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Thursday, March 24, 2011

『ロングエンゲージメント』京井良彦(書評)

【3月24日特記】 さとなおさんこと佐藤尚之氏が率いるサトナオ・オープン・ラボのメンバーである京井良彦さんによる最新のマーケティング論、いやむしろ脱マーケティング論というべきものの入門書である。

しかし、なんでまた「大手広告会社 アカウント・スーパーバイザー」などと社名をぼかしてあるのか不思議である。

で、当然のことながらこれは AIDMA → AISAS → SIPS という、例の大手広告会社の人たち(笑)が書いてきた流れの中に収まる話である。位置的に言っても時系列的に言っても AISAS から離れて SIPS に至るまでのどこかの地点にある書物だと思えば良い。

さて、この本の良いところは何よりも簡単で解りやすく整理がついていることである。だから、こういうことについてはあまり詳しくない人が読むのに最適ではないだろうか。

上で僕が書いた「AIDMA → AISAS → SIPS」という下りを読んで「ふんふん」と思う人には寧ろ物足りない本かもしれない。逆に「何ですか、それは?」という人が読むとしたら、これほど適した本はないのではないだろうか。

僕は帰りの電車の中でしか読まないので何日かかけて読んだが、その気になれば1日で読める。読めるだけでなく、ストンと理解できるはずである。

こういうものが書ける人って、一度会いたいなあという気になる。多分、会ってお話をしてみても、やっぱりストンと落ちる何かを語ってくれる人なのだろうなと思う。

この本を読めばあなたの仕事や学問が一気に進むという本ではない。これは入門書であって、そこから先はあなた自身が考えて行かなければならないのである。副題にある「なぜあの人は同じ会社のものばかり買い続けるのか」ということを考えるに当たって、まだ門をくぐったばかりのところにいるのである。

しかし、この本を読んでいると、京井さんがその門のところに立って「はい、こっちですよ」と誘導してくれているような気がする。京井さんは上から語りかけるのではなく、読者と同じ岸辺に立って話しかけてくれる感じがある。それは京井さんによるロングエンゲージメントの実践そのものなのではないかという気がする。

こういうビジネス書的な本であっても、著者の個性が滲み出している本は間違いなく良い本である。

広告は変わりつつある。そして広告の担い手も変わりつつあるのだと思う。

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