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Wednesday, March 30, 2011

『阪急電車』宝塚大劇場プレミア試写会

【3月30日特記】 映画『阪急電車』の宝塚大劇場でのプレミア試写会に行ってきた。有川浩の原作も読んでいるが、例によってディーテイルは何も憶えていない(笑) で、見終わってもほとんど思い出さない(再笑)

予告編を見た時点でひとつだけ残念だなと思ったのは中谷美紀。何故この女優なんだろう? 単純なイメージの問題でもなく、上手い下手の問題でもない。言葉の問題である。

戸田恵梨香も谷村美月も玉山鉄二も関西出身で、とても自然な関西弁を喋る。しかし、中谷美紀にそれは望むべくもない。別のタイトルの、違う設定のドラマならそれでも良い。しかし、これは『阪急電車』なのである。

阪急沿線育ちの僕としてはそれが残念で仕方がない。多分僕以外の何百万(もっといるか?)の阪急沿線育ちの人も同感ではないだろうか?

それは関西人の閉鎖性とはとりあえず関係がない。それは言わば郷愁である。阪急電車を巡る思い出の中に戸田恵梨香や谷村美月はいても、中谷美紀が喋っている姿が思い浮かばないのである。

それに話として東京女がこれをやってしまってはいけない。中谷美紀は寝取られた男の結婚式に純白のドレスで乗り込んで行くのだが、今回の映画の設定だと多分後々「だから東京の女はキツイ」と言われてしまう。そうではなくて、本来は、「え、大阪の結婚式って、ひょっとしてそんなことしょっちゅうあるの? 大阪こえー!」と東京人に言われなければならないエピソードなのである。

そんなことを思って映画を見始めると、宮本信子が出てきた。何やら関西弁らしきもの、しかし断じて関西弁ではないものを喋っている。

でも、如何にも阪急沿線にはなんかこんな上品なお婆さんいるよなあ、という感じのお婆さんなのである。他県から越してきて、もう長らく宝塚~西宮界隈に住んでいるという感じ。

しかし、それにしても宮本信子は上手い。完全に宮本信子の映画になっていたから驚く。恐れいったとはこのことである。

その後、南果歩も出てきて、これまたビミョーに関西弁ではない(尼崎出身なのになんでやろ?)。でも、こんな主婦もいそうな気はする。出身地を訊いたら三重とか、福井とか、徳島とか言いそうな感じ。

それらに対して、中谷美紀はなんか得体が知れないのである。単なる言葉の問題ではないのかもしれないが──。

戸田恵梨香の彼氏の「つまらない男」小柳友も見事な東京言葉である。まあ、転勤族もたくさん暮らしているので東京出身者が出てきても不思議はないのだか、少し比率が高すぎる気がする。むしろ奈良や和歌山や愛媛の言葉が出てきてもおかしくないのに。

そんなことが気になりだすと、これは悪い兆候で、いろんなことに引っかかり始める。

アバンタイトルで8人の登場人物の紹介を済ませてしまうところが如何にも「お仕事」っぽくて嫌だなあ、とか、いい場面になると決まってカメラが回りながら寄るのもどうよ、とか、なんかどことなくリズムが悪いよな、ウチの会社にもこういうリズムの画撮る人いるよな、とか…。

ところが不思議なことに見ているうちに次第に引きこまれていることに気づく──途中からそういう風に転換することって僕には珍しいことだ。

やっぱり、役者の魅力なんだろうか? まずは宮本信子。そして、谷村美月と勝地涼のカップルがめっちゃ良い。前から思っているのだが、この2人は本当に巧い。そして、玉山鉄二のあほっぷりがとても良い。他に出てくるどの男よりもあほっぽいが、どの男よりも魅力的なのである。

さらに玉鉄の彼女である女子高生の有村架純。この娘は戸田恵梨香の事務所の後輩らしいが、確かに戸田恵梨香の別バージョンみたいな感じはあるが、これまた非常に良い。伊丹出身で言葉も非常にスムーズ。

そして、冒頭、三宮のフロインドリーブで怒鳴り散らしている時の中谷美紀はやや一本調子であったのが、怒りが治まってきたあたりから取っ散らかってた演技も納まるべきところに納まってきて非常に落ち着いてくる。

車内と街が交互という構成に少しく飽きてきたところにCGを使って遊びを入れてきたのも良いチェンジ・オブ・ペースになったと思う。ちょっと原作に遠慮して中途半端な感じになっていたが、谷村と勝地のシーンではもっとふんだんに入れ込んでも良かったのかもしれない。

しかし、それにしても原作ってこんな話だっけ? 多分(あまり自信はないが)かなり新しいシーンや書き換えたエピソードがある。なんか原作と比べて(ちゃんと憶えてもないのに書くのは恐縮だが)、「我々はこっち側の良い人、彼らは凡そ理解なんかできない、あっち側の困った人たち」という構図が強いように思う。

でも、人を勇気づけるときにはそういう図式的な手法も有効ではあるな、なんて思ってしまうところが、僕がもうある程度引きこまれている証拠なのだろう。

で、ひと言でまとめてしまうと、やっぱり僕は岡田惠和という脚本家は嫌いではないということだ。多少ベタではあるが、ちゃんと盛り上げ方知ってる人なんじゃないかな。映画が終わった瞬間に、期せずして客席から大拍手が湧き起こったもんなあ。

ところで、オープニングとエンディングに使われているロングの画には驚いた。鉄橋を渡る阪急電車をカメラに収めたいと思った時に、なかなかあそこまで思い切って引いた画は思いつかないのではないだろうか。綺麗な画だった。

最後に余談をもう一つ。宝塚大劇場での映画上映は史上初なのだそうだが、観てみてその理由が分かった。スクリーンはそれなりに大きいのだが、箱がでか過ぎて、これならミニシアターで見たほうがスクリーンの体感面積は大きいだろう。もう2度とないかもしれない。貴重な体験をした。

で、そこそこ観る値打ちのある、合格点の映画だったんじゃないかな、と思う。作者の狙い通り、観客は元気になると思う。

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Comments

新しい(阪神大震災以降改築された)大劇場では映画上映が初めてなのですか。私の宝塚第一小学校時代、市内の小学生を集めての上映会がときどき大劇場で開かれました。学校から徒歩で宝塚大橋を渡っていったのを覚えています。はて、なにを見たのだろう。モノクロの「風の又三郎」もあったかな。

Posted by: hikomal | Thursday, March 31, 2011 at 04:45

> hikomal さん
あー、そうなんですか。舞台挨拶の司会役の関テレとYテレのアナウンサが2回も誇らしく語ってたので、宝塚大劇場の歴史始まって以来かと思ったら、そうじゃないんですね。
上映前のこのプレイベントは、どうも「値打ちこいてやろう」という感じが出すぎて、あまり感心しませんでした。

Posted by: yama_eigh | Thursday, March 31, 2011 at 10:37

アタシも生粋の関西人で、阪急沿線育ちやけど、違和感なかったよ。
むしろ じんわり染みるいい映画だと思いました。

Posted by: | Saturday, June 09, 2012 at 13:10

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