映画『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 勝どき橋を封鎖せよ!』
【8月12日特記】 映画『こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 勝どき橋を封鎖せよ!』を観てきた。これが意外に評判が良いのである。
なんでかな、と思っていたら森下佳子が脚本を書いていると言う。ああ、なるほど、と思うくらい彼女の名前は僕の記憶にも定着している。彼女と奥寺佐渡子の2人は今のテレビ/映画界を代表する女流と言って良いのではないだろうか。
原作の漫画もテレビアニメも、それから香取慎吾がやってたテレビドラマもほとんど見たことがないので、原作と比べてどうなのかは知らないが、却々心温まる作品になっていた。多分、登場人物のキャラを把握していたらさらに面白かったのだと思う。
香取慎吾の思いっきりオーバーアクションな演技が気になりだすとどうしようもなくなる(つられて伊武雅刀も彼の演技パタンの中の一番わざとらしい型になっているし、他にも力の入りすぎている役者は続出である)が、まあ、これも決して下手だからではなく意図的な演出だと割りきって見る以外にない。
そこに平田満を持ってきたのは大成功で、皆が撥ね散らかした空気をしっとりと包んで押さえ込んだ感がある。
僕は寅さんなんて1本しか観たことないのに、ああ、これは寅さんみたいにシリーズ化が可能な企画だなあと思ってたら、共演者の谷原章介がインタビューで「両さんは寅さん以来の人情味あふれるキャラクター」と言っており、自分の感覚はそれほど的外れでもないのかと、ちょっと驚いた。
この映画は両津勘吉(香取慎吾)が、小学校の時好きだった桃子(深田恭子)が旅回り一座の座長として浅草に戻ってきて、再び両さんの恋の炎が燃え上がるという話である。そこにシングルマザーである桃子の娘・ユイ(川島鈴遥・・・これでリリカと読ませる)の誘拐事件を絡めてあるのだが、一応両津も警察官であるので、話はそれほど無理なく繋がって推理小説/アクション映画風に展開する。
もちろん、原作が漫画であるから、それなりにマンガ的な展開ではあるのだが、それはそれでギャグとして受け流せば良い。そんなギャグの背景で流れて行くドラマのほうは、森下佳子の脚本(映画のエンディングでは他に2人の名前もクレジットされていたが、パンフでは「森下佳子 ほか」になっていて確認できない)がしっかりしているので、不思議なくらいすんなりと感情移入できてしまう。
城山警察庁長官(夏八木勲)の最後の台詞とか、ラスト近くで桃子がユイと一緒に勝どき橋を眺めながら呟いたひと言とか、何気ない言葉のようではあっても他の脚本家には書けそうもない台詞を書いている。
映画が始まってすぐのところで一瞬写った、何なのか分からない機械のアップが、最後の最後で活きてくる──見事な構成であったと思う。
肝心の勝どき橋はCGだった(もちろんそれは仕方がない)が、空撮・スタント含めて画も大変ダイナミックでよろしかったのではなかろうか。
関東はそこそこながら、関西での入りが悪いと聞いている。まあ、タイトル見て予告編見たら誰もがおちゃらけ映画だと思ってしまうだろう。こんなに良い脚本なのに少し惜しい気がする。エンディングの両さんの『365歩のマーチ』も良かったのにね。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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