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Thursday, April 28, 2011

映画『まほろ駅前多田便利軒』

【4月28日特記】 映画『まほろ駅前多田便利軒』を観てきた。一昨日の記事にも書いた通り、大変楽しみにして観に行った。

最初に思ったのは、三浦しをんによる原作ってどんな感じだったんだろ?ということ。あまりに不思議な雰囲気の映画に仕上がっているから。

まほろ駅前で便利屋をやっている多田(瑛太)の前にある日突然中学の同級生だった行天(松田龍平)が現れる。この行天がとても不思議、というか不思議を通り越して現実感がないのである。ひょっとして映画の最後に、「実は死人でした」みたいな種明かしがあるのかもと思ったほどである。

最初に便利屋としての多田の日常が描かれた後、行天は突然画面の中にいる。終バスが終わったバス停に、多田が仕事で預っているチワワを勝手に抱いて座っている。第一声は「久しぶり」でも「憶えてる?」でもなく「煙草ちょうだい」。

で、今晩一晩泊めてくれと言う行天を、多田は一旦断るが結局一泊だけという条件で泊める。それがそのまま何ヶ月も居続けて一緒に便利屋をやっている。お互いの境遇のことはほとんど話さないので、中学以来何をやっていたのか互いに知らない。知っているのはお互いバツイチであることぐらい。

そういう設定が不思議であり、むしろ現実感に欠けるのに、それに輪をかけて行天の挙措に浮遊感がある。多田は行天をお前呼ばわりするのに、行天は多田をあんたと呼ぶ。いや、彼は誰にでも、子供にさえあんたと呼びかける。

それだけではない。コロンビア人の街娼が2人出てくるのだが、演じているのは片岡礼子と鈴木杏である。この2人の女優自体は僕は大好きで、とても素敵なキャスティングだと思うのだが、しかしとてもコロンビア人には見えない。無理やりカタコトの日本語も話させていないのでなおさら現実感がない。

重要な役どころで本上まなみが出てくるのだが、この女優はそもそもが不思議な雰囲気のある人である。そして、彼女の人物設定も見事に寓話的である。

さらに、白い粉の取引とかそれを取り仕切るヤクザやチンピラが出てきたりもするのだが、それに立ち向かう多田にも行天にも恐怖感のカケラもないように描かれている。このあたりもとても不思議で空想世界のような印象を受ける。

そもそも舞台となっているまほろ駅というのがどこにあるのか判らない。ロケ地(の1つ)が町田であることは判るが、ほとんどのまほろ出身者はそこで生涯を過ごすという設定も非常に奇異である。

だが、しかし、そういう現実感の薄い、浮遊感のある設定の中で繰り広げられるドラマに、どこか嘘だと切り捨てられない切迫したものがあるような気がする。夢の中で本当のことを聞かされたような感じ。

くるりの岸田繁が手がけた音楽がまた不思議である。時々まるで主旋律を奏でる楽器のトラックだけ抜いたのではないかと思われるようなパートもあり、しかし、これがさながら夢のようで、妙に映像にマッチしている。

最初に松田龍平が出てきた場面から少し作り物感が溢れている気がして残念に思っていたのだが、途中から「あ、最後までそういうトーンで演出するのか」という了解がついて、そこからはなんだか逆に惹き込まれて行った。

ところどころにはっとするほど良い台詞を入れ込んであったり、びっくりするような長回しの独白があったり、目の覚めるような米軍基地の青空があったりして、いつのまにか僕らは変なドラマに巻き込まれているのである。

これは原作のトーンなのだろうか? 大森立嗣の解釈と演出の力なのだろうか?

ともかく、キャストがとってもステキで、上記の瑛太、松田龍平、片岡礼子、鈴木杏、本上まなみの他に高良健吾、松尾スズキ、岸部一徳、柄本佑、そして監督の実父・麿赤兒や実弟・大森南朋まで含めて、本当に個性と存在感に溢れた役者ばかり出てきて、逆にうっとりするような統一感が形成されている。

それが一番見事なとこかな。

描かれているのは生の営みである。そう、まるで夢見てるみたいなストーリーなんだけれど、生を営んで行くことってこういうことなんだなという気はする。変に印象に残る映画だった。

soramove
ラムの大通り
アロハ坊主の日がな一日

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