『カールじいさんの空飛ぶ家』
【11月7日特記】 『カールじいさんの空飛ぶ家』を WOWOW で観た。映画館では見逃したので、これが初めてである。
こんなにもたくさんの人に見られ、語られ、そして愛された作品を、今更ながらのタイミングで僕が語る必要もないだろうが、ま、一応メモとして。
冒頭から驚くのは3DCGアニメの進歩である。平面ではなく立体的なアニメだということに驚いたのは随分前だ。今驚くのは、その素材の質感が実写と見紛うばかりに精巧に描き表されているということ。テレビ画面に触りたくなるほど。
何よりも人物、動物の動きの中に現れる生命の息吹。決して人間や動物の動きを写実的に再現したものではない。しかし、そこには生命が感じられる。人や物を動かす技術と表現力という点では PIXAR がやはり世界で一番抜きん出ているのではないだろうか。
そして、子供だったカールとエリーが出会って、やがて結婚し、子供のないまま共に老い、そしてエリーが死んでしまうまでを、子供の頃を除いて一切台詞なしで進めたこのシーンの見事さには舌を巻いた。僕はこの一連のシーンがこの映画の白眉であると思う。
後半からはファンタジー一杯の子供向けの話になってしまうのが大人としては少し物足りなかったり、見ていて飽きたりしないでもない。しかし、筋としては頭から尻尾までちゃんと繋がった巧みな筋運びである。
カールじいさんがひとりになってしまって空飛ぶ家で飛んで行く、というところまでは決して誰にも思い浮かばない話ではない。ただ、そこからどうやって登場人物を増やすか、つまり、孤独なカールじいさんを孤独にさせない仕掛けをどう作ってストーリーをどう進めるか、というところがこのお話の真骨頂であると思う。
良いアニメだった。
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