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Tuesday, June 14, 2011

ビーケーワンの誤り

【6月14日特記】 いつも書評を投稿しているオンライン書店<ビーケーワン>からメールが来た。曰く、書評投稿規定の改定により 6月1日投稿分から書評内での外部サイトへのリンクの記載が禁止されることになった、と。

ご存じの方もあるかもしれないが、僕は書評の最後の署名から自分のホームページへのリンクを張って来た。しかし、これからはそれが禁止だと言われればそれに従うしかない。と言うか、従わないとなれば今後一切投稿はしないという選択肢しかない訳だが、そこまでの不利益を被ってまで抗議しようとは思わない。

ただ、とても残念である。これは時代の趨勢に逆行した愚かな決定であるとしか思えないからである。

かつてはサイト内のヘルプに書評文中でのリンクの張り方が書いてあったのに、いつの間にかそれがなくなっていて、なんかちょっと嫌な気がしていたのである。やっぱり結局そういうことになるのかい、という気分である。

インターネットの黎明期に於いてはリンクを張るという行為は決してありふれた日常などではなく、言わばひとつの「技」であった。だから、「承諾なしにリンク禁止」みたいなサイトがいくらでもあった。

しかし、ブログの時代がやって来て、リンクはもはや当たり前のサービスになった。いちいち許可を得る必要はないのが標準である。むしろ、リンクを張っていないことのほうが不親切として非難されるべきものとなった。

そして、リンクを超えて、今やエンベッドの時代である。自分のサイトの中に他人の動画を埋め込んだり、あるいは逆に他人のサイトの中に自分の動画が埋め込まれたり、相互にそういう風に繋がるのがインターネットの常識になってきた。

そう、相互に繋がってこそインターネットなのである。

それを今回 bk1 はぶった切ろうとしている。何故なのだろう?
リンクを張られるとどんな不利益があると言うのだろう?

書評投稿者が勝手にリンクを張ることを許してしまうとスパムっぽいリンクだらけになる、という理屈は通らない。何故なら今でも全ての書評の文章は担当者のチェックを経た上でないと公開されていないからである。

自動で公開されるのであれば百歩譲ってリンクを禁止したくなる気持ちも解らないではない。しかし、いずれにしても人のチェックと判断が入った上での公開なのである。そのチェックと判断の中にリンク先の当否を含んでおけば良いだけのことである。

とは言え、文章としての(公序良俗に反しないか等の)当否は読むだけで判断がつくが、リンクはリンク先に飛んでみないと全く分からない。場合によってはリンク先に飛んでみただけでは(マルウェアが仕込まれていないかなど)全く判断がつかないこともある。

だから、おおかた文章チェックをしている担当者が嫌がったのであろうと思う。最近は人間がやる仕事をとかくマニュアル的に、単純に、自動的に処理できるものにしようとする風潮がある。言うまでもないがそれは人間がやる仕事ではない。十把ひとからげにできないものを、ひとつずつ紐解いて行くのが人間の仕事である。

そのうちに bk1 は「文中に以下の単語を含んだ投稿は自動的に削除します」みたいな方針を打ち出すのではないかと思う。まことに立派な経営方針である。

いや、単に怒っているのではない。僕としては初めて書評を投稿する際に、Amazon のカスタマーレビュー欄と bk1 の書評欄をじっくり見比べて、こりゃどう考えても bk1 だと判断し、それ以来ずっと bk1 に書評を投稿してきた。昨日までに投稿し掲載された書評は321本もある。

それくらい「連れ添ってきた」感のあるサイトなのである。それだけにそういう判断が下されたことが残念でならないのである。

リンク先チェックの煩雑をなんとしても避けなければ運用が追いつかないというのであれば、人の目とウィルス対策ソフトなどで一応粗くチェックはした上で、「書評欄のリンク先については当社が責任を持つものではありません。ご自身の判断でクリックしてください」と言い放ってしまう手もある。

中には無責任だと非難する声も出るだろうが、今やそのぐらいのことは許される時代であると思う。それくらい自己責任ということが浸透してきたのだと思う。それはインターネットが成熟してきたということに他ならない現象である。

そして、そのインターネットの成熟を担保するためには、何がなんでも「繋がって広がる」というメリットを奪うような手立てを講じてはいけないと思う。

サイト運営者が責任をもって排除するか、あるいはユーザの責任と突き放してしまうか、どちらの判断もある、と言うか、現実には両方をうまくミックスして行くべきだと思う。

リンクを禁止するという野暮は、いやしくも文学やインターネットに関係している会社であるなら絶対に犯すべきではない愚かな過ちであると思うのである。

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