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Wednesday, June 29, 2011

『コクリコ坂から』マスコミ披露試写会

【6月29日特記】 映画『コクリコ坂から』のマスコミ披露試写会に行ってきた。

自慢じゃないが、ジブリの映画で僕が観たのは『おもひでぽろぽろ』だけである。テレビで観たものを含めても、それに『千と千尋の神隠し』が加わるのみである。

そんな僕の感想だから、スタジオジブリの固定ファンの皆さんから見れば、随分的外れなものかもしれない。しかし、せっかくご招待いただいて見せてもらったので、僕なりの感慨を書き留めておきたい。

僕の好奇心がまず向かったのは、この3Dアニメ全盛の時代に何故このような平面アニメが受けるのか、という謎解きだった。

CGに比べると確かに動きがぎこちない。セルの枚数もそんなに多くないのだろうが、枚数を増やせば追いつくというものでもない。

カルチェラタンの内部とか高台から見下ろす海とか、高さを活かした構図は大変面白いんだけれど、人やものの動きがスムーズでないので、ちょっと気をそがれたりしてしまう。

でも、そんな中で人間のちょっとした所作というものをあまりに見事に捉えていて、時々はっとするところがあるのである。

討論集会の時に、壁際に立ったメルが群衆に紛れた俊の姿を捉えようとして背伸びするさま。

メルの家から帰って行く時に、俊と並んで歩き出した生徒会長が、くるりと一回転して手を振って見せるさま。

メルが鞄の蓋を開けて、それをちょっと顎で挟むようにするさま。

──そういう描写に何故自分が惹かれるのかを考えた時、それはそのシーンが写実的だからではなく魅力的だから、あるいは、人間を精密に写実的に描くのではなく、人間の魅力的な所作を象徴的に抽出して描いているからだと知った。

それはなんだか懐かしさでもある。人間にはこんなところがあったんだという、少し驚きを含んだ懐かしさであるような気もする。

この作品の舞台は1963年の横浜(原作ではもっともっと後の時代を描いていたようだが)。そして、主人公たちは高校生。ということは僕より一世代上の人たちの話だ。

ここに出てくる、電気炊飯器ではなくお釜で炊くご飯とか、オート三輪、路面電車、ガリ版を切ってローラーでこする印刷などは、僕らの世代がギリギリかろうじて知っているものである。ということはもっと若い世代はこういうものをどんな気持ちで見たのだろう?

知らないくせに、やっぱりどこか懐かしい感じがしたのだろうか? なんか「良かったな」みたいな感じで見たのではないだろうか? ──そんな風に思わせてくれる作品だった。

もちろん、1963年ならではの世界である。今の世界はもっと複雑である。いや、1963年であってもあんなにきれいに単純ではないはずだ。

人は、ある程度以上大勢になると、そんなに簡単には団結できない。いや、あそこではちゃんと対立の後の団結が描かれてはいる。僕らの世代はそういうことにやや近い出来事くらいなら経験してきた。でも、あれではあまりにうまく転がり過ぎではないか? 世間に善意が溢れている。

そして、俊が出生の秘密を告げた時の、メルのあの淡白な反応は何なんだろう? リアリティに欠ける脚本であると言うよりも、制作者の「思い」が勝ち過ぎたシーンではなかったか?

そして、ひたすら哀調に満ちたBGMで押しまくってくるような手法も僕は好きではない。

──などと、悪意を込めて語ろうとすればいくらでも語れる映画である。しかし、このアニメには、まるでそういう悪意に全く気づかないみたいに、悪意のそばをするりとすり抜けて行くような力強い純朴さがある。

ストーリーにはあまりにベタな設定を含んでいるが、描かれるのはものすごくベーシックな、若い頃の思いであり恋である。

この作品が数あるジブリ作品の中で何番目くらいにランクされる出来なのか、僕は知る由もない。しかし、まあ、制作者の伝えたいものはぶれることなく存在しており、ぶれることなく伝わってくる。スタジオジブリというブランドに固定ファンがつくという現象についてはなんだか納得が行った気がする。

これからこの2人はどうなるんだろ、という余韻を残して終わるのも良かった。そして、やっぱりアニメは絵の魅力なのである。魅力は写実から生まれる訳ではないのである。

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