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Wednesday, May 04, 2011

ドラマW『ビート』

【5月4日特記】 録画してあったドラマW『ビート』を観た。

僕は俳優がある日突然監督をやり始めるということについてはあまり好意的ではなくて、奥田瑛二に関しても「ははあ、なんか余計なこと始めたか」と冷ややかに見ていた。それが何作目かで海外の賞を獲ったりして、いつまでも無視していられなくなった。ま、いつものパタンと言えばそれまでなのであるが(笑)

で、観てみると、結論から先に述べることになるが、割とちゃんとした映画なのである。役者や台詞ばかりに眼が行っているのではなく、ちゃんと良い構図があり画で語っている部分がある。こういうところを見ると俄に信頼感が増してくる。

今野敏の同名の警察小説が原作である。警察小説とは言え、家族ドラマの様相のほうが強い。

島崎(奥田瑛二)は捜査2課の刑事。日和銀行の不正経理を内偵している。そのことを嗅ぎつけた銀行側は富岡という行員(ウダタカキ)を島崎の長男・丈太郎(奥村知史)に接触させる。富岡は島崎の大学の柔道部の後輩であり、かつては島崎の子供たちに柔道を教えていた人物でもある。

続いて富岡は島崎にも接触してきて、丈太郎から頼まれた日和銀行への就職を自分が請け負うと言い、その一方で丈太郎から情報が漏れたとなったら島崎の立場もまずかろうと脅しにかかる。

結局、捜査2課の家宅捜索は空振りに終わり、内通者がいたのではないかと取り沙汰される。島崎は秘密が漏れるのを恐れたが、富岡が謎の死を遂げてほっとするのも一瞬、今度は秘密を嗅ぎつけた次男・真次(高良健吾)が富岡を殺したのではないかとの疑念が浮かび上がってくる。

そういう手の込んだ話である。優等生で父親との関係も良好な長男と、父親に反目して高校も中退してしまった次男という対照的な息子たちへの、それぞれに形も色合いも違う父の愛をよく描いてある。そして、典型的にただおろおろするだけの母親(宮崎美子)がいる。

で、先に悪いところから書くと、一緒に見ていた妻が「なんか、カットの変わり方がダサい」と言う。「次のシーンに続くのではなくて、舞台の幕間になるような感じ」と言うのである。これはそもそもカットが変わるまでの間が長いのに加えて、カットアウトではなくフェイドアウトを採用しているからである。演出側は余韻と言いたいのだろうが、こういう形で出てくるのは終止感なのである。これはちょっと考える余地あり。

それから、ネタバレになって申し訳ないが、最後まで見ても誰が根岸(ネタバレなのであえて役者の名前は書かずにおく)を殺したのかが分からない。ドラマの本質には関係がないと割りきって切り落としたのであればそれはそれで英断ではあるが、その謎をほったらかしてドラマを終えてしまうのはやっぱり非常に気持が悪いのである。

気になったのは上記の2点で、それ以外は、まあ多少無理くりの筋運びもあるが、概ね人物もよく描かれ、謎解きとしてもそこそこ逸らせないドラマであると思った。主演の奥田瑛二よりも次男に扮した高良健吾が光っていた。

そして、健吾の恋人(?)役の水野絵梨奈も良かった。この娘は出てくるのではないかな(『ランウェイ☆ビート』に出ていた記憶はないのだが)。

あんまり面白くないとすぐに途中で投げ出す妻が黙って最後まで見ていたことからしても、飽きさせない展開であったことが判る。

最後まで見てスタッフロールが始まると、脚本・高橋泉とある。なーんだ、道理でよくできてると思った、と大いに納得。

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