ヒゲの不思議
【2月21日特記】 土曜日に散髪に行ったのだが、いつも切ってくれている担当さんにこう言われた。
「あれ? ヒゲ剃って来たんですか?」
「え? そりゃ、朝起きたら剃りますよ」
「習慣になってて、剃っちゃったんですか?」
そこで言葉を継ごうとしたら顔に蒸しタオル被せられて喋れなくなってしまったのだが、「剃っちゃった」などと、まるで間違えたみたいに言われるのは不本意である。あくまで自分の意志と生活設計に従って剃ったのだから。
朝起きて顔洗って歯磨いたらヒゲ剃るでしょ? え? ひょっとしてみんな散髪行く日はヒゲ剃らないのか?──と急に気になりだして、試しに twitter で呟いてみたら、豈に図らんや、どうやら剃らない人が多いみたい。
「気にせず剃ってますよ」と返してくれた人もいるにはいるのだが、どちらがスタンダードかと言えばどうやら剃らないほうらしいのである。その理由は、ヒゲ剃って行くとシェービング担当者が深剃りして血が出たり肌が傷んだりすることがあるから、とのこと。
これには驚いた。そんなこと生まれて初めて、いや、ヒゲ剃り始めてから初めて知った。
うーん、確かにこっちが綺麗に剃っているとムキになって深剃りしようとする人もいる。だが、僕の経験では、それは人によるのである。全ての店の全ての技術者ではない。むしろ少数であると思う。
しかし、それにしても、じゃあヒゲ剃っちゃったら理髪店には行けないのかい?
朝起きたときには行くつもりはなかったのに、昼すぎに急に思い立って、「そうだ、散髪行こう」っちゅうのはナシなのか? 散髪行くつもりだったのにうっかり朝ヒゲ剃っちゃったら、その日は泣く泣く諦めるのか?
それは随分窮屈な人生に思える。僕は自由な散髪人生を送っている幸運な人間なのかもしれない。
しかし、それにしても(と、もう1回書くけど)、もし散髪行く日にはヒゲ剃らないのがスタンダードなら、もう15年通ってる理髪店の、既に数年にわたって担当してくれている技術者に、どうして一昨日になって初めてそのことを言われるのだろうか? いや、それ以前の店でも一度も言われたことはない。
人生には不思議が多い。剃っても伸びるヒゲのように、次々と新しい不思議が伸びてくる。
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