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Thursday, January 06, 2011

シネセゾン渋谷の閉館に寄せて

【1月6日特記】 今度はシネセゾン渋谷である。このあいだ恵比寿ガーデンシネマが閉じると発表されたばかりなのに。

シネセゾン渋谷という映画館そのものに対しては、僕はそれほど思い入れはない。調べてみたら1回しか行ったことがないくらいだから。2005年7月24日、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』だった。残念ながらどんな映画館だったか何も憶えていない。

渋谷で言えば、僕にとって想い出深いのはユーロスペースかな。

恵比寿ガーデンシネマのほうは、「あ、あんなところに映画館ができた。一度行ってみなければ」と思って行ったのでそれなりの記憶はある。しかし、ここも1回観ただけで閉館になってしまった。2006年2月5日、堀江慶監督の『ベロニカは死ぬことにした』だった。その年の夏には僕は転勤で再び関西に戻っている。

だが、ここで言いたいのはそれぞれ個別の映画館に対する郷愁ではない。

昨今、映画産業はそんなに調子は悪くない。特に邦画はここのところよく入っている。しかし、それは特定の映画にドカッと入っているだけで、決して公開される映画の幅が広がっているとは言えないのである。

一般に評判(あるいは前評判)は高くなくても、観た人の内の何割かがめちゃくちゃ満足して帰る──そういう作品をかけてくれる映画館が順番に潰れているのである。シネカノンの倒産もそうだった。特にシネカノン神戸には僕は15回も通っていたので大変ショックだった。

もちろん、そういう作品の上映は都会でしか成立しない。10%の人間が見てみようかなと思う映画と1%にしか支持されない映画があったら、映画館は前者を上映しようと考えるのは当然である。

もしそこに、思うところあって敢えて1%しか見に来ない映画を選ぶ館があるとしたら、その劇場が損を出さないためには同じ1%でも実数が多い、つまり人口が密集しているところでしか採算は取れないのである。

シネカノン神戸なんて、そういう意味では非常に微妙な立地条件だった。神戸と言いながら三宮ではなくJR神戸または高速神戸、しかも駅から結構歩く──そんなところに人は集まらない。そんなところでああいうマニアックなラインナップで勝負するのは土台無理であったのかもしれない。

しかし、そういう商売が成り立つのが首都・東京である(そして、東京でも例えば渋谷である)。前述のユーロスペースなんて(実際黒字で経営できているのかどうかは知らないが)、そういうものの最たる例ではないか。

それが東京でさえ成立せずに、恵比寿ガーデンシネマしかり、シネセゾン渋谷しかり。順番に潰れているのである。皮肉なことにシネセゾン渋谷では今『キック・アス』が大ヒット中であると言うではないか(これは、打ち切りが決まったTV番組の視聴率が往々にして上向きになってくるのに似た現象である)。

僕は決して10%以上の人間が熱狂する映画を嫌っているのではない。ただ、1%未満の人間しか褒めない映画も大事にしたいのである。実際観てみると結構面白い映画が多いのである。

そんな中でこの2館の「ミニシアター系映画館」(これも変な分類名であるが)が姿を消すのはものすごく惜しい。僕は東京に出張したとき、夜などに時間が空いたら映画を観ることもある。東京でしか見られない映画を狙って行くのである。

今後はそういう愉しみも期待薄になる。

マニアと言われる人たち、いや、マニアと呼ばれたい人たちにとっては、自分の好きなものを他人がこぞって好きだと言い出したりするとあまり良い気分ではない。しかし、他人が一部のヒット作品にばかり群がっている姿も(普段なら気にせず放っておけるのであるが)、映画館が順番に潰れて行くとなると、「ちょっと、もう少し映画の見方を考えたほうが良いよ」などと意見したくもなってきたりする。

多様性に対する許容度の高さが文化の成熟度の指標である、というのが僕の持論である。そこから派生して、多様な収益性こそが文化的都市の機能であるとも言えるのではないか。

日本に文化的な都市は育ちにくいということなのだろうか? いや、ひょっとすると既にして世界共通の話なのかもしれない。

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