すぐ弾けない?
【11月18日特記】 このウクレレの教則本のタイトルと言うか姿勢と言うか、そういうものに多大なる共感を覚えるのである。
楽器の教則本の大半は「今すぐ弾ける」とか「初心者でも簡単」とかいう類のものである。あまりに初心者向けのものばかりで、中級者・上級者向けのものがなさすぎるのである。
まあ、多分、どんどん本を買ってくれる有力顧客たりうるのは、楽器を買って間もない初心者なんだろう。だから、初心者にばかり媚を売って「買ったその日から弾ける」だの「楽譜が読めなくても平気」だのと甘い誘いを掛けてくる。
初めはそれで良いのである。初めから難しいものに手を出すと確かに挫折するばかりである。しかし、しばし練習を積んで技量が身についてくると、売っている教則本の大半が物足りなくなってくる。ここから先はどうすれば良いのか?
別にプロになろうってつもりでもないので、先生についてという気もない。本屋や楽器屋で買ってきて手軽に腕を磨く教科書がほしいだけなのだが、そういうのはもうあまり売っていないのである。
ちょうど中学生になった頃に、親や周りの大人たちが、普段は自分を子供扱いしてるくせに都合が悪くなると急に「もう、あんたも大人なんだから」と言い出すようなもんだ。
その点、この本はえらい。よくあるタイプの「すぐに弾ける」を茶化して「すぐ弾けない」と言っている。「すぐ弾けないから心して挑め」と言っている。「ちょっとやり甲斐あるぞ」とほのめかしている。
しかし、実はこの著者の別の本を買ったことがあるのだが、どうもアレンジがつまらなかったという記憶が焼き付いているので、買おうという決心はついていない。
苦労して弾けるようになったけど、なんだかアレンジに面白味がない、というのは頂けない。しかし、ひょっとすると前の教則本でアレンジがつまらなかったのは、初心者でも弾けるようにレベルを落としたからであって、このすぐに弾けない本では素晴らしいアレンジなのかもしれない──などといろいろ思いあぐねて、まだ買うには至っていないのである。
ただ、いずれにしても、こういう本を書いた著者も、こういう本を企画して出版した会社も、繰り返して言うが非常にえらい!
レベルを落として裾野を広げることも大切だが、こういう態度こそが真に音楽を育てて行くのではないだろうか。
なお、僕が推薦するウクレレ教則本は My Amazon Store に掲載している。
Comments
伊井直行の古い小説に
『フィンランド語25時間』なる書物が出てきます。
このタイトルは、
フィンランド語が「25時間で習得できる」ではなく、
「一日25時間勉強しなければ習得できない」
という意味だそうです。
(作家の作り話ですよね、たぶん)
Posted by: tapioka | Monday, November 22, 2010 14:04