「キネマ旬報」2月下旬号(2)
【2月8日追記】 さて、今年も恒例の『キネマ旬報ベストテン』の分解と分析をやってみよう。
自分で始めてみたら結構面白いので、ここのところ毎年やっているのだが、『キネマ旬報ベストテン』に選ばれた10本の作品の得点を深さと広さに分解するのである。ベクトルの座標を表す作業に似ている。
キネ旬の審査は各審査員(2010年度日本映画の場合は編集部を含め57人──対前年比2名増)が1位と思う作品には10 点、2位には9点という具合に総持ち点55点を投じて行く形式である。
で、統計学的にちゃんと分析するとなると分散とか何とかになるんだろうけど、とりあえず簡便な(ということはちょっとインチキな)判別法として、それぞれの作品が獲得した得点を「何人が投票したか×投票した審査員の平均点は何点か」という積の形で表わしてみるのである。
そうすることによって前半が「どれだけ一般受けしたか」という指標になり、後半が「どれだけ思い入れが強いか」を表し、両者の積が総合得点という解釈になるのである。
さて、今回も早速その計算結果を並べると以下のような形になった。
- 悪人
233点=34人×6.85点 - 告白
176点=27人×6.52点 - ヘヴンズ ストーリー
161点=24人×6.71点 - 十三人の刺客
158点=27人×5.85点 - 川の底からこんにちは
135点=25人×5.40点 - キャタピラー
123点=18人×6.83点 - 必死剣鳥刺し
122点=22人×5.55点 - ヒーローショー
120点=17人×7.06点 - 海炭市叙景
97点=16人×6.06点 - ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う
95点=14人×6.79点
今年はなんと面白い結果だろう! ちなみに去年同様に分析したときの記事はここである。今年のバラケ方が際立って見えてくるだろう。
12人が10点を、5人が9点をつけた『悪人』がぶっちぎってはいるが、2位以下が面白い。
投票人数が多かった順、つまり多くの人に支持された順に並べると『告白』と『十三人の刺客』が同点で2位につけ、その後『川の底からこんにちは』、『ヘヴンズ ストーリー』、『キャタピラー』と続いている。
逆に、平均得点が高かった順、つまり支持した審査員の思い入れが強かった順に並べると、なんと『ヒーローショー』が『悪人』をも上回って唯一の7点台。2位が『悪人』で、その後僅差で『キャタピラー』、『ヌードの夜』、『ヘヴンズ ストーリー』と続いている。
『ヒーローショー』にはあまり共感できなかった人も多かったが、一方で強烈なインパクトを感じた観客もいたということである。逆に『川の底からこんにちは』などは、僕はてっきり一部の"通"(「通」が何なのかは別として)に受ける映画だと思っていたのだが、意外にも広く一般に支持される映画だったということなのだ。
いやあ、自分で思いついてやり始めた分析ながら、これはとても面白い。来年も是非やってみようと思う。
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