映画『SP 革命篇』
【3月26日特記】 映画『SP 革命篇』を観てきた。
前作『SP 野望篇』は意外に評判が悪くて結構驚いた。「テレビドラマの時に見たことがなかったので設定がさっぱり理解できなかった」という人に対しては「お気の毒様」としか言いようがないが、「単に襲うテロリストと守るSPの格闘の連続では全然面白くない」という指摘には本当にびっくりした。
僕はその格闘シーンがめちゃくちゃ面白くて、格闘シーンだけでも充分満足だと思ったくらいだったので…。
さて、その『野望篇』の続編なのだが、いきなり、あれれ?という感じ。前はビルの屋上から岡田准一を狙っているのが堤真一だったという衝撃のシーンで終わったので、てっきりそこから始まるのかと思ったら、どうやらあれはあれで終わりらしい。
さらに、映画を全部見終わってからパンフを読んで初めて知ったのだが、実は『野望篇』とこの『革命篇』の間に、この映画公開の直前にテレビで放送した『革命前日』という単発があったらしい。いや、テレビでなんかやってるなあという意識はあったのだが、てっきり単なる番宣番組だと思い込んでいたのである。
ただ、まあ結果論ではあるが、『革命前日』を観ていなくてもそんなには困らなかった。公安の田中(野間口徹)が最初のシーンからなんで頭に包帯巻いて入院してんのか?というくらいである。とは言え、見ていない人はこの『革命篇』を観る前に『革命前日』のストーリーくらいは調べて行ったほうが楽しめるのは楽しめるだろう。
で、ともかく格闘に次ぐ格闘だった前作と比べて、今回は格闘シーンは前半はほとんどないまま、まさに伊達幹事長(香川照之)や尾形(堤真一)が画策する“革命”の進行が描かれる。
舞台はほぼ1箇所、国会議事堂に限られる。たくさんのテロリストが国会に侵入し、国会開催中の麻田首相(山本圭)以下480人の国会議員が人質となる。その密室化した国会議事堂に“革命”とは無関係の4人のSPたち、石田(神尾佑)、井上(岡田准一)、笹本(真木よう子)、山本(松尾諭)が紛れ込んでいるという、非常に面白い、胸踊る設定である。
で、このシリーズの最大の魅力はやはり岡田准一がかなりのデザインを担っている擬斗である。これが本当に迫力があって飽きない。
特に新旧のSP同士が国会内の一室で4対4で戦うシーン。必然的に一人ひとりが1対1の戦いをするわけだが、その四様の戦いが時々シンクロするという難度の高い演出になっている。
それから、井上と中里(高橋努)が1対1で戦うシーン。高橋努と言えば『クローズZERO』シリーズや『あしたのジョー』など暴力シーンに強烈な印象を残す存在で、僕は相当好きな役者なのだ。今回はトリッキーなアクションは多くなかったとは言え、とても見応えがあった。
また、僕は照明などというものには全然知識がないのだが、この映画は観ていて光線の具合というか、人や物の色合いが面白いなあと思った。パンフを読むとポスプロでカラー・グレーディングという加工を施してあるのだそうだ。
そして井上らが突入したシーンで使われる、1秒240コマ(つまり通常のフィルムの10倍である)の超ハイスピード撮影(再生すると超スローモーションになる)など、いろんな工夫が効いている。
4人のSPが4人とも個性豊かでとても魅力的である。前作では官房長官役の螢雪次朗が良かったが、今回は首相役の山本圭が本当に粘りの利いた怪演である。
前作『野望篇』を観て面白くなかった人も、この映画は是非とも観るべきだと思う。観れば「なるほど、面白い!」となるかと言えば、いや、決してそんなことないだろう(笑) それどころかさらに文句を言うに決まっている。だって、よくよく考えてみるとツッコミどころ満載の設定だもん(笑)
ただ、動きを止めて静止画で見るとツッコミどころ満載であっても、流れとして展開を追っているときはそんなに気にはならない。僕が違和感を覚えたのも、なんだ力で制圧するのかと思ったら丸腰で説得する(しかも説得できちゃう)のかよ、というあのシーンくらいのもんである。
「やっぱり観るんじゃなかった!」と文句を言うのであれば、この映画を見終わってからでも遅くないと思う。どうせ「しまった、観て損した」と言うのであれば、この映画を観ておいて損はないはずである(笑)
井上が手錠を忘れるというお約束のファンサービス・カットなどもあるし、尾形が井上に当てた手紙をはじめ、いくつか出てくる「あえて描き切らないことによる余韻」もたっぷりである。何よりも、国会の衛士が武器の携帯を許されていないというところからこういう“計画”を思いつく辺り、こりゃ却々よくできたエンタテインメントではないか。
金城一紀ってやっぱり相当巧い脚本家だと思う。僕は2作観てみて、やっぱりこの作品(シリーズ)を貶す人のことが理解できないのであった。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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