映画『忍たま乱太郎』
【7月31日特記】 映画『忍たま乱太郎』を観てきた。
僕以外の観客はほとんど子供連れ、もしくは孫連れ。僕はと言うと、原作の漫画もテレビのアニメも全く見たことがない。なにしろ「忍たま」というのが「忍者の卵」という意味であるということも今日初めて知ったくらいだから。三池崇史監督でなければまず観なかったであろう作品である。
でも、知らなくても楽しめるし、大人が観ても面白い。恐らくテレビアニメを見ていて前もって登場人物のキャラが解っていたらもっと楽しめたのかもしれないけれど、別に初見でも何の問題もない。
戦国時代の「忍術学園」の1年生・猪名寺乱太郎を主人公としたコメディである。「学園」という学校名や乱太郎がかけている眼鏡などが既に時代考証的にアウトだが、これらはもちろん全て意図的なデフォルメである。
話はともかくギャグの連続。下手に教訓を残そうなんて考えていない。映画館内には子供の笑い声も大人の笑い声も聞こえてくる。しかし、もちろん単なるギャグの羅列ではなく、物語としての起承転結はしっかりある。そして、アクションと特撮はかなり本格的である。
三池崇史って本当に多才である。そして、ウルトラ多作! と言うか、いや、むしろ何にでも手を出す、大阪弁で言う「いっちょかみ」とか「いちびり」に近いのかもしれない。ともかく原作ものを何のこだわりもないみたいに次々に引き受けて映画にして行く。
これだけ多岐に渡ってくると、作品を分類するとしても2つや3つのカテゴリーでは足りなくなってしまう。代表作はと問われても、とてもじゃないけど絞りきれなくなってきている。なにしろ『十三人の刺客』の次の映画がこれなのである(笑)
一方でやたらと血が流れる映画を撮っているかと思えば、この映画みたいに刃物や火器はふんだんに出てくるのに何故だか誰一人かすり傷さえ負わない(こぶができるだけ)映画もある。R18から子供映画まで、ホラーからコメディまで、ほんとに油断のならない監督である(笑)
そして、この映画の楽しみは2005年の『妖怪大戦争』以来の超絶特殊メイク。ちょっと見ただけでは誰だか判らない。で、よくよく観察すると、これが稀代の名優だったりするのである。
僕はこれほどお茶目な平幹二朗を見たことがない。こんなにぶっ飛んだギャグ映画に彼は今まで出たことがあっただろうか? そして、平自身がめちゃくちゃ楽しんでやっているのがしっかり伝わってくる。70歳を超えた名優が、元の顔が分からないような特殊メイクで、子供たちが大好きなうんこネタをやるのである。
そして、エンディングのキャスト・ロールで確かめるまで本当にそうなのか確信が持てなかった中村玉緒。しかも、この役は一人二役の逆で、杏と二人で一人の役というややこしい設定である。
そして、なんじゃそれは?という眉毛と口髭で独りミュージカルやってる鹿賀丈史とか、垂れた頬と強烈な皺のメイクの石橋蓮司とか…。他にも寺島進、山本耕史、古田新太、中村獅童、檀れい、竹中直人、柄本明、松方弘樹という、驚きの豪華キャストである。
谷原章介などは右目以外は全部隠れていて誰なのかさっぱり解らないのだが、本人は大喜びで演じていたとか。そう、みんながみんな楽しんで演っていたのがよーく伝わってくる、即ち観ている僕らも楽しいのである。
タイトルバックで空中に張ったロープを這って渡ってる忍者がいたり、終盤出てくるクルクル回るセット(景色が回転するのである。これは秀逸だった!)とか、ほんとに細かいところまでいろいろ仕掛けて楽しませてくれる。
いやいや、見たって何も残らない映画である(笑) 夏休みの暇つぶしで良いのではないかな? 監督はしっかりそういうつもりで作っている。
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