『Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム』山脇伸介(書評)
【1月19日特記】 「在京テレビ局」に勤務する山脇伸介君の初めての著書である。よく知っている人なので忌憚のないところを書くと、「この人こんなにしっかりした人だったっけ?」というのが第一印象である。
「ぶぅぶの中の人」として、普段は思いっきりお茶目な持ち味を前面に押し出している人物である。無論留学してメディア関係の勉強をしていたことも知っているし、話していると結構熱いものを持っている人であることも分かる。しかし、こんなにまっとうな分析と提言に満ち溢れた本を書くとは思わなかった。
これは今はやりの Facebook の解説本などではない。これは人間とメディアの未来を語った本なのである。
もちろん Facebook の入門書として手に取るのにも適当な書物である。それはこの本がまさにマーク・ザッカーバーグが言うところの move fast を実践して、非常にアップトゥデイトな内容を実現しているからである。
Facebook 関係のトピックスについては昨年後半の事例まで漏れなく適切に紹介してくれている。mixi にも2ちゃんねるにも twitter にも触れている。AIDMA → AISAS のマーケティング理論史から始めて、さとなおさんの SIPS 理論まで取り込んでいる。
それから映画『ソーシャル・ネットワーク』の解説本としても重宝するのではないか。まだ自分では Facebook に登録してなくて、こういう世界に詳しいわけでもなくて、でも Facebook や、その創設者であるマーク・ザッカーバーグに興味があって、この映画をこれから見ようとしている人は、この本で予習してから観に行くと非常によく解るのではないかと思う。
そして著者は、そういう事例を通じて「ソーシャル化」という言葉が意味するところの本質を解説し、そのメリットとデメリットを述べている。そして最後にテレビという旧メディアに従事する者としての危機感が滲み出しいている。
この危機感は残念ながら、テレビ関係者の皆に共有されているわけではない。今のところひしひしと危機感を感じている者と何の痛みも感じていない者に二分されている。彼は前者の人間である。そして、ともかく今「バスに乗り込もう」としている人間なのである。とりあえず自分で乗ってみなければその先どう対処すべきかということが見えてくるはずがないのだから。
最後の章題を SMAP のヒット曲から抜いてくるなど、却々ロマンティックな人でもあるということも判った。さりげなく奥さんへの謝辞を添えることも忘れていない。微笑ましいではないか。
あれ、ちょっと褒め過ぎたか? 親しい人物の著書なので、書評としては幾分割り引いて読んでもらう必要があるかもしれない。しかし、僕としてはことさら褒めようという意識もなく書き始めたらこんなに絶賛になってしまった。
この人、僕が思ってるよりも実はずっとすごい人なのかもしれない。
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