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Thursday, December 09, 2010

『あしたのジョー』業務試写会

【12月9日特記】 来年2月11日公開の映画『あしたのジョー』の業務試写会に行ってきた。

この手の原作ものの宿命として、この作品についても必ず「こんなもん、『あしたのジョー』じゃない!」という意見が出てくるのだろうが、幸か不幸か僕は、原作と同じ時代を共有はしたものの、別段熱心な読者でも視聴者でもなかった。

だから原作との比較論を展開することはできないが、逆に言えば原作から自由に見られた。これは観客として幸せだったのではないだろうか?

で、正直言って満足である。単に観客としても、そして僅かながら出資させてもらった企業の社員としても。

監督は曽利文彦。デビューの『ピンポン』があまりに鮮烈だったので、その後少し精彩を欠いているような印象がある。前作『 ICHI 』が、話題の割には興行的に失敗したのが少し尾を引いているのかもしれない。

しかし、この作品は、多分(いつも昔の記憶が薄れてしまっている僕のことだから確かではないが)原作に忠実に作ってあるのだろうが、それでいて曽利監督の個性はよく出ていたと思う。特に今までは、監督と言いながら「CGの人」というイメージだったのが、この作品ではしっかり監督になったなあという印象がある。

もちろん「CGの人」としての力量は余すところなく発揮していて、街の風景から殴られて歪む顔、飛び散る汗まで、いろんなところで見事な映像が画面を埋め尽くしている。ただボクサーの動き自体は、幾分特殊な加工も施しているとは言え、基本的に生身の役者の動きに委ねている。

それが結構迫力があるのである。そして、特撮のないシーンも含めて、この監督はとても構図が良い。

冒頭のいくつかの加工された風景や人のシーンで時代と場所のイメージを、ややジャズっぽいブルースハープの響きに載せて、かなり的確に伝えてくる。「ああ、なんか行けそうな感じ」と思った。

雨宿りする矢吹丈(山下智久)。警察に追われる矢吹丈。無銭飲食する矢吹丈。そして食堂での丹下段平(香川照之)との出会い。そしてヤクザの西(勝矢)と丹下の殴り合いが始まり、白木葉子(香里奈)の登場。

食堂のオヤジのモロ師岡がものすごく良い。昭和の薫り。そして、ドヤ街の子供たちもとても良い。街のセットとCGも合せて、「ああ、そう、こんな時代だった」と思う。

そして、少年院で力石徹(伊勢谷友介)に完膚なきまでに叩きのめされる矢吹丈。少年院を出て本格的に丹下のおっつぁんとボクシングに取り組む矢吹丈。

みんな知ってる話だ。途中、「あれっ、トリプル・クロス・カウンターって、このタイミングで出てきたんだっけ?」などと思うが、多分僕の記憶違いなんだろう。細部はともかく、言わば古典みたいにみんなが大体知ってる話だ。

試合の後、力石がどうなるか、恐らく若い観客以外はみんな知っている。知っているだけにどう描くかが難しい。そして、どこまで描くかも難しい。まさか丈が燃え尽きて白い灰になってしまうところまで描くわけには行かない。となると、どこで切るかが難しい。

そんな中、とても良い出来に仕上がったのではないかなと思う。

本格的な肉体改造を達成してから撮影に望んだ山下と伊勢谷には本当に、心の底から頭が下がる。「たかが映画で、よくそこまでできるよな」という思いが、丈と力石のボクシングに賭ける情熱に対する尊敬の念にそのまま繋がって重なってくる。

そして、リングの周りをカメラがグルグルと回りながら長廻しのワンショットで展開するスローモーションの面白さ。リングの上から段平を見下ろすカメラ。リングの床の高さから段平を正面に捉えるカメラ・・・。

何よりも今回気づいたのは、僕の中で段平の「立て、立つんだジョー」という台詞が完全に水戸黄門の印籠になっていたということである。ずっとその台詞を待っていた。そして、実際に香川照之がそれを口にしたとき、僕の目頭は熱くなっていたのである。

贔屓目なしに結構良かったと思うのだが、どうだろう。今、2ヶ月先にならないと見てもらえないのが歯がゆいくらいの思いでいる。

脚本は TBS 子飼いという感じの篠崎絵里子。台詞どうこうよりも、長い話をうまくまとめたなあという感がある。

後年、曽利監督の代表作として一番に挙げられるのは、『ピンポン』ではなくこの映画になっているのではないだろうか。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

ラムの大通り

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Comments

はじめまして。業務試写会とはなんですか?

Posted by: | Tuesday, December 21, 2010 at 01:14

> 上の名無しさん
業務試写会というのは読んで字の如く、仕事の一環として開催される試写会です。つまり、一般の観客向けの試写会ではなく、関係者、具体的にはその映画に出資した企業の関係者や、その映画を宣伝してもらうための新聞雑誌の記者やTV・ラジオの関係者などを招いて行われる試写会です。
従って、一般向けの試写会よりかなり早いタイミングで行われます。場所は映画会社の試写室であることが多いです。
本文中にあります通りこの映画については僕の勤務先が(大した比率ではありませんが)出資をしています。

Posted by: yama_eigh | Tuesday, December 21, 2010 at 10:35

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