
8月初頭に読み始めてまだ読み終わらない。いつもの半分以下の速度でしか読めない。挙句に誰が主人公なのか、と言うか、誰が主要登場人物なのかも未だに判らない。結局段組480ページの内286ページまでで止めることにした。
所詮その程度の作家だ、などと言う気はない。途中までしか読んでないものを批評しようなんて思っていないし、実際ワケ分からんまま読んでいながらも、決してつまらない作家だとは思わなかった。
でも、もうさっぱりついて行けなくなったのでこの辺で止めることにする。本は捨てずに置いておいて、いつかまた読もう。ナニ、3ヶ月も経てば読んだことが全て白紙になってしまうのが僕の脳である。また新鮮な気持ちで一から読み直せば良いと思うし、読み直せると思う。
ただ、読むのは3ヶ月後ではないな。多分、早くても5年後くらいかな。
世界的に評価の高い作家だけにちょっと残念だが、さすがにここまで来たら思い切って断ち切るべきだろう。
さよならピンチョン、また会う日まで。
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