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Tuesday, December 28, 2010

映画『ばかもの』

【12月28日特記】 映画『ばかもの』を観てきた。絲山秋子原作、監督は金子修介。

好きな監督なのである。日活ロマンポルノの頃から観ていて、これが(映画館で観るのは)10本目。それでも半分に満たない。

『○○』の金子修介という紹介の仕方をするとしたら、○○に入る映画名は何なのだろう? やっぱり平成ガメラ・シリーズか、それともデスノートか?

いや、ポルノから怪獣ものまで難なくこなす幅の広さこそが金子修介の魅力なのだと思う。

話は高崎市の三流大学生・秀成(成宮寛貴)とバツイチの額子(内田有紀)が額子の母(古手川祐子)が切り盛りするおでん屋で知り合うところから始まる。

映画の中で年齢は明示されないが、この時秀成は19歳、額子は27歳だった。それから10年に渡って2人の長い紆余曲折が描かれる。

数日後スーパーで再会した時、初めて会った時と同様に、額子は秀成を小馬鹿にしたような態度で、しかし、あけすけに誘ってくる。

童貞だった秀成は一も二もなく応じ、夢中になってやってやってやりまくる。しつこいくらい、何度も描かれる2人のセックス。

ここらあたりは監督自身が日活ロマンポルノの時代を思い出していたのではないかな。内田有紀が左足のソックスは左手で脱いで、そのあと右足のソックスを左足の親指に引っ掛けて脱ぐところを足のアップで捉えたり、却々面白かった。

ただ、日活だったらもうこの時点で少なくともブラは外してるんだけどな、という不自然さはあった。まあ、仕方ないか。

額子はちょっとはすっぱでぶっきらぼうだが、裏を返せば率直で偏見もなく、意外に寛大でもある。しかし、時々何を考えているのか解らなくなる。

そして、案の定、秀成はある日唐突にこっぴどい仕打ちを受けて棄てられる。

その後結婚した額子は一旦映画の画面から消える。しかし、映画である限り消えたままということはないだろう、どういう再会があるのか、と期待するのが当たり前だが、観ている者は延々と待たされる。

そして、ここからは結構悲惨な話である。

秀成は自分から女性を口説いたりしない。いつも誘われるままである。だから自分から誘ってこない同級生ネユキ(中村ゆり)とは全く肉体関係がない。

なのに、持てる。いるんですよね、こういう男。で、誘われるままつきあって結局女性を不幸にしたりする。

秀成を好いてくれる女はその後何人か現れるのだが、要するに額子が忘れられないのである。それは今になって思うと、単に初体験の相手だというようなことではなかった。

秀成はそれを乗り越えられずアルコール依存症になる。

みんなに愛想を尽かされ、ボロボロの数年を経て、秀成は額子の母のおでん屋にたどり着き、そこで額子の消息を聞き、片品まで会いに行く。

額子も辛い辛い日々を送っていたのである。

そこから先は書くまい。よく書けた本である。額子がどういう思いで秀成にあんな仕打ちをして棄てたのかも語られる。帰ろうとする秀成に「たったひとつだけお願いがある」と言う。なんとも切ない願いである。

それに続く風呂のシーンが2人の辛かった過去を無言で物語っているような感がある。木に登るシーンが、いろんなものを失って少し晴れてきた2人の未来を暗示しているように見える。いや、1つ2つのシーンが良いのではない。映画の冒頭から最後に至るまで、1つひとつのシーンが丁寧に丁寧に重ねられてきたのが、最後になって観客の目にもはっきりと見えてくるのである。

シナリオ作家協会とのトラブルでも知られる、うるさ型の原作者が満足して手放しで褒めているではないか!

パンフに載っていた三留まゆみの、「若さは馬鹿さであり、わかものはばかものである」という一文が沁みる。

劇中に2回口にされる「ばかもの」という台詞もとても良い。

派手な作品ではないが、観て良かったと思える映画だった。やっぱり金子修介は良い監督だと思った。

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Comments

「ブラは外してるんだけどな」とともに残念なのは、
「毛があるはずなんだけどな」ではないでしょうか。
 まあ、仕方ないが。

Posted by: tapioka | Wednesday, January 05, 2011 at 17:20

> tapioka さん
毛って、(これはネタバレになるので書けませんが)あそこの毛のことじゃなくて、あそこの毛のことですよねw

Posted by: yama_eigh | Wednesday, January 05, 2011 at 22:36

> yama_eighさん
ええ、そのシーンのことではなくて
あのシーンのことです。
「仕方ない」こともない、ような気もするんですけどね。

しかしそれにしてもいいのかしら、これの予告編。
ネタバレの嵐ですね。
私は劇場に行ったあとにwebで見たので、
味わい深くてよかったものの。

Posted by: tapioka | Thursday, January 06, 2011 at 13:57

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