映画『さらば愛しの大統領』
【11月5日特記】 映画『さらば愛しの大統領』を観てきた。
こんなこと言うと関係者に怒られるかもしれんが(逆に喜ばれるかもしれんという気もするが)、多分こういう映画はカメラワークがどうだとか映画的な文法がどうだとか言ってはいけないんだろうなあ、と思いながら映画館に向かった。
在阪5局が揃って出資しているという事情もあるが、僕がわざわざ観に行ったのは予告編を見て面白そうだったからという単純な理由である。で、実際に面白かった。
吉本の芸人さんにもいろんな人がいるが、(共同)監督と主演の世界のナベアツ、そして、同じく主演のケンドーコバヤシと宮川大輔の笑いのセンスが僕の笑いのセンスに近いのである。だから楽しめたし、好感も持った。
で、まことにもってあほらしい映画である。
不況と失業率増加に伴う治安悪化に悩む大阪で、“大阪合衆国”の独立を唱えて府知事選に立候補した世界のナベアツがまかり間違って当選してしまい、その後大統領となってとんでもない政策を連発するというコメディである。
そのナベアツの命を狙って次々に殺し屋が登場するのだが、1人目が仲村トオル、2人目が大杉漣、3人目が最近売り出し中の志賀廣太郎と非常に豪華である。特に大阪弁でギャグをやる大杉漣──こういう役柄はひょっとしたら昔はあったのかもしれないが、大変新鮮で楽しめた。
4人目の殺し屋が誰になるのかはお楽しみ。ここには書かない。
さて、その殺人者逮捕に奔走するのがケンドーコバヤシと宮川大輔の2人のアホ刑事である。
他にも吉本興業からはいろんな人気芸人が次々と登場するし、女優では吹石一恵と釈由美子が華を添え、神谷明(これがめっちゃおもろい)やら彦摩呂やら六平直政やら紅萬子やら、とにかくいろんな人間がちょろちょろちょろちょろ出てきて、賑々しくて面白い。
ギャグはほんとにストレートで脳天気なものからちょっと細かいニュアンスを狙ったものまであり、結構笑えた。しかも、画面の隅に小ネタが仕込んであったりして、こういうのは僕はとても好きである。
劇中流れる「NG集」もバラエティ番組でよくあるアレではなく、明らかに「作り込んだ」ものである。僕は常々これからは作り込んだコンテンツが生き残って行くと思っているので、ああ、こういうのはアリだなあとしみじみと思った。
そして、何よりもエライのは、これがつぎはぎだらけのネタの羅列になっておらず、ちゃんと1本の映画としてのまとまりを保っていることである。このあたりがナベアツとの共同監督で柴田大輔、脚本で山田慶太というCM界で実績のある人たちが名を連ねていることの意義であり成果なのだろう。
笑いに落とすためにところどころにシリアスなシーンを入れ、そこにことさら大仰なBGMを被せ、そして、クライマックスではともかく主人公が走りに走る、という非常にありがちな、しかし、映画的王道の構成があって、さて、最後はどこでどう落とすか?──これも意外な洋画のパロディになっていたりして大したもんである。
CGも含めて使うところにはきっちりお金を使って作っているので、安いギャグでも決して安っぽく映ってないところがミソである。
しかし、せっかくの関西先行ロードショーだったが客は少なかった。ただ、映画としては「しょーむなぁ」と一笑に付す人も多いかもしれないが、もし、これがテレビの深夜レギュラーなら割合褒められるのではないだろうか? 事実僕は面白かった。
そして、冒頭の文字(文章)によるアピールは少し余計だったが、笑いというものに対するナベアツの真摯な思い入れも充分伝わってきて、面白かったし好感も覚えた。妙に収穫があったな、という感じである。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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