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Friday, December 10, 2010

映画『武士の家計簿』

【12月10日特記】 映画『武士の家計簿』を観てきた。

そもそも時代劇はあまり見ない。これも森田芳光監督でなければまず見なかったと思う。

しかし、時代劇であるとは言え、これは経済ドラマなのである。しかも、古書店で見つかった実際の「そろばん侍」の家計簿からノンフィクション(研究書)ができ、そこからこのフィクション(映画)ができた──成り立ちからしてなんだか痛快ではないか。

映画にはいろいろな見方、褒め方、分析の仕方がある。例えば、良い台詞だとか、台詞回しが巧いとか、とても印象的な構図であるとかカメラワークであるとか色彩とか、あるいは場面のつなぎ方が巧いとか、テンポが良いとか、ストーリー自体が面白いとか…。

でも、本当に巧いものって、小説でもそうなのだが、読んでいるとき観ているときには決して「うまい」なんて感じさせないものなのである。読み終わって見終わって、なんだかよく分からない、どこがどうとは言えないのに、でもどうしようもなく巧い──そんな風に思ってしまうものなのである。

僕が初めて観た森田芳光の映画(35ミリでのデビュー作)『の・ようなもの』がまさにそういう映画だった。めちゃくちゃ面白かった。そして、あまりの面白さに悔しくなった。今安易に使われる流行りの表現を借りれば、それは僕の「映画鑑賞 2.0」の始まりであった。

そして、この『武士の家計簿』もそうであると思う。ここが良いとうまく分析できない。強いて言えば企画自体が面白い。しかし、企画が面白いだけでは良い映画はできあがらない。そこには僕らが外から見てもよく分からない何かが特殊な働きをしているのである。

例えばそれは、これはパンフレットを読んで初めて知ることができる情報なのだが、仲間由紀恵が森田監督からオーバーな演技を全部削ぎ落とすことを要求され、「それでも気持ちは伝わりますから」と言われた、というようなことなのかもしれない。多分そういうことの積み重ねが「演出」なのである。

柏田道夫という、映画の世界ではあまり実績のない脚本家が書き、沖村志宏という、『ハル』の撮影助手として森田監督と出会い、今年は『川の底からこんにちは』を手がけたカメラマンが撮っている。

筋にも画にも、無駄と伏線が非常にバランスよく複合されて広がっている。

今回はあらすじなんか書かないでおく。とても深い味わいの広がるドラマだった。

主人公の堺雅人とその妻の仲間由紀恵、その両親の中村雅俊と松坂慶子、そしてその母の草笛光子、仲間の父の西村雅彦──いずれもとても良いキャストだった。

そして、経済のこと、家族のこと、歴史や時代のこと、今自分たちが暮らしている環境のこと──いっぱいいろんなことを考えさせてくれる映画だった。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

soramove
アロハ坊主の日がな一日

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