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Saturday, September 24, 2011

映画『探偵はBARにいる』

【9月23日特記】 映画『探偵はBARにいる』を観てきた。客の入りも良いみたいだし、そこそこ評判も良いみたいなので。

で、結論としてはそこそこ面白かった。舞台が札幌、しかもススキノの歓楽街という、ありそうであまりない設定が良い。その設定がストーリーに生きているのが良い。

北海道在住のミステリ作家・東直己の原作を、北海道在住のプロデューサが、北海道出身の俳優・大泉洋を主演に映画化した作品であるとのこと。

事務所も携帯電話も持たず、ススキノのバーを連絡先にしている探偵と、探偵の相棒かつ運転手である北大農学部助手のコンビを主人公に据えたアクション+ミステリである。

“ハードボイルド”とあるが、原作はどんな感じなのだろう。まさに正統派ハードボイルドなのだろうか? 映画では大泉洋が探偵を演じている関係で、少し軽妙な感じが前面に出てきている。

そして相棒の松田龍平が良い。お喋りで、正義感が強くて、エネルギー溢れんばかりの探偵に対して、相棒のほうは見た目やる気なさそうで、寝てばかりで、しかし実は空手の達人である。このコントラストを松田龍平が見事に良い味を出して際立たせている。これがコンビとしての妙を生んでいる。

ただ、僕は大泉洋という人は上手い役者だと思っているのだが、この役柄はちょっとカッコつけた役柄なので、それに引っ張られて演技そのものがカッコつけた演技になっているのが少し残念な感じがした。これは演出の問題ではないかなあ。それに対して松田龍平の自然さは、本当に筋が良いと言うべきである。

ミステリとしては観客を巧く騙してくれる(どこが巧いかをいちいち書いたらネタバレになるので書かないけど)し、よくできていると思うのだが、ひとつだけ気になって仕方がなかったのは、どんなにタフな男でも必ず感じるはずの恐怖と痛みがほとんど表現されることなくオミットされていることである。

タフ・ガイには恐怖感も肉体的苦痛もないのではない。それを人並みに感じた上で超越してきているのである。そのやせ我慢がある種の様式美になっているのに、その存在を消した表現にしてしまうと単に嘘っぽいだけになってしまう。

その辺りが非常に作り物感の強い、浮いた印象を与えていると思う。そういう意味で、どっちかと言えば芝居向きの脚本ではないだろうか?

舞台であれば役者の背後にあるのは元から作り物であるかイメージであるかなので、少々リアリズムから離れた設定や進行であっても感情移入して行ける。しかし、映画の背景には現実の物や景色が写っているのであり、たとえセットであっても舞台よりは遥かに写実的な背景に支えられているものだから、そこで当然描かれるはずの恐怖や痛みが省かれていると、もうそれだけで入って行けなくなるのである。

他の人はそんなことはないのかもしれないが、僕の場合はどうしてもその辺が引っ掛かってしまう。

もちろん、脚本家は恐怖や痛みをうっかり描き忘れたのではない。それは当初から狙ってそういう描き方をしているのである。しかし、そうであればいっそのこと、いくら殴りかかられても撃たれても、何故だか主人公は全く無傷、みたいな昔風のヒーローにしてしまうか、あるいは、逆に人物設定をもっと崩して全編スラップスティック・コメディにでもしてくれないと、僕としては乗り切れないのである。

面白いと言えば面白い映画ではあったが、大泉演じる探偵の設定をもっと工夫すべきではなかったのかなあ、などと思った。少し中途半端にカッコ良すぎたのではないだろうか?

で、そんなことを考えながらエンドロールを見ていたら、脚本のところに古沢良太という名前を見つけて、あっと叫びそうになってしまった。僕はどうもこの脚本家とは相性が悪いのである。

『キサラギ』の時にも古沢良太の脚本自体は褒めているけど、映画に対してはかなり否定的なことを書いている。そしてその時も、これは映画ではなく舞台で見たい、というようなことを書いている。

さらに、古沢良太という人は『ALWAYS 三丁目の夕日』も手がけた人だ。この映画も評判は高かったが僕は観る気が全く起こらなくて、WOWOW でやった時に見れば良いや、と思った。で、実際に WOWOW から録画してみたのだが、どうしても再生する気にならず、何ヶ月か放置した末に結局消去してしまった。

そういう相性ってあるように思う。実は映画の最後に「特報」として、この映画の第2弾の製作が決まったとアナウンスしていたのだが、僕はまず見に行かないだろうと思う。

ただ、それは僕の特殊な嗜好性であり、映画としてはそこそこ面白かったと思うし、多分そんなに拒否感なく楽しめる人がほとんどなんだろうな、とは思っている。

そんな中、探偵行きつけの喫茶店のウェイトレス(兼店長?)を演じていた安藤玉恵がもう抱腹絶倒のサイコー!だった。次回作以降、彼女がもっと絡んでくるなら、僕も考えなおして見に行くだろうと思う。

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