ドラマW『同期』
【5月8日特記】 WOWOW から録画しておいたドラマW『同期』を観た。これも『ビート』と同じく今野敏の小説が原作。
宇田川亮太(松田龍平)と蘇我和彦(新井浩文)──この2人が警察学校の同期。良いキャストである。
冒頭、宇田川が連続コンビニ強盗犯を追う。走りながら「逃げたって無駄だよ。俺は箱根駅伝の選手だったんだ」などと説得してみるが、犯人は逃げ足を緩めない。走って少しずつ距離を詰めたところに不意に前方横から蘇我が現れて犯人を捕えてしまう。
「手柄取られちゃったなあ」と宇田川。
「いや、追い詰めたのはお前だから、お前の手錠かけろよ」と蘇我。
「いいよ、お前に借り作りたくないからお前の手錠かけろよ」と宇田川。
犯人そっちのけの言い争いとなる。そこへ所轄の刑事・土岐(竹中直人)が現れて手錠をかけてしょっぴいて行く。
ここまで見ると、このドラマは最後までこういう調子で、さながら『あぶない刑事』みたいな丁々発止、洒落たジョークの応酬みたいな感じで進み行くのかと思ったらそうでもない。福田雄一による脚本はそつがないと言えばそつがないのだが、全体を貫くトーンが作り出せていない気もしないでもない。
警察学校卒業後、宇田川は殺人などの強行事件を扱う捜査1課に、蘇我は公安に配属される。そして、暴力団同士の抗争と思われる連続殺人事件が起き、マル暴対策の捜査4課の仕切りの下、宇田川は土岐とコンビを組んで捜査に当たることになる。
その後、蘇我は突然懲戒免職処分を受け行方不明となる。そして、何かを隠しているように思われる捜査4課は突然蘇我を連続殺人の容疑者にしてしまう。蘇我の無実を信じる宇田川は警察のチームワークを乱しても独自の動きをしようとする。
熱血漢で直情径行、出世欲丸出しの宇田川に対して、沈着冷静、朴訥としていながらハートは温かい蘇我という対比がまずある。それに加えて、教科書通りの捜査をしようとする宇田川に対して、「ヤクザ絡みと暑いのは嫌い」と公言して昼間は手を抜き、しかし夜になると酒場を飲み歩いて情報を掴んでくる叩き上げの土岐との対比が重ねられ、そして、宇田川の直属の上司である植松(渡辺哲)と土岐が同期であるという設定にして2つの「同期」を対比する巧さがある。
ただ、対比しようとする頭が勝ちすぎて、少し類型的に過ぎる、やや人工的な人物設定になってしまった面もある。
まあ、でも、次から次へと事件が起こり、新しい人物が登場して、新事実が発覚するという構成は視聴者の気を逸らせない。やや図式的ではあるが警察組織の官僚的悪弊も、それを打破せんとする気概も描かれる。で、中心線は同期の友情である。
思ったよりもちょっとベタベタしたドラマではあったが、まあ、面白かった。
で、エンドロールで初めて知ったのだが、監督は『SR サイタマノラッパー』や、現在公開中の『劇場版神聖かまってちゃん』を手がけた入江悠だった。これは意外!
もっとも、じゃあこの刑事ドラマのどこかに「如何にも入江悠」みたいな何かを見出そうとするとそれは非常に難しい。むしろ、「こんな宛てがい扶持の仕事でもきっちりできるんですよ」という証明にはなったかもしれない。こういう仕事で金を貯めて、また『SR サイタマノラッパー』みたいな映画を撮ってほしいものだ。
突然現れる蘇我の妹役に栗山千明、警察のさまざまな課の刑事役で岩松了、豊原功補、中村育二、堀部圭亮、ムロツヨシ、矢島健一、佐野史郎、鈴木亮平、右翼の大物役で神山繁、スナックのママ役で濱田マリほか。
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